2026年7月28日の熊本震度7から、今日で9日目です。
昨日(Day6)は、高齢者と子どもの災害医療——持病の薬をどう守るかについて書きました。震災シリーズの最終回となる今日は、避難生活が長引くなかで**最も見落とされやすい「心のケア」**をテーマにします。
体のケガや病気と違って、心の不調は目に見えません。「自分がしっかりしなければ」と気を張っている人ほど、あとになって不調が出ることがあります。1週間ほど経ったいまが、家族と自分自身の心に、そっと目を向けるタイミングです。
心の傷は目に見えません。だからこそ、意識して気にかける必要があります
1週間経った頃に出やすい5つの兆候
大きな災害のあと、心にはさまざまな反応が現れます。まず知っておいてほしいのは、**これらの多くは「異常な事態に対する、正常な反応」**だということです。おかしくなってしまったわけではありません。次のような兆候に気づいたら、心が休息を必要としているサインとして受け止めてください。
① フラッシュバック(再体験) 揺れの瞬間が突然よみがえる、悪夢を見る、地震の話題で動悸がする。つらい記憶が、意思とは関係なく繰り返しよみがえる状態です。
ふとした瞬間に記憶がよみがえる。それも、心が体験を処理しようとする反応です
② 不眠 なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅い。避難所の環境もありますが、緊張が抜けず眠れない状態が続くことがあります。
眠れない夜が続くのは、心と体がまだ警戒を解けていないサインです
③ 過覚醒(かかくせい) 小さな物音にビクッとする、イライラして落ち着かない、常に気が張っている。神経が高ぶったままの状態です。
④ 回避・麻痺 災害に関わることを避ける、感情が湧かず何も感じない、ぼんやりする。つらさから心を守るための反応でもあります。
⑤ 子どもの退行(赤ちゃん返り) おねしょが復活する、親から離れられない、指しゃぶりや甘えが強くなる。これらは、災害後の子どもによく見られる反応です。叱らず、そばにいて安心させてあげてください。
子どもは言葉より、遊びや態度で心の状態を表します。その変化に気づいてあげてください
こうした反応の多くは、時間の経過とともに自然にやわらいでいきます。ただし、強い症状が1か月以上続く場合や、生活に大きな支障が出ている場合は、専門家への相談が必要です。
家族と自分を守る初動5項目
心のケアには、特別な技術より「安心できる環境」と「寄り添い」が大切です。世界的にも推奨されている初期対応(サイコロジカル・ファーストエイド)の考え方をもとに、今日からできることをまとめます。
心のケアの土台は、専門技術ではなく「安心」と「聞く姿勢」です
① 話を聞く姿勢を持つ 本人が話したいときに、否定せず、さえぎらず、ただ聞く。「そうだったんだね」と受け止めるだけで、心は少し軽くなります。アドバイスや解決を急ぐ必要はありません。
② 無理に思い出させない・語らせない これはとても大切です。「早く吐き出したほうが楽になる」と、体験を無理に言葉にさせようとするのは逆効果になることがあります。話すかどうか、いつ話すかは、本人のペースに任せてください。
③ 規則的な生活を保つ できる範囲で、食事・睡眠・起床の時間を一定に保つことは、心の安定につながります。子どもには、遊びや会話の時間をつくることも支えになります。
④ 専門家に相談するタイミングを知る 眠れない・食べられない状態が続く、フラッシュバックが強い、死にたい気持ちがある、日常生活が立ち行かない——こうしたときは、我慢せず専門家へ。避難所には**こころのケアの専門チーム(DPAT=災害派遣精神医療チーム)**が入ることがあり、精神科・心療内科やかかりつけ医、保健師、精神保健福祉センターなどの相談窓口も頼れます。
「相談する」は弱さではありません。回復のために必要な、賢い選択です
⑤ 子どもへの声かけ 子どもには、「あなたは悪くない」「もう安全だよ」「そばにいるよ」と、繰り返し伝えてください。抱きしめる、手をつなぐといったスキンシップも安心につながります。子どもの前で災害の映像を繰り返し見せないことも大切です。
子どもにとって、いちばんの安心は「安全な大人がそばにいる」ことです
災害の情報やSNSを浴び続けると、心はすり減ります。意識して距離を置く時間を
温かい食事、他愛ない会話。当たり前の日常こそが、心の薬になります
どんなに長い夜にも、朝は来ます。心の回復にも、時間という味方がいます

