朝晩が冷え込んで、押し入れから暖房器具を出す人が増える時期になりました。今日は、そのときに知っておいてほしい低温やけど(低温熱傷)の話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的な資料の原文から、起きやすい形と、家族で確かめておくことをまとめました。
暖房器具を出す季節は、寝ている間に使うものも増えます(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 低温やけどは、「熱い」と強く感じない温度で起きます。心地よく感じる程度の温度でも、同じ場所に長く触れていると起きる、と消費者庁は説明しています
- 痛みが少なく、水ぶくれもできにくいので、見た目が軽くても深いことがあります。深いやけどは、数時間から数日かけて悪くなることがあります(MSDマニュアル)
- 高齢の方、糖尿病で感覚が鈍い方、子どもは、とくに家族の目が頼りです
1. 傷病名は「低温やけど」——体温より少し暖かいだけで起きます
消費者庁は、湯たんぽの事故を呼びかけた資料(平成29年12月6日)で、こう説明しています。
低温やけどは、心地よく感じる程度(体温より少し暖かい温度)のものでも、皮膚の同じ部分が長い時間接触していると発生するやけどです。 (消費者庁「ゆたんぽを安全に正しく使用しましょう!」)
同じ資料は、やけどになるまでの時間のおおよその目安として、44℃で3〜4時間、46℃で30分〜1時間、50℃で2〜3分を示しています。
2. なぜ、気づいたときには深くなっているのか
痛みが少なく、水ぶくれもできにくい
同じ資料には、こう書かれています。
低温やけどは、普通のやけどに比べて痛みが少なく、水ぶくれなどもできにくく、乾燥していることが多い (同上)
さらに「特に就寝時にゆたんぽを使用すると気付かないうちに長時間皮膚が接触してしまい、危険です」とあります。痛みで気づく前に、時間のほうが先に進んでしまうのです。
深いやけどは、あとから悪くなる
やけど全般については、MSDマニュアル家庭版「熱傷」を読みます。MSDマニュアルは米国で書かれた医学書の日本語版です。
最も深い熱傷では、痛みを感じる神経が破壊されるため、ほとんど痛みが起こらないことがあります。 深い熱傷の患部の外観や症状は、熱傷を受けた後の数時間、ときには数日間にわたって悪化していきます。 (MSDマニュアル家庭版「熱傷」)
その場の見た目で決めるのは早いのです。
消費者庁の資料にある事例
- 70代の男性。「こたつで就寝し朝起きると、足指より出血しており熱傷に気付いた。」入院となり、「左第1、2足指切断、第3足指は皮膚移植を行った」と記録されています(消費者庁「高齢者のやけどに御注意ください!」)
- 13歳の男性。湯たんぽで足に低温やけどを負い、自宅で治療していたものの改善せず受診。「一部皮膚が壊死しており悪臭を放っている」と記録されています(前掲・湯たんぽの資料)
こたつでの就寝も、消費者庁の事例に挙がっています(写真はイメージです)
3. 受診の判断——見た目の大きさで決めない
どの器具で、誰に起きるか
消費者庁は、65歳以上の低温やけど119件の原因製品を、カイロ28件、湯たんぽ19件、ストーブ類18件、電気毛布・あんか12件の順と数えています。そして、この119件のうち10件(8.4%)は入院治療を要していました。
起きやすい人について、湯たんぽの資料は「高齢者や糖尿病の方は感覚が鈍くなっていることがあり、重症化しやすいとされています」と書いています。5歳の男児が就寝時の湯たんぽで翌朝にII度の低温やけどになった事例も載っています。お酒に酔っているときや、居眠りの最中に起きやすいかは、今回確認した資料には書かれていませんでした。
医療機関に行く目安
万が一、痛みや違和感などの異常を感じたときは自身で判断せず、すぐに皮膚科等専門の医療機関を受診してください。 (消費者庁・湯たんぽの資料)
MSDマニュアルは、やけど全般について、次のどれかに当てはまるときは医師の診察が必要としています。「患部が患者の開いた手より大きい」「水疱ができている」「皮膚に黒ずみや亀裂がある」「熱傷が顔面、手、足、性器、または間擦部(皮膚がこすれ合う部分)に起きている」「熱傷を負ってから1日経っても痛みが軽くならない」。
消防庁の資料に、低温やけどは載っていません
消防庁のリーフレット「救急車を上手に使いましょう」(令和7年12月発行)の「けが・やけど」の欄には、おとなと高齢者のページに「広範囲のやけど」、こどものページに「痛みのひどいやけど」「広範囲のやけど」があります。「低温」という言葉は、全8ページのどこにもありません。痛みを基準にした項目は、痛みが出にくい低温やけどには当てはまりにくいと思います(私の読み方で、リーフレットの記述ではありません)。
一方、消防庁の「Q助」(救急受診アプリ)の「やけど」の設問には「やけどの部位は白く、痛みは感じませんか?」があり、当てはまると結果は「いますぐ救急車を呼びましょう」です。痛みがないことは、安心材料ではなく、危ない所見として扱われています。
冷やし方は、夏の記事に
冷やし方と受診の目安の全体像は、こちらに書きました。「日焼けくらい」と思っていた——花火とBBQの季節に増えるやけど。正しい冷やし方と、病院へ行くべきサイン
救急蘇生法の指針2025のファーストエイド「やけど」には「病院を受診する場合には、診察の妨げにもなるので、消毒薬や軟膏などを付けたりしないでください」とあります。自己判断で薬を塗らず、そのまま受診するのが公的資料の立場です。この項に、低温やけどという言葉はありません。
足元は、本人がいちばん気づきにくい場所です(写真はイメージです)
寝ている間は、熱さに気づけません(写真はイメージです)
朝、起きたら足元を見る。出したその日に使い方を決めておくのが、いちばんの予防です(写真はイメージです)

