「立ちくらみ」も「こむら返り」も熱中症です——傷病名でいうと「熱失神」と「熱けいれん」でした
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「立ちくらみ」も「こむら返り」も熱中症です——傷病名でいうと「熱失神」と「熱けいれん」でした

熱中症には4つの名前があります。環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』は、軽症の熱失神を「立ちくらみ」、熱けいれんを「筋肉のこむら返り」と説明し、どちらも意識は清明だと書いています。最重症の熱射病は「高体温に加え意識障害と発汗停止」。判断の軸は体温の数字ではなく、意識がしっかりしているかどうかです。敬老の日の連休に祖父母の家を訪ねる家族に向けて、現役救急救命士が一次資料の原文で整理します。

今日は、熱中症の呼び名の話をします。傷病名でいうと熱失神熱けいれん——どちらも、熱中症です。

この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的な資料で確かめられることだけを書きます。

連休に、祖父母の家を訪ねる方もいると思います。「立ちくらみがしてね」「夜、足がつるんだよ」——そう言われたとき、それを熱中症だと思う人は多くありません。

祖父母の家の居間 連休に訪ねたときに、聞いておきたいことがあります(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 熱中症には4つの名前があります。立ちくらみもこむら返りも、そのうちの2つです
  • 軽い2つは、意識がはっきりしています。だから見過ごされます
  • 判断の軸は体温ではありません。意識がしっかりしているか、水を自分で飲めるか、症状が改善したかです

1. 傷病名——熱失神・熱けいれん・熱疲労・熱射病

環境省の『熱中症環境保健マニュアル2022』は、まず熱中症をこう定義しています。

本マニュアルでは、熱中症を「暑熱障害による症状の総称」として用いています。「暑熱環境にさらされた」という状況下での体調不良はすべて熱中症の可能性があります。 (環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』p.20)

「総称」です。ひとつの病気の名前ではありません。そして、4つの型が続けて説明されます。

軽症である熱失神は「立ちくらみ」、同様に軽症に分類される熱けいれんは全身けいれんではなく「筋肉のこむら返り」です。どちらも意識は清明です。中等症に分類される熱疲労では、全身の倦怠感や脱力、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢等が見られます。最重症は熱射病と呼ばれ、高体温に加え意識障害と発汗停止が主な症状です。 (同)

家庭の言葉に置き換えると、こうなります。

呼び名 家庭で見える形 重症度
熱失神 立ちくらみ 軽症(Ⅰ度)
熱けいれん 足などのこむら返り 軽症(Ⅰ度)
熱疲労 だるい・頭痛・吐き気・嘔吐・下痢 中等症(Ⅱ度)
熱射病 高い体温+意識がおかしい+汗が止まる 重症(Ⅲ度)

「こむら返り」が熱中症の名前を持っていることは、あまり知られていません。夜中に足がつって起きる——それが暑さのせいであることが、あります。


2. 症状のサイン——軽い2つは、意識がはっきりしています

マニュアルは、熱失神と熱けいれんについて「どちらも意識は清明です」と書いています。

これが、見過ごされる理由です。受け答えは普通。歩ける。本人も「ちょっとクラッとしただけ」と言う。熱中症だと思う入り口が、どこにもありません。

そのうえで、マニュアルは判断の軸をはっきり書いています。

重症度を判定するときに重要な点は、意識がしっかりしているかどうかです。少しでも意識がおかしい場合には、Ⅱ度(中等症)以上と判断し病院への搬送が必要です。「意識がない」場合は、全てⅢ度(重症)に分類し、絶対に見逃さないことが重要です。 (同 p.20)

体温の数字は、ここに出てきません。平熱でも熱中症は起こります。見るのは意識です。


3. 受診の判断——冷やして、水を飲ませて、それでも良くならないとき

同じマニュアルが、家庭で使える3つのポイントを挙げています。

重症度(救急搬送の必要性)を判断するポイント意識がしっかりしているか?水を自分で飲めるか?症状が改善したか? (同 p.20 表2-1 併記欄)

そして、線引きの一文です。

Ⅰ度(軽症)の症状があれば、すぐに涼しい場所へ移し体を冷やすこと、水分を自分で飲んでもらうことが重要です。(中略)応急処置を施しても症状の改善が見られないときはⅡ度(中等症)と判断し、すぐに病院へ搬送します。 (同 p.21)

「涼しくした・水を飲ませた・それでも良くならない」。ここが、家で見ていてよいかどうかの分かれ目です。冷やし方の手順は応急手当5ステップの記事にまとめています。

家の中の段差 立ちくらみは、転倒にもつながります(写真はイメージです)


4. 家族へ——連休に訪ねたら、聞いてほしいこと

① 「立ちくらみ」と「足がつる」を、別々に聞く

「体調どう?」と聞くと、たいてい「変わりないよ」と返ってきます。具体的に聞いてください。

  • 立ちくらみはある?(=熱失神)
  • 夜、足がつる?(=熱けいれん)
  • 食欲は?だるくない?(=熱疲労)

どれも、本人は熱中症だと思っていません。だから、こちらから名指しで聞く必要があります。

鉄瓶 お茶を出してもらったら、その一杯を本人にも飲んでもらってください(写真はイメージです)

② 9月でも起きます

9月の搬送は7月の約4分の1ですが、令和6年9月は調査開始以来いちばん多く、令和7年9月は2番目でした。9月に何が変わるかは9月の熱中症の記事に、高齢のご家族で見るサインは「暑くない」と言う高齢の親の記事に書きました。

③ 帰ったあとに効くのは、エアコンより「聞き方」です

連休が終われば、また離れて暮らすことになります。電話で「暑くない?」と聞くと「大丈夫」と返ります。「立ちくらみした?」「足つった?」——この2つなら、事実として答えられます。

迷う段階なら♯7119もあります。熱中症の記事全体はまとめからたどれます。

縁側と網戸 風が通っていても、室内で起こります(写真はイメージです)

この記事で書かなかったこと

  • 「こむら返りが何回あったら危ない」という回数の目安——公的資料にありません
  • 熱失神・熱けいれんの発生数——消防庁の統計は熱中症全体の数で、型別の集計はありません
  • 水分をどれだけ飲めばよいかの量——年齢や持病、飲んでいる薬で変わるため、かかりつけにご確認ください

まとめ

  • 熱中症は「暑熱障害による症状の総称」熱失神・熱けいれん・熱疲労・熱射病の4つがあります
  • 熱失神=立ちくらみ、熱けいれん=筋肉のこむら返り。「どちらも意識は清明」だから見過ごされます
  • 判断の軸は体温ではなく、意識がしっかりしているか・水を自分で飲めるか・症状が改善したか
  • 少しでも意識がおかしければⅡ度以上、意識がなければ全てⅢ度
  • 連休に訪ねたら「立ちくらみは? 足はつる?」と、名指しで聞いてください

夕方の光の入る室内 「変わりないよ」の一言で終わらせないために(写真はイメージです)

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

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参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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救急のリアル 編集部

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