「酸素、つけなくて大丈夫なんですか」——心筋梗塞の疑いで運ばれる父に、救急車が酸素を使わなかった理由

「酸素、つけなくて大丈夫なんですか」——心筋梗塞の疑いで運ばれる父に、救急車が酸素を使わなかった理由

急性心筋梗塞の疑いで、地域の病院からカテーテル治療ができる病院へ運ばれた60代男性。車内でのSpO2は99%、酸素は最後まで投与しませんでした。「手を抜かれたのでは」と感じたご家族に、日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』表14と、JRC蘇生ガイドライン2020「ACSへの病院前の処置」の原文で説明します。

その日の指令は、119番通報ではありませんでした。

病院から、病院へ。

地域の病院から、心臓のカテーテル治療ができる病院まで、患者さんを運ぶ——いわゆる転院搬送です。

傷病者は60代の男性。診断は、急性心筋梗塞の疑い。

処置室で医師から申し送りを受け、ストレッチャーに移し、車内に収容しました。娘さんが付き添われることになり、助手席に座っていただきました。

車が動き出してしばらくして、娘さんが、後ろを振り返って言いました。

「あの……酸素は、つけなくて大丈夫なんですか」

父親の顔には、何もついていませんでした。心電図の電極と、指先のパルスオキシメータと、血圧計のカフだけです。

もっともな質問だと思いました。

そして、この質問に正面から答えることが、今日の記事です。

使われないまま白いシーツの上に置かれた酸素マスク 酸素マスクには、「使う」と「使わない」の両方の判断があります(写真はイメージです)


車内で見ていた数字

車内で継続して見ていたのは、次の数字です。

項目
意識 清明。会話ができる
呼吸 苦しそうな様子はない。横になって話せる
SpO2 99%(酸素を投与しない状態で)
血圧・脈拍 モニタで継続監視
心電図 12誘導を記録し、モニタで継続監視

このなかで、娘さんの質問に直接かかわるのが、**SpO2 99%**という数字です。

SpO2は、血液のなかでどれくらい酸素が運ばれているかを、指先の光で推定する値です。この数字が**酸素を吸わせていない状態で99%**だった。

つまり、この方の血液は、部屋の空気だけで、すでにほぼ満杯まで酸素を積んでいたということです。

ここに酸素マスクを足したら、どうなるか。

ほとんど、何も変わりません。

99%の器に、さらに注いでも、あふれるだけです。

これは私の感覚論ではありません。日本の学会のガイドラインが、はっきりそう書いています。


ガイドラインは、2013年と2018年で逆になっている

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

**「心筋梗塞といえば酸素マスク」は、かつては正しかったのです。**そして今は、正しくありません。

日本循環器学会の『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』は、「初期治療」の章の冒頭を、こう書き出しています。

「ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)」では、すべてのSTEMI患者に対する来院後6時間の酸素投与は、クラスIIa、エビデンスレベルCで推奨されていた。しかし最近の報告では、低酸素血症のない患者への酸素投与の有効性は否定されている。

(日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』第3章 初期診断,初期治療 2.1 酸素)

STEMIというのは、心筋梗塞のなかでも心電図でST上昇という変化が出るタイプのことです。**2013年版では「全員に、来院後6時間、酸素を投与する」が推奨だった。**それが2018年版で、覆されました。

そして続きが、こうです。

低酸素血症、心不全やショックの徴候がある場合には酸素投与を開始すべきであるが、ルーチンの酸素投与は推奨されない。酸素投与の必要性を判断するために、来院時ただちに酸素飽和度をモニタリングする。

「酸素をやめろ」ではありません。「測ってから決めろ」です。

表14——推奨が2行で書かれている

同じガイドラインの**表14「初期治療における酸素投与の推奨とエビデンスレベル」**は、たった2行です。原文どおりに並べます。

推奨 推奨クラス エビデンスレベル
低酸素血症(酸素飽和度90%未満)または心不全徴候のある患者に対して酸素を投与する I C
酸素飽和度90%以上の患者に対してルーチンの酸素投与は推奨されない III(No benefit) A

