今日は「橈骨遠位端骨折(とうこつ・えんいたん・こっせつ)」の話をします。手首の骨折のことです。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的な資料を、家庭の言葉に置き換えて説明します。そして、いつもどおり救急隊は診断をしません。
転んで手をついたあとの話です(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 手をついて転んだあとの手首の骨折です。学会は「特に閉経後の中年以降の女性では骨粗鬆症で骨が脆くなっているので、簡単に折れます」と書いています
- 指がしびれてきたら、それは骨折そのものより急ぐ理由になります。神経が押されているサインだからです
- しびれる範囲は「親指から薬指」。脳のしびれとは範囲が違います
1. 傷病名——橈骨遠位端骨折とは
日本整形外科学会の一般向けページは、こう説明しています。
手のひらをついて転んだり、自転車やバイクに乗っていて転んだりしたときに、前腕の2本の骨のうちの橈骨(とうこつ)が手首のところ(遠位端)で折れる骨折です。
腕には骨が2本あり、そのうち親指側の太いほうが橈骨です。その手首に近い端が折れる。手をつけば体重がそこに集中するので、いちばん折れやすい場所のひとつです。
起きやすい人についても、はっきり書かれています。
特に閉経後の中年以降の女性では骨粗鬆症で骨が脆くなっているので、簡単に折れます。
「簡単に折れます」。転び方が派手だったかどうかは、あまり関係がありません。
濡れた段差は、手をつく転び方になりやすい場所です(写真はイメージです)
2. 症状のサイン
学会が挙げているのは、この4つです。
手首に強い痛みがあり、短時間のうちに腫れて来ます。(中略)手のひらをついて転んだあとでは食器のフォークを伏せて置いたような変形が見られます。手がブラブラで力が入らず、反対側の手で支えなければならなくなります。ときには、折れた骨や腫れによって神経が圧迫され指がしびれることもあります。
家庭の言葉に置き換えると、こうなります。
- 短い時間で腫れてくる(時間がたってから、ではありません)
- 手首の形が変わって見える——横から見て、フォークを伏せたような段差ができます
- 手がブラブラして、反対の手で支えないといられない
- 指がしびれる
★いちばん見落とされるのが「しびれ」です
学会は、しびれる範囲まで書いています。
橈骨の手のひら側を走っている正中神経が、折れた骨や腫れで圧迫されると、母指(親指)から薬指の感覚が障害されます。
親指・人差し指・中指・薬指。小指は入りません。これは骨や腫れが神経を押しているというサインで、折れていること自体よりも急ぎます。
しびれる範囲は「親指から薬指」と学会は書いています(写真はイメージです)
3. 避けるには・受診の判断
国の冊子には、載っていません
消防庁のリーフレット『救急車を上手に使いましょう』(令和7年12月発行)全9頁を、今回も自分で検索しました。
- 「骨折」……0件
- 「手首」……0件
- 「変形」「腫れ」……いずれも0件
「けが」の欄にあるのは「大量の出血を伴うけが」「広範囲のやけど」の2つだけ。手首の骨折で救急車を呼ぶ、という項目は、この冊子のどこにもありません。
⚠️ ただし「しびれ」は載っています——別の意味で
同じ冊子の「手足」の欄には、こうあります。
● 突然のしびれ ● 突然、片方の腕や足に力が入らなくなる
これは高齢者・おとなの両ページに同じ形で入っていて、脳卒中を想定した項目です。転んでもいないのに突然しびれたなら、そちらです。
同じ「しびれ」でも、意味が違います。
- 転んで手をついたあと、その手の親指から薬指がしびれる → 手首の骨折で神経が押されている可能性。整形外科へ
- 転んでもいないのに、片側の手足が突然しびれる・力が入らない → 脳のほう。119番
見分けのことばは、「転んだ前か、あとか」と「片手だけか、手足の片側全部か」です。
家庭での応急手当
腫れや変形があるときに、家庭で骨を戻そうとしないでください。そうすることをすすめている公的資料はありません。
学会が書いている整復は、「腕の麻酔や静脈麻酔で痛みをとってから」行うものです。家庭でできるのは、動かさずに支えることと、冷やすことまでです。
「動く=折れていない」ではありません(写真はイメージです)
「何時に、どう転んで、どの指がしびれるか」——これだけで伝わります(写真はイメージです)
横から見て、指を1本ずつ聞いてください(写真はイメージです)

