9月の熱中症は、7月8月と「誰が・どこで」が違います——傷病名は「熱中症の疑い」でした

9月の熱中症は、7月8月と「誰が・どこで」が違います——傷病名は「熱中症の疑い」でした

めまいと吐き気だけを手がかりに三次救急へ運ばれ、重症・入院となった9月の事案です。消防庁の月別データを見ると、9月の搬送人員は7月の約4分の1。それでも令和6年9月は調査開始以来の最多、令和7年9月は2番目でした。そして9月だけ、高齢者と住居の割合が最も低く、成人と仕事場の割合が最も高くなります。厚生労働省は職場の熱中症について「作業終了後や帰宅後に体調が悪化した事案が含まれている」と書いています。現役救急救命士が一次資料の原文で解説します。

今日は、9月の熱中症の話をします。

この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。ただし手元に残っているのは、主訴がめまいと吐き気だったこと、熱中症の疑いで三次救急に運ばれ重症・入院となったことだけです。ご本人の年齢や状況は書きません。そこから先は公的な統計と資料で確かめられることだけを書きます。

縁側から見た9月の庭 9月の熱中症は、7月8月とは別の顔をしています(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 9月の搬送は7月の約4分の1。少ないのは事実です。そこは正直に書きます
  • けれど令和6年9月は調査開始以来の最多、令和7年9月は2番目でした
  • 9月だけ「誰が・どこで」が変わります。高齢者と住居が最も少なく、成人と仕事場が最も多い月です

1. 傷病名——「熱中症の疑い」でした

まず数字を正直に置きます。消防庁『熱中症による救急搬送状況』令和7年(2025年)の月別です。

搬送人員 構成比(当方計算)
5月 2,614人 2.6%
6月 17,229人 17.1%
7月 39,375人 39.2%
8月 31,526人 31.4%
9月 9,766人 9.7%

9月は7月の約4分の1。「9月がいちばん危ない」とは、どう見ても書けません。それでも消防庁はこう書いています。

令和7年は非常に厳しい暑さが長期間にわたって続き、6月が過去最多、9月が過去2番目の搬送人員となりました。 (消防庁『令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況の概要』)

前の年はもっとで、令和6年9月は11,503人。消防庁は「9月としては最も多い搬送人員」と書いています。

去年が1位、一昨年が2位。「9月は少ない」は全体の話で、その少ない9月の中では直近2年が記録を更新しているということです。


2. 症状のサイン——9月は「誰が・どこで」が変わります

ここからが本題です。令和7年の月報から7月・8月・9月を並べます。

7月 8月 9月
高齢者の割合 58.6% 54.8% 53.6%
成人の割合 32.9% 36.4% 38.4%
住居での発生 40.9% 36.7% 31.3%
仕事場での発生 10.3% 11.0% 13.0%

9月は高齢者と住居がいちばん低く、成人と仕事場がいちばん高い月です。令和6年9月も同じ向きです。

このブログの熱中症の記事はまとめのとおり、ほとんどが高齢のご家族・室内の話です。9月は、その構図がいちばん崩れる月です。

「涼しくなる」という前提が、この3年は崩れています

気象庁『日本の月平均気温偏差』(1898年からの記録)で、9月の平年差は直近3年が1位・2位・3位(2023年 +2.66℃/2024年 +2.52℃/2025年 +2.49℃)。7月・8月と並べます。

7月 8月 9月
2023年 +1.91 +2.16 +2.66
2024年 +2.16 +1.84 +2.52
2025年 +2.89 +1.84 +2.49

2024年と2025年は、9月のほうが8月より平年から離れていました。2023年は7月・8月の両方より上です。

室内の温湿度モニター 「もう9月だから」は、この3年については通用しませんでした(写真はイメージです)


3. 受診の判断——涼しくして、水を飲ませて、それでも良くならないとき

環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』は、危険信号を5つ挙げます。

熱中症の危険信号 ・高い体温 ・赤い・熱い・乾いた皮膚(全く汗をかかない、触るととても熱い) ・ズキンズキンとする頭痛 ・めまい、吐き気 ・意識の障害(応答が異常である、呼びかけに反応がない等) 熱中症の危険信号として、下のような症状が生じている場合には積極的に重症の熱中症を疑うべきでしょう。 (環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』p.22)