読み方を補います。

  • クラスIは「行うべき」。**クラスIII(No benefit)**は「行っても利益がない」。
  • エビデンスレベルAは、複数のランダム化比較試験などに裏づけられた、いちばん強い根拠のことです。

つまり——

「90%未満なら投与する」のほうが根拠レベルC(比較的弱い)で、「90%以上にはルーチン投与しない」のほうが根拠レベルA(いちばん強い)なのです。

現場で「つけない」と判断したほうが、実は根拠が強い。これは、多くの方の直感と逆だと思います。

モニタにHR 59とSpO2 99という数字が表示されている 酸素をつけるかどうかを決めるのは、この数字です(写真はイメージです)


「病院に着いてから」ではなく「救急車のなかから」の話

ここまでは、病院での初期治療の話でした。

では、救急車のなかは?

こちらは、日本蘇生協議会(JRC)の『JRC蘇生ガイドライン2020』第6章「急性冠症候群」に、**「ACSへの病院前の処置」**という節が、そのまま置かれています。病院前——つまり、救急隊が接触してから病院に着くまでの話です。

そこに立てられている問い(CQ)は、こうです。

正常酸素飽和度を示すAMI患者に酸素は必要か?

そして、推奨と提案。

低酸素血症のないAMIまたはその疑い患者に対して、ルーチンの酸素投与をしないことを提案する(弱い推奨、エビデンスの確実性:非常に低い、Grade 2D)。

(日本蘇生協議会『JRC蘇生ガイドライン2020』第6章 急性冠症候群「4 ACSへの病院前の処置」)

「AMIまたはその疑い」——ここが大事です。病院前では診断が確定していないことが普通です。今回の事案も「急性心筋梗塞の疑い」でした。ガイドラインは、疑いの段階も含めて書いています。

注釈のほうが、実は重要

この推奨には、4つの注釈がついています。そのうち2つを、そのまま引きます。

*1:(略)なお、低酸素血症はPaO2≦60 mmHgのことであり、SpO2では90%以下が該当する。

*3:SpO2が90%以上であっても、頻呼吸や起坐呼吸、心原性ショックには酸素投与が必要。

つまり、「SpO2が90%以上だから酸素はいらない」と機械的に決めているわけではありません。

  • 呼吸が速い
  • 横になれず、起き上がっていないと苦しい(起坐呼吸)
  • ショックの状態にある

このどれかがあれば、数字が90%以上でも酸素を投与します。

今回の男性は、会話ができ、横になって話せて、呼吸が速くもありませんでした。だから、投与しなかった。数字だけで決めたのではなく、数字と様子の両方を見て決めています。

そして、上限の話

JRCは同じ項目の「患者にとっての価値とJRCの見解」で、こう書いています。

SpO2が90%以上であっても、頻呼吸や起坐呼吸、心原性ショックにはSpO2が100%にならないように、酸素流量を調整し酸素投与が必要である。なお、酸素投与量の上限について今回は検討できていない。

「SpO2が100%にならないように、酸素流量を調整し」。

酸素が必要な場合ですら、100%を目指さないと書いてあります。

「酸素は多ければ多いほどよい」——この考え方は、少なくとも急性冠症候群では、国内のガイドラインが採っていません。


ただし、「酸素は毒だ」という話ではありません

ここは、慎重に書きます。

インターネット上では、「酸素の与えすぎが心筋を傷める」といった説明を見かけることがあります。私も現場に出はじめたころ、先輩からそれに近い言い方で教わった記憶があります。

ですが、いま日本のガイドラインに書かれているのは、そうではありません。

JRC蘇生ガイドライン2020は、この論点について、こう記録しています。

CoSTR 2015では経皮的酸素飽和度93%以上(SpO2≧93%)のAMI患者に対する高容量酸素投与は有害としたが、その後のエビデンスに有害報告はなくACS作業部会ではこの話題を優先的にレビューした。

