交通事故のあと、本人が胸の痛みを訴えている。受け答えができ、手足もしびれていないと聞くと、少し安心するかもしれません。しかし、見えている一つの症状だけでは、体の中のけがまでは分かりません。
今回は、車の転落後に胸の痛みを訴え、病院記録に「胸骨骨折・腰椎骨折」と記載された80歳代女性の実事案を取り上げます。痛む場所と事故の経過を伝え、無理に体を動かして確かめない。この二つを家庭へ持ち帰ってほしいと思い、整理しました。
個人を特定する情報、日時や場所、詳しい事故状況は省略しています。実事案の記録と、一般向けの医学情報・応急手当を分けて説明します。
写真はイメージです。AI生成。実際の人物・事案を再現していません。
傷病名は「胸骨骨折・腰椎骨折」でした
車が転落した事故で、80歳代の女性が胸の痛みを訴えていました。救急報告書の通報内容欄には、次の記載があります。
胸の痛みを訴えている。
通報内容欄の一部のみを原文から抜粋しています。個人の特定につながり得る情報を含む前後の部分は省略しました。通話音声を直接確認した引用ではありません。
救急隊が接触したとき、女性は車内の運転席に座っており、胸の痛みを訴え、同じ部位には押すと痛む所見が記録されています。手足のしびれや麻痺はないと記載され、呼吸音は良好でした。一方、家族からは、普段より意識の状態が悪いという説明があったと記録されています。
病院記録では、初診時傷病名は「交通外傷」、診断名欄は「胸骨骨折、腰椎骨折」でした。中等症とされ、転院したことが確認できます。転院後の治療方法や回復の経過は分かりません。
ここで大切なのは、胸の痛みという訴えと、あとから記録されたけがが一つではなかったことです。胸が痛いという訴えだけから、胸以外にけががないと決めることはできません。
写真はイメージです。AI生成。実際の人物・事案を再現していません。
胸骨骨折と腰椎骨折とは——胸と腰の骨のけが
胸骨は胸の前側、中央にある骨です。英国のUniversity Hospitals Sussexの胸部外傷の説明も、胸壁のけがとして胸骨の骨折などを挙げています。胸の痛みという言葉だけでは、どの骨や臓器にどのようなけががあるかを、家庭で決めることはできません。
腰椎は背骨のうち腰の部分です。Cleveland Clinicの腰椎の解説では、体を支える骨と、周囲の神経などの構造を説明しています。腰椎骨折という記録だけでは、折れ方や不安定性、神経への影響まで一律に分かるわけではありません。
同院の脊椎骨折の説明は、骨折の型や重さによって対応が異なることを示しています。今回の資料では、骨折の詳しい形や神経への影響は不明です。骨のけがと、脊髄などの神経のけがは、区別して扱います。
事故のあと、家族がまず伝えること
消防庁の救急車利用リーフレットは、強い衝撃を受けた交通事故や、高い所から落ちた場合などを救急要請の目安として示しています。外から大きな傷が見えないことを、受診が不要な根拠にはしません。
通報では、事故が起きたこと、本人がどこにいるか、何を訴えているか、呼びかけへの反応と呼吸を伝えます。事故の高さや速さが分からなければ、確かめるために危険な場所へ戻らず、分からないと答えて構いません。
「胸が痛い」に加えて、「事故のあとから」「普段より反応が違う」も一緒に伝えます。119番の伝え方も、元気なときに確認しておいてください。
写真はイメージです。AI生成。実際の人物・事案を再現していません。
写真はイメージです。AI生成。実際の人物・事案を再現していません。
写真はイメージです。AI生成。実際の人物・事案を再現していません。