めまいと吐き気が、この5つに入っています。今回の事案の主訴と同じです。そして家族にいちばん実用的なのが、次の一文です。

Ⅰ度(軽症)の症状があれば、すぐに涼しい場所へ移し体を冷やすこと、水分を自分で飲んでもらうことが重要です。(中略)応急処置を施しても症状の改善が見られないときはⅡ度(中等症)と判断し、すぐに病院へ搬送します。(同 p.21)

「涼しくした・水を飲ませた・でも良くならない」——それが線引きです。体温の数字ではありません。

実際に、そこで亡くなった方がいます

厚生労働省が公表している、2025年9月に職場で亡くなった方の記録です。

被災者は集合住宅の新築工事現場で、解体された壁型枠の材料を上階の同僚に手渡しする作業に従事していた。作業中に床に座り込んでいたところを同僚に発見された。意識はあり、水分補給をしてエアコンがある車内で休んでいたが改善せず、同僚の車で病院へ向かう途中に意識不明となり、救急搬送されたが死亡した。 (厚生労働省『2025年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)』事例17・9月・気温34.7℃)

涼しくして、水を飲ませていました。それでも改善しなかった。環境省が「すぐに病院へ搬送します」と書く、まさにその場面です。

竹の簾(すだれ) 冷やして水を飲ませるのは正しい。問題は「良くならなかったとき」です(写真はイメージです)


4. 家族へ

① 「涼しくなってから」悪くなることがあります

同じ厚労省の資料に、時間帯についての一文があります。

なお、気温が下がった17時台や18時台以降に死亡に至るケースが少なからずみられるが、これらには、日中には重篤な症状はみられなかったにもかかわらず、作業終了後や帰宅後に体調が悪化した事案が含まれている。 (同 p.7)

日中は平気そうだった人が、帰宅後に悪くなる。「涼しくなってから」は、まずこの時間帯の話です。夕方に帰ってきた家族が「なんだか変」なとき、日中の暑さを思い出してください。

敷かれた布団 「疲れただけ」と横になったあとが、いちばん見えにくい時間です(写真はイメージです)

② Q助は「めまい」の下で、暑さを聞きません

消防庁の「全国版救急受診アプリ(Q助)」の全274画面を調べました。「暑いところにしばらくいましたか」に相当する設問があるのは、「熱中症」と「発熱」を選んだときだけです。

「めまい・ふらつき」「吐き気・吐いた」「意識がおかしい」「頭痛」——この4つの下には、暑さを聞く設問が一つもありません。だから暑さの中にいたことは、自分から言わないと伝わりません。

なお、めまいと吐き気は熱中症だけの症状ではありません(胸が痛くないのに急性冠症候群だった事案)。迷う段階なら♯7119もあります。

窓から差す9月の光 「今日、暑いところにいましたか」——聞かれなくても、言ってください(写真はイメージです)

この記事で書かなかったこと

  • 今年(2026年)の9月——消防庁の速報では前年を大きく下回り、確定値も未公表。書けるのは去年と一昨年までです
  • 職場の熱中症が9月に増えていること——厚労省の表では9月だけで5年に20人→188人。ただし同じ資料が「9月に急激に減少する傾向」とも書いており、家庭の話から離れるので扱いませんでした
  • 「9月は暑熱順化が切れているから危ない」——環境省マニュアルは暑さに慣れるほど搬送が減ると逆向きに書いています。使えません。そもそも同マニュアル全96ページに「9月」「残暑」の記述はありません

関連する記事

まとめ

  • 9月の搬送は7月の約4分の1。ただし令和6年9月は調査開始以来の最多、令和7年9月は2番目です
  • 9月だけ、高齢者と住居が最も少なく、成人と仕事場が最も多い(2年連続)。気象庁の9月の平年差も直近3年が1位・2位・3位です
  • 環境省は「めまい、吐き気」を危険信号の5つに入れ、「応急処置を施しても症状の改善が見られないときはⅡ度と判断し、すぐに病院へ搬送します」としています
  • Q助は「めまい」「吐き気」「頭痛」の下で暑さを聞きません。自分から言ってください

銅のやかん 9月も、飲ませる量は8月と同じでいいはずです(写真はイメージです)

家庭に置いておきたい備え

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参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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救急のリアル 編集部

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