「その後のエビデンスに有害報告はなく」。

2015年の国際コンセンサスは「有害」としていた。その後の研究では、有害だという報告は出なかった——そう書かれています。

実際、同ガイドラインが集計したランダム化比較試験のメタアナリシスでは、院内死亡・6か月〜1年後の死亡・入院中の再梗塞・心原性ショック・心停止・心臓MRIで測った梗塞サイズのすべてについて、酸素を投与しない群と、ルーチンに投与する群は「同等であった」とされています。

つまり、正確に言うとこうです。

酸素をつけないのは「つけると悪くなるから」ではありません。「つけてもつけなくても結果が変わらないから」です。

「効かないから、やらない」。医療の判断としては、これで十分な理由になります。ですが、「毒だからやらない」とは意味がまったく違うので、この記事では、そこを混ぜないでおきます。

人けのない、薄暗い建物の廊下 「効かないからやらない」と「毒だからやらない」は、別の話です(写真はイメージです)


高齢の方の両手が膝の上で重ねられている 88%の日もあれば、99%の日もあります。分かれ目は数字のほうです(写真はイメージです)


ご家族に持ち帰ってほしい、たった一行

ここまでを、ご家族向けに1行にすると、こうなります。

酸素マスクがついていないことは、「軽い」の証拠でも、「手を抜かれた」の証拠でもありません。

そして、逆向きも同じです。

酸素マスクがついていることも、それだけでは重症度を意味しません。

このブログでは、酸素を投与した事案も書いてきました。

**同じ救急車の、同じ機材で、つける日とつけない日がある。**その分かれ目にあるのが、指先の数字と、呼吸の様子です。

「あの人にはつけていたのに、うちの父にはつけてくれなかった」——もしそう感じられたら、それはたぶん、数字が違ったのだと思ってください。


では、その車内で私たちは何をしていたのか

酸素を投与しなかったからといって、何もしていなかったわけではありません。

急性心筋梗塞で運んでいるとき、救急隊がいちばん運んでいるのは、酸素ではなく「時間」です。

12誘導心電図

JRC蘇生ガイドライン2020は、病院前で12誘導心電図を記録することについて、「大規模な症例数での一致した院内死亡あるいは30日後死亡の改善と、救急外来受診から再灌流までの時間短縮をより重視している」と書いています。

**心電図の波形が先に病院に届いていれば、病院はカテーテル室の準備を先に始められます。**私たちが記録して伝えるのは、そのためです。

モニタに表示された緑色の心電図の波形 酸素の代わりに先に届けているのは、この波形です(写真はイメージです)

DIDO時間——「30分以内」という目標

今回のような、カテーテル治療(プライマリーPCI)ができない病院から、できる病院へ運ぶケースについては、JRCに専用の項目があります。

STEMI患者に対して、DIDO時間を30分以内にすることを提案する(弱い推奨、エビデンスの確実性:非常に低い、Grade 2D)。

DIDO時間(Door-in Door-out Time)とは、最初の病院に入ってから、その病院を出るまでの時間のことです。

同じ項目の解説には、目標の全体像も書かれています。

  • First door(カテーテル治療ができない病院を受診した時刻)からballoon(血管を広げる処置)までを120分以内にする
  • カテーテル治療ができる病院でのDoor-to-balloon時間を90分以内にする
  • そのために、最初の病院でのDIDO時間を30分以内にする

つまり、転院搬送の救急車は、この120分という時計のなかを走っています。

ただし、JRC自身がすぐ後ろに条件をつけています。「わが国、特に都市部においてはSTEMIに対してプライマリーPCIを施行できる施設が近距離内に多数ある状況であり、DIDO時間の転帰に関する影響は欧米とは異なる可能性に留意する必要がある」。**この30分は、日本で検証された数字ではありません。**そこは正直に書いておきます。

薬は、救急車では使えません

「では、薬は?」と思われるかもしれません。

心筋梗塞の初期治療では、アスピリンやニトログリセリンが使われます。JRCも、病院前でのアスピリン投与について死亡を減らす可能性を示しています。

しかし、同じガイドラインに、こう書かれています。

わが国ではSTEMI患者への救急隊によるアスピリン投与は法的な課題となっている。

わが国ではACS患者への救急隊(救急救命士)によるニトログリセリン投与は法的な課題となっている。

日本の救急救命士は、心筋梗塞を疑う傷病者に、アスピリンもニトログリセリンも投与できません。(すでに医師から処方されている方が、ご自分でニトログリセリンを使うことは、これとは別の話です。)

