今日は、尿の量の話をします。傷病名でいうと急性腎不全——その疑いです。
この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢は幅で、場所や日付は書きません。救急隊は診断をしません。書く傷病名は、あくまで疑われていたものです。
この事案は、「どこが痛いか、本人に聞けませんでした」で腎盂腎炎の側から一度書きました。今日は、同じ事案の腎臓の働きの側です。
熱の日数は数えても、尿の量まで数えている家族は多くありません(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 急性腎不全は「数日から数週間のうちに」腎臓の働きが落ちる病気です
- 目安は尿の量。健康な成人で1日約750ミリリットルから2リットル、減ると約500ミリリットル以下です
- Q助は「発熱」の画面で尿の量を聞きます。消防庁の冊子には「尿」の字がありません
1. 傷病名——疑われたのは「急性腎不全」でした
50代の男性。入院中の病院から、より高度な治療ができる病院へお運びしました。熱が3日続き、検査で尿路感染症と、腎臓の働きの低下が疑われていました。尿道にはカテーテル(尿を出す細い管)が入っています。ご本人とは言葉のやりとりができず、主訴はありませんでした。重症・入院です。
急性腎不全とは
『MSDマニュアル家庭版』の説明です。
急性腎不全では、腎臓の血液をろ過して老廃物を取り除く能力が急速に(数日から数週間のうちに)低下します。 (MSDマニュアル家庭版「急性腎不全」)
原因は、大きく3つに分けて書かれています。
急性腎障害が発生する原因としては、腎臓への血液の供給量が減少する病態、腎臓自体を侵す病気や有害物質(毒素)、または尿路のどこかで尿の流れが妨げられる病態などが考えられます。
同じページの原因の表には、「重篤な全身性の感染症(敗血症)」も並んでいます。熱が続く感染症は、腎臓の側からも見る必要がある、ということです。
そして、この一文があります。
このため、急性腎障害は検出が困難な場合があります。
飲んだ量より、出た量のほうが見落とされがちです(写真はイメージです)
2. 症状のサイン——尿の量と、むくみ
MSDは、急性腎障害の初期症状をこう挙げています。
体液の過剰な貯留による体重増加、足と足首のむくみ、顔と手のむくみ 尿量の減少 しばしば尿量(大多数の健康な成人の尿量は1日当たり約750ミリリットルから2リットルです)が1日当たり約500ミリリットル以下まで減少したり、完全に尿が出なくなってしまう場合もあります。尿の量が非常に少なくなった状態を乏尿、完全になくなった状態を無尿と呼びます。
「むくみ」と「尿が減る」。どちらも、本人が言えなくても、そばにいる人には見えます。
ただし、尿が減らないこともあります
同じ段落は、こう続きます。
ただし、急性腎不全であっても通常どおりの尿量が続く人もいます。
尿が出ているから大丈夫、とは言えない。尿量は「減っていたら危ない」サインであって、「減っていなければ安全」の証明ではありません。ここは取り違えないでください。
その後に出てくる症状として、MSDは疲労感・集中力の低下・食欲不振・吐き気・全体的なかゆみを挙げています。どれも「なんとなく元気がない」に紛れやすいものです。
むくみは、朝の顔と夕方の足で気づくことがあります(写真はイメージです)
3. 受診の判断——Q助は「発熱」の画面で尿を聞きます
消防庁の「全国版救急受診アプリ(Q助)」の全274画面を調べました。
「発熱」を選んで最初の画面に当てはまらないと、次の画面にこう出ます。
3.尿の量が減ったり、尿の色が濃くなったりしていますか?
これに当てはまると、次の画面で「高齢者(65歳以上)ですか?」「歩くことができない状態ですか?」を聞かれ、どちらかに当てはまれば「いますぐ救急車を呼びましょう」。どちらでもなければ「2時間をめやすに病院に行かれたほうが良いでしょう」です。
「意識がおかしい」の2画面目にも、まったく同じ「2.尿の量が減ったり、尿の色が濃くなったりしていますか?」があり、先の分岐も同じです。
つまり、熱があって尿が減っているなら、少なくとも2時間をめやすに受診する側。寝たきりや歩けない人なら、救急車の側です。
冊子には「尿」の字がありません
一方、消防庁の冊子『救急車を上手に使いましょう』(令和7年12月発行)の全9ページには、「尿」という字が1つも出てきません。尿の量は、自分から伝えないと拾われない情報です。
「いつもより少ない」は、いつもを知っている人にしか言えません(写真はイメージです)
「尿が少ない」の一言で、確かめる検査が決まることがあります(写真はイメージです)
熱の日数と、尿の量。2つそろうと、話が早くなります(写真はイメージです)

