救命講習を受けた人の数は、住んでいる県で3.6倍ちがいます——上級救命講習の受講者の6割は、東京都に集まっていました
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救命講習を受けた人の数は、住んでいる県で3.6倍ちがいます——上級救命講習の受講者の6割は、東京都に集まっていました

令和6年の1年間に救命講習を受けた人は、全国で約156万人。ところが人口1万人あたりの受講者数は、最多の京都府140.2人と最少の佐賀県39.4人で約3.6倍の差があり、上級救命講習の受講者7万1,222人のうち4万2,853人(約60%)は東京都でした。総務省消防庁『令和7年版 救急救助の現況』の別表11から、地域差の数字と、この数字が意味しないことを解説します。

救命講習は、受けておいたほうがいいと言われます。ところが、実際に受けている人の数が、住んでいる県によって大きく違うことは、あまり知られていません。

今日は、国の数字でその差を見ていきます。

この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。総務省消防庁の統計から、講習の受講状況をまとめました。講習の種類や時間、申し込み方は、ここでは扱いません。

机と椅子が前を向いて並んだ、無人の講習会場 同じ内容の講習でも、受けている人の数は地域で大きく違います(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 令和6年の1年間に、普通救命・上級救命・救命入門コースの講習を受けた人は、全国で約156万人でした。
  • 人口1万人あたりの受講者数(普通救命と上級救命のみ)は、全国で75.9人。最多の京都府(140.2人)と最少の佐賀県(39.4人)で、計算すると約3.6倍の差がありました。
  • 上級救命講習の受講者は全国で7万1,222人。そのうち東京都が4万2,853人で、計算すると60.2%でした。

どれも「1年間に講習を受けた人の数」です。「すでに講習を受けたことのある人の割合」ではありません。この違いは、3章で説明します。


1. 数字の出どころ——1万人あたりで比べると、3.6倍の差がある

出典は、総務省消防庁の『令和7年版 救急・救助の現況』救急編です。令和6年中の講習の実績が、都道府県別に載っています(別表11)。

講習の内容は、同じ資料の第46表の(注)1に、消防庁自身の言葉で書かれています。番号は原文のものです。

(3)普通救命講習 : 自動体外式除細動器(AED)の使用法を含む成人に対する心肺蘇生法及び大出血時の止血法の講習

(4)上級救命講習 : 普通救命講習の内容に加え、小児・乳児・新生児に対する心肺蘇生法、傷病者管理法、手当の要領及び搬送法の講習

(総務省消防庁『令和7年版 救急・救助の現況』救急編 第46表(注)1「応急手当講習の内容」)

別表11には、都道府県ごとに「普通・上級救命講習人口1万人あたりの受講者数」という列があります。その県の1年間の受講者数を、人口(令和2年国勢調査)で割った値です。私が47都道府県すべてで、(普通救命の受講者数+上級救命の受講者数)÷人口×1万を計算し、表の値と一致することを確かめました。

この値に含まれるのは、普通救命講習と上級救命講習だけです。救命入門コースや、その他の講習は入っていません。

全国の値は75.9人。多い県と少ない県を、表の値のまま並べます。

多い県 人口1万人あたり 少ない県 人口1万人あたり
京都府 140.2人 佐賀県 39.4人
宮城県 129.8人 熊本県 40.5人
福井県 128.4人 奈良県 40.6人
東京都 127.8人 宮崎県 41.1人
徳島県 120.6人 長崎県 45.1人

最多の京都府と最少の佐賀県を比べると、140.2 ÷ 39.4 で、計算すると約3.6倍です。

大阪府は48.9人、神奈川県は55.6人で、どちらも全国の値を下回っています。

光と影が落ちている、白紙の方眼ノートの見開き 47の都道府県を同じ物差しで並べると、差がはっきり見えます(写真はイメージです)