だからこそ、運ぶ時間そのものが、私たちの持っているいちばん大きな道具になります。

壁に掛けられた時計 運んでいるのは酸素ではなく、時間です(写真はイメージです)


転院搬送は「たらい回し」ではありません

車のフロントガラス越しに見える夜の道路 病院から病院へ。救急車が走る理由は、119番通報だけではありません(写真はイメージです)

娘さんは、もうひとつ、こうも言われました。

「最初の病院で、診てもらえなかったってことですか」

違います。

**最初の病院は、診断をしてくれています。**心電図を取り、採血をし、「これはカテーテルが必要だ」と判断して、できる病院を探して、私たちを呼んだ。

その判断がなければ、この搬送は始まっていません。

総務省消防庁の集計でも、転院搬送は例外的な出来事ではありません。

令和6年中、救急自動車の出動件数は771万8,380件。その内訳を事故種別で見ると——

事故種別 出動件数 構成比
急病 519万5,867件 67.3%
一般負傷 122万4,778件 15.9%
転院搬送 58万1,928件 7.5%
交通事故 39万3,941件 5.1%

(総務省消防庁「『令和7年版 救急・救助の現況』の公表」表3より)

**転院搬送は、急病・一般負傷に次いで3番目に多い出動理由です。**交通事故より多い。しかも前年より4.6%増えています。

「病院から病院へ運ぶ」は、日本の救急医療の、ごく普通の一部です。

急性膵炎で同じように病院から病院へ運ばれた事案は、「みぞおちの激痛で運ばれた病院から、また救急車に乗った」に書きました。「なぜ最初の病院ではダメなのか」を、そちらではもう少し詳しく説明しています。

また、119番通報からの搬送で「なかなか出発しない」ことについては、「救急車が出発しない12分間」にまとめました。


ご家族にお願いしたいこと(心筋梗塞が疑われる場面で)

酸素の話とは別に、ご家族にしかできないことがあります。3つだけです。

① 「いつから」を、時刻で

心筋梗塞の治療は、時間で決まります。DIDOも、Door-to-balloonも、すべて時計の話です。

**「今朝から」ではなく「6時ごろ、朝食のあとから」。**思い出せる範囲でかまいません。時刻に近いほど、価値が上がります。

胸ではなく肩や顎の違和感から始まることもあります。そのタイプについては、「胸じゃなくて、肩と顎が痛い」に書きました。「痛くなった時刻」は、痛かった場所がどこであっても聞かれます。

② お薬手帳を、そのまま

心筋梗塞の治療では、血を固まりにくくする薬を使います。すでに飲んでいる薬があるかどうかは、治療の組み立てを変えます。

覚えて伝えようとしなくて大丈夫です。**手帳を、そのまま持ってきてください。**まとめ方は家庭の常備薬とお薬手帳の整理術に書いています。

③ 119番では、聞かれたことに答えるだけでいい

「うまく説明できる自信がない」という声をよく聞きます。**その必要はありません。**119番で何を聞かれるかは、119番通報、電話に出た瞬間に聞かれる7つのことにまとめました。

**そして、脈拍などの数字を家族が測っておく必要はありません。**それは私たちの仕事です(脈を数える——家族が残せるたったひとつの数字)。

ダイヤル式の電話機の受話器を手に取っているところ 聞かれたことに答えるだけで十分です(写真はイメージです)

白い紙の上に置かれた黒いボールペン 覚えて伝えなくて大丈夫です。手帳は、そのまま持ってきてください(写真はイメージです)


「もしものとき」の備えを

急性心筋梗塞は、カテーテル治療が必要になれば入院が前提の病気です。集中治療室での管理を経て、その後に心臓リハビリテーションへ進むこともあります。

働き盛りの世代であれば、治療費だけでなく、収入が止まる期間も出てきます。入院日数に応じて給付される医療保険や、働けない期間を支える就労不能保険は、こうした「予告なく始まる入院」と相性の良い備えです。急な入院で慌てないために、この機会にご家庭の保険を一度確認しておくことをおすすめします。


