【震災Day6】高齢者と子どもの災害医療——普段の薬・持病を守る備え
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【震災Day6】高齢者と子どもの災害医療——普段の薬・持病を守る備え

震災の避難生活では、高齢者と子どもが「災害弱者」になりやすいことが知られています。薬の欠品、かかりつけ医の不在、体力差——普段は当たり前に受けられている医療が、災害時には途切れます。高血圧・糖尿病・心疾患などの持病の薬、お薬手帳の家族共有、子どものアレルギーや発熱への備えを、厚生労働省・日本小児科学会などの情報をもとに救急救命士がまとめます。

2026年7月28日の熊本震度7から、今日で8日目です。

昨日(Day5)は、避難生活で警戒したい感染症の予防について書きました。今日は、その避難生活のなかで、とくに大きな負担を負う高齢者と子ども、そして持病を持つ人の医療をどう守るかをお伝えします。

大きな災害では、外傷やその後の感染症だけでなく、「普段飲んでいる薬が手に入らない」「かかりつけの病院に行けない」ことが、静かに、しかし深刻に効いてきます。今日は、家族が今日から準備できることを中心にまとめます。

避難生活のなかの高齢者と家族 災害時、いちばん先にしわ寄せがくるのが、高齢者・子ども・持病のある人です

なぜ高齢者・子どもが「災害弱者」になるのか

同じ被災地にいても、受ける負担は人によって大きく違います。高齢者・子ども・持病を持つ人が「災害弱者」と呼ばれるのには、理由があります。

① 薬が途切れる 高血圧、糖尿病、心臓の病気、てんかんなど、毎日の薬で体調を保っている人にとって、薬の中断は命に関わります。避難で薬を持ち出せなかった、薬局が営業していない、処方箋がもらえない——災害時にはこうしたことが同時に起こります。

② かかりつけ医・かかりつけ薬局が使えない いつもの病院が被災した、道路が寸断されて行けない。ふだん当たり前に受けられていた診療や処方が、途切れてしまいます。

③ 体力差・予備力の少なさ 高齢者も子どもも、暑さ・寒さ・脱水・感染に対する体の余力が少なく、環境の悪化がすぐ体調に響きます。子どもは症状を言葉でうまく伝えられないことも、発見を遅らせます。

こうした弱さは、事前の備え周りの見守りで、かなり補うことができます。高齢者と子ども、それぞれについて見ていきます。

高齢者:持病の薬を切らさない備え

高齢の家族がいる場合、いちばん大切なのは**「薬を切らさない」備え**です。

錠剤・常備薬 毎日の薬で体調を保っている人にとって、薬の中断は大きなリスクです

① 常備薬リストを作っておく 何の薬を、いつ、どれだけ飲んでいるか。家族が把握していないことは意外に多いものです。薬の名前・量・飲むタイミングを紙にまとめておくと、避難先や救護所で医療者に伝えるときに役立ちます。

② お薬手帳を家族で共有する お薬手帳は、災害時に「その人が何の薬を使っているか」を医療者に正確に伝える、とても有効な手段です。薬そのものを持ち出せなくても、手帳(または、その写真をスマホに保存しておく)があれば、代わりの薬を出してもらいやすくなります。ふだんから、家族が手帳の中身を写真で共有しておくと安心です。

お薬手帳と処方薬 お薬手帳(やその写真)は、薬が持ち出せなくても「代わりの薬」につながる命綱です

③ 薬は少し多めに、持ち出せる場所に 薬は、ふだんから少し余裕をもって手元に置き、避難バッグや持ち出しやすい場所にまとめておきましょう。とくに、高血圧・糖尿病・心臓の病気の薬は、中断すると急な体調悪化につながりやすいものです。

血圧測定 血圧・血糖の管理が必要な人ほど、薬の備えが命を左右します

④ 変化に早く気づく 薬が切れたあとは、血圧が上がる、むくむ、息が苦しい、ぼんやりする、といった変化が出ることがあります。糖尿病の方では、食事がとれないなかで薬を続けることで低血糖を起こすこともあります。いつもと違うと感じたら、我慢せず救護所や医療者に相談してください。

高齢の家族を見守る 薬のことも体調の変化も、周りが気にかけることが最大の備えになります

子ども:かかりつけとアレルギー・発熱への備え

子どもは、体力の予備が少なく、症状をうまく伝えられません。だからこそ、大人の備えがそのまま子どもの安全になります。

避難先の子ども 子どもは「つらい」をうまく言葉にできません。周りが先に気づく必要があります

① かかりつけ小児科の連絡先を控えておく かかりつけの小児科の名前・連絡先、子どもが飲んでいる薬、持病があればその内容を、紙とスマホの両方に控えておきましょう。母子健康手帳も、予防接種歴や既往を伝えるのに役立ちます。

② アレルギーのある子は「情報」と「薬」を必ず 食物アレルギーのある子どもは、避難所の配給食で思わぬ原因物質に触れるリスクがあります。何にアレルギーがあるかを周囲に伝えられるよう、メモやカードを用意しておきましょう。エピペン(アドレナリン自己注射薬)を処方されている子は、必ず持ち出せるようにし、家族全員が使い方を確認しておいてください。

小児の診察 アレルギーや持病の情報は、いざというとき子どもの代わりに語ってくれます

③ 急な発熱・脱水を見逃さない 子どもは、発熱や下痢・嘔吐から脱水になりやすく、進行も早いのが特徴です。ぐったりして元気がない、おしっこの回数が極端に減る、唇や口の中が乾いている、機嫌が悪く水分もとれない——こうしたときは、早めに救護所や医療者に相談してください。

体温計で発熱を確認 子どもの脱水は進行が早い。「いつもと様子が違う」を早めに拾ってください

④ 体温計・救急用品も備えに入れる 体温計、ふだん使っている常備薬、消毒などの救急用品も、避難バッグに入れておきましょう。子どもの体調を数字で確認できると、医療者への相談もスムーズになります。

防災用の救急用品・常備薬 薬・お薬手帳・体温計・連絡先。この「医療の備え」が、災害時の安心につながります

最後に

災害医療というと、大きな病院やDMAT(災害派遣医療チーム)のような専門の力を思い浮かべるかもしれません。もちろんそれは頼もしい存在です。でも、高齢者や子どもの「毎日の医療」を守るのは、家族のふだんからの備えです。

薬を少し多めに。お薬手帳を家族で共有。かかりつけの連絡先を控える。アレルギーやエピペンを確認する。——どれも、災害が起きる前の、今日できることです。

手をつなぐ家族 大切な家族の「いつもの薬」を守る備えを、今日から少しずつ

明日(Day7・最終回)は、**1週間が経ったころの「心のケア」**について書きます。被災のあと、大人にも子どもにも起こりうる心の反応と、その初期の向き合い方をお伝えします。


参考文献


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医療行為・医療診断・治療の指示ではありません。症状がある場合や心配なことがあれば、必ず医療機関を受診してください。緊急の場合は119番に電話してください。

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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