「熱はありませんでした」——眠っている間に、3回目のけいれん。傷病名は「てんかんの疑い」でした

「熱はありませんでした」——眠っている間に、3回目のけいれん。傷病名は「てんかんの疑い」でした

10代半ばの女性が、寝ている間に約1分間、体をこわばらせるけいれんを起こしました。これで3回目。過去2回も病院を受診しましたが「原因はわからない」まま帰宅していました。国立成育医療研究センターは「てんかん発作」を繰り返すことが確認されれば診断の入り口になるとし、MSDマニュアル家庭版は脳波検査が1回では異常を見逃すことがあると説明しています。現役救急救命士が一次資料の原文で解説します。

今日は、繰り返す、原因不明のけいれんの話をします。傷病名でいうとてんかんの、その疑いです。

この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢は幅で、場所や日付は書きません。救急隊は診断をしません。傷病名は、あくまで現場で疑ったものです。

夜の暗い部屋のベッド 眠っている間の発作に気づけるのは、家族です(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 熱がなく、繰り返し起きているけいれんは、「てんかん」を考える理由の一つです
  • 脳波検査は1回で異常が出ないことがあります。繰り返す検査・眠っている間の検査に意味があります
  • 家族にできる一番の備えは、動画と時刻の記録です

1. 傷病名——「てんかんの疑い」でした

明け方、家族の通報でした。布団の上で、体を強くこわばらせるけいれんが約1分間続いている——目を覚ました家族が、その場で見ていました。

10代半ばの女性。着いたときには、けいれんはすでに治まっていました。呼びかけに応じ、バイタルは安定。熱はありませんでした。

家族に聞くと、初めてではありませんでした。今回で3回目。過去2回は今年の春、3回とも寝ている間に起きています。過去2回とも受診しましたが、「原因はわからない」まま帰宅していました。

この繰り返しと熱のなさが、現場で「てんかん」を考える理由になりました。ただし確定診断はしません。

国立成育医療研究センターの小児てんかんセンターは、こう説明しています。

「てんかん発作」を繰り返すことが確認されれば、てんかんの診断となり得る (国立成育医療研究センター 小児てんかんセンター)

MSDマニュアル家庭版も、てんかんをこう定義しています。

この種のけいれん発作は、明らかな誘因が認められず(すなわち、誘発されません)、2回以上発生します。1回のみのけいれん発作はてんかんとはみなされません。 (MSDマニュアル家庭版「けいれん性疾患」)

タイプ(病型)を決める検査はその場ではできません。だから傷病名は「疑い」で止まります。

アナログの置き時計 何時何分から、何分間——それが、あとで効いてきます(写真はイメージです)


2. 症状のサイン——「原因不明」で終わることが、なぜ起きるのか

MSDマニュアル家庭版の「けいれん性疾患の診断」に、こう書かれています。

脳波の記録時間は限られているため、実際にはけいれん性疾患があっても、脳波検査では異常が見逃され、正常と判断されることもあります。異常放電は睡眠不足のときに起こりやすいため、18~24時間の断眠後に脳波検査を行うこともあります。 (MSDマニュアル家庭版「けいれん性疾患」)

1回「異常なし」でも、てんかんがないことにはなりません。国立成育医療研究センターも、こう書いています。

脳波検査では、目を閉じて安静にしている時や、眠っている時の検査が必要になります。 (国立成育医療研究センター「てんかん」)

3回とも就寝中の今回は、主治医に伝える価値がある点です。同センターは熱のないけいれんを「無熱性けいれん」と呼び、総合診療科がその精査を担当します。

静かな病院の空間 眠っている間の発作は、眠っている間の検査でしか見えないことがあります(写真はイメージです)


3. 受診の判断——Q助は「こども」として聞いてきます

消防庁の「全国版救急受診アプリ(Q助)」は、最初に年代を選びます。「大人(16歳以上)」「こども」の2択で、15歳までは「こども」です。(消防庁リーフレットも、こどものページは「15歳以下」です。)

「こども」のけいれんでは、まず「まだ続いているか」「意識は戻ったか」「顔や唇の色は紫色のままか」「最近頭を強くぶつけたか」を聞かれ、どれか1つでも当てはまれば「いますぐ救急車を呼びましょう」です。今回はどれも当てはまりません。その先はこうです。

7.今までに何回も、同様のけいれんをおこしていますか?