この記事で「書けなかったこと」

いつものように、確認できなかったこと・書けなかったことを正直に置いておきます。

  • **「酸素の与えすぎが心筋の障害を悪化させる」という説明。**使いませんでした。JRC蘇生ガイドライン2020は、この論点について「CoSTR 2015では(略)高容量酸素投与は有害としたが、その後のエビデンスに有害報告はなく」と書いています。心臓MRIで測った梗塞サイズも「同等」でした。現行の国内ガイドラインが書いているのは「有害」ではなく「利益がない(No benefit)」までです。
  • **「酸素を何L/分まで投与してよいか」の上限。**JRC自身が「酸素投与量の上限について今回は検討できていない」と明記しています。書けません。
  • JRC蘇生ガイドライン2025の本文。書籍版が2026年7月13日に発刊され、急性冠症候群は第6章「緊急心血管治療(ECC)」に統合されたと日本蘇生協議会のサイトに記載があります。ただし公開されていたパブリックコメント版のPDFは現在404になっており、無料で全文を確認できませんでした。そのため本記事は、全文が公開されているJRC蘇生ガイドライン2020の該当章を引用しています。日本循環器学会の『急性冠症候群ガイドライン』も、2018年改訂版が現時点の最新版です。
  • **この事案の確定診断と、その後の経過。**私たちが把握しているのは、搬送先に引き継ぐところまでです。記事中で「急性心筋梗塞の疑い」としているのは、そのためです。
  • **日本の救急隊が転院搬送でどれくらいの時間をかけているか。**消防庁『救急救助の現況』は、事故種別ごとの所要時間を「転院搬送」で切り出して公表していません。DIDO時間の全国集計も見つかりませんでした。
  • **「SpO2が何%なら安心か」。**ありません。今回の99%は、酸素を投与しない理由にはなっても、受診しなくてよい理由にはまったくなりません。この方は心筋梗塞の疑いで、カテーテル治療ができる病院へ運ばれています。SpO2は心臓の詰まりを教えてくれる数字ではありません。
  • **家庭のパルスオキシメータで心筋梗塞を見分けること。**できません。SpO2は肺と血液の話であって、冠動脈の話ではありません。

まとめ

3行にすると、こうなります。

  • 「心筋梗塞といえば酸素マスク」は、2013年までの推奨です。日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』表14は、「酸素飽和度90%以上の患者に対してルーチンの酸素投与は推奨されない」をクラスIII(No benefit)・エビデンスレベルA——いちばん強い根拠——で示しています
  • 救急車のなかでも同じです。JRC蘇生ガイドライン2020の「ACSへの病院前の処置」は、「低酸素血症のないAMIまたはその疑い患者に対して、ルーチンの酸素投与をしないことを提案する」と書いています。ただしSpO2が90%以上でも、頻呼吸・起坐呼吸・心原性ショックがあれば投与します
  • **「毒だからやらない」ではなく「効かないからやらない」です。**JRCは「その後のエビデンスに有害報告はなく」と書いています。ここを混同すると、逆に「酸素が必要な人」への投与をためらわせてしまいます
  • **酸素マスクの有無は、重症度のサインではありません。**分かれ目は指先の数字と呼吸の様子であって、病気の重さではありません

娘さんには、車内で、ここまでの半分くらいをお話ししました。

降りるときに、こう言われました。

「聞いてよかったです。何もしてもらえてない気がして、怖かったので」

——聞いてくださって、こちらこそ助かりました。

車内で疑問に思われたことは、その場で聞いてください。走っている間、私たちは、説明する時間だけは持っています。

夜、たくさんの窓に明かりがついている建物 疑問はその場で聞いてください。走っている間、説明する時間だけはあります(写真はイメージです)


本記事は一般的な情報提供であり、医療診断に代わるものではありません。実際の症状については必ず医療機関にご相談ください。 本事案は、実際の救急事案をもとに、個人が特定されないよう年代・時期・場所・状況を改変して再構成したものです。

参考文献・出典

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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