2. 上級救命講習は、受講者の6割が東京都

人口あたりの差よりも、さらに偏っているものがあります。上級救命講習です。

令和6年中の上級救命講習は、全国で4,296回開かれ、7万1,222人が受講しました。都道府県別の人数を見ると、東京都の4万2,853人が飛び抜けています。計算すると、42,853 ÷ 71,222 で60.2%。全国の上級救命講習の受講者の、およそ6割が東京都です。

比べる数字を2つ置きます。いずれも別表11の値から、私が計算しました。

  • 東京都の人口は、全国の11.1%です。
  • 普通救命講習の受講者のうち、東京都は15.4%です(13万6,710人 ÷ 88万6,514人)。

人口でも、普通救命講習でも、東京都は1割台です。上級救命講習だけが6割になります。

東京都のほかに多いのは、神奈川県4,736人、埼玉県2,638人、千葉県2,541人、愛知県1,797人です。

反対に、少ない県もあります。

上級救命講習の受講者数が少ない県 令和6年中の受講者数
鳥取県 13人
宮崎県 45人
徳島県 69人
福島県 97人
島根県 100人

1年間の受講者数が100人以下の県が、5つあります。鳥取県の13人は、開催が2回の結果です。

徳島県は、1章の表では人口1万人あたり120.6人の県です。それでも上級救命講習は69人でした。全体で受講者が多い県でも、上級救命講習の人数は別の話になることが、表からわかります。

窓と木の扉のある、無人の建物の廊下 「全国で7万人」という数字の内訳を見ると、偏りが見えてきます(写真はイメージです)

3. この数字が意味しないこと

ここは大事なところなので、はっきり書きます。

別表11は、令和6年の1年間に講習を受けた人の数です。「その県の住民のうち、何割が講習を受けたことがあるか」を示す表ではありません。

たとえば、75.9人という値を「100人に0.76人しか受けていない」と読むのは誤りです。過去の年に受けた人は入っていません。同じ人が受け直した場合の数え方も、表には書かれていません。

もうひとつ。この資料には、地域差が生まれる理由が書かれていません。

消防庁は、「なぜ東京都に集まるのか」「なぜ佐賀県は少ないのか」には触れていません。この資料からは、わかりません。ですから、この記事でも理由は書きません。

言えるのは、受講者数に都道府県で大きな差があったこと、上級救命講習の6割が東京都だったこと、この2つだけです。

4. 家族へ——「うちの地域はどうか」を、調べてみてください

数字を知ったあとにできることは、自分の住んでいる地域で講習が開かれているかを調べてみることです。

県の値は、お住まいの市町村の状況をそのまま表してはいません。数字は目安です。調べるのは、市町村の消防本部のページです。講習の種類や時間、申し込みの流れは、「3時間も、何をやるんですか」——救命講習のゴールは“救うこと”ではありません。国が決めた到達目標は、たった一行ですに書きました。

染みの残る古い紙の表面 表に書かれていないことは、書かれていないままです(写真はイメージです)


この記事で書かなかったこと

  • 地域差の理由。消防庁の資料に書かれていないため、推測では書きませんでした。
  • 住民のうち何割が講習を受けたことがあるか。別表11は1年間の数で、累計ではないため、書けません。
  • 救命入門コースとその他の講習の県別比較。人口1万人あたりの列に含まれないため、扱いませんでした。
  • 受講料・日程・申し込み方法。全国に共通して言える記述が、公的な資料にありませんでした。

まとめ

  • 1人あたりでなく「1万人あたり」で比べると、京都府140.2人と佐賀県39.4人で、計算すると約3.6倍の差。
  • 上級救命講習は、7万1,222人のうち4万2,853人(計算すると60.2%)が東京都。
  • どちらも「1年間に受けた人の数」で、理由は消防庁も書いていない。
  • 住んでいる地域の講習は、市町村の消防本部のページで調べてみてください。

障子と窓から光が差す、無人の和室 まず、自分の暮らす地域のことから調べてみてください(写真はイメージです)

大切なご家族を守るために、この記事が少しでもお役に立てばと願っています。

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