10.発熱がない状態でけいれん(ひきつけ)をおこししましたか?

どちらも今回に当てはまります。この先の設問をたどった結果はこうでした。

2時間をめやすに病院に行かれたほうが良いでしょう。 (結果表示「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」)

「いますぐ救急車」ではありません。ただ、この2つに当てはまらなければ、結果はもう一段ゆるやかになります。「繰り返している」「熱がない」は、早めの受診に進める理由として扱われています。

消防庁のリーフレットにも「けいれんが止まらない」なら119番、という一行がこどものページにあります(「けいれんが止まっても、意識がもどらない」も、こども・おとなに共通してあります)。発作そのものへの対応こちらの記事に。

やわらかい白い枕 治まったあと、次にすることを決めるのは、症状の続き方です(写真はイメージです)


4. 家族へ——「見ていたこと」が、次の受診の手がかりになります

① できれば動画を、時刻も記録してください

国立成育医療研究センターは、こう書いています。

スマートフォンなどで録画して、どんな時に、どんな症状の発作が起きたのかを医師に伝えて、見せることが診断の役に立ちます。 (国立成育医療研究センター「てんかん」)

MSDマニュアル家庭版も、こう書いています。

発作を目撃した人の話は非常に役立つ可能性があります。発作を起こした人は通常、何が起こったかを説明できませんが、目撃者は正確に説明できるからです。

(中略)

発作の継続時間は、可能であれば時計などで正確に計っておくべきです。実際には1~2分間しか続いていない発作でも、永遠のように感じられることもあります。 (MSDマニュアル家庭版「けいれん性疾患」)

発作中の対応(口に物を入れない・押さえつけない・横向き)はこちらの記事に。ここでの主題は、止まったあとに何を書き残すかです。

② 受診の時、伝えられるとよいこと

MSDマニュアル家庭版は、必要な情報をこう挙げています。

筋肉の異常な動き(頭部、頸部、顔面の筋肉のふるえやひきつりなど)、舌をかむ、よだれが出る、尿失禁または便失禁、筋肉の硬直などの症状はみられたか (MSDマニュアル家庭版「けいれん性疾患」)

何時何分に始まり何分続いたか、体のどこがどう動いたか、意識が戻るまでの時間、熱の有無、何回目か。専門の科(小児神経科など)を受診する材料になります。過去2回も、同じ形で書く価値があります。

③ 睡眠について

MSDマニュアル家庭版は、発作の原因を調べる際に医師が確認する項目として、こう挙げています。

十分な睡眠をとっているかどうか(一部の患者では、睡眠が不十分であると発作が起こりやすくなります) (同)

寝不足が続いていなかったかも、記録に添えてください。

迷う段階なら♯7119もあります。思春期に倒れる原因には起立性調節障害もあります。大人の「症候性てんかん」は別の記事に。

机の上のスマートフォン 動画と時刻。「わからない」も、そのまま書いていい情報です(写真はイメージです)

この記事で書かなかったこと

  • てんかんの型(病型)——症状だけでは決められません
  • 脳波検査が実施されたかどうか——記録になく、書けません
  • 抗てんかん薬をいつから始めるか——一般的な考え方はありますが、今回の方針ではありません
  • 進学・運転・結婚・出産への影響——日本の一次資料が見当たらず、書きません

まとめ

  • てんかんは「誘因がなく、2回以上」の発作で考えられます(MSD)。3回目・熱なし・就寝中の繰り返しが理由でした
  • 脳波検査は1回で異常が出ないことがあります。繰り返しの検査・眠っている時の検査に意味があります
  • Q助は15歳までを「こども」として扱います。「繰り返している」「熱がない」で、結果は「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」でした
  • 家族にできる備えは、動画と時刻の記録です

カーテン越しの朝の光 繰り返すなら、次は「原因不明」のままにしない準備を(写真はイメージです)

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

この記事の内容に関係する備え。

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本記事は一般的な情報提供であり、医療診断に代わるものではありません。実際の症状については必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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救急のリアル 編集部

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