顔がゆがむ・片腕が上がらない・言葉が出ない|脳卒中を疑うFASTと119番
119の判断

顔がゆがむ・片腕が上がらない・言葉が出ない|脳卒中を疑うFASTと119番

顔のゆがみ、片腕の脱力、ろれつが回らないときに、脳卒中を疑って119番するFASTを解説。発症時刻、待つ間の注意、予防の基本を公的資料から整理します。

食事中に箸を落とす。笑ったときに口の片側が下がる。言葉が急に出にくくなる。こうした変化が突然起きたときは、疲れや年齢のせいと決めつけず、脳卒中を疑います。

この記事は特定の患者や搬送事案を再現したものではありません。架空の診断や経過を作らず、総務省消防庁、厚生労働省、国立循環器病研究センターの公開情報をもとに、家庭での確認と119番通報をまとめた一般解説です。

突然の片側の脱力に気づく場面のイメージ 公開用AI生成イメージです。実際の患者、住居、救急活動を再現したものではありません。

脳卒中とは、脳の血管に起きる病気の総称

脳卒中には、血管が詰まる脳梗塞、血管が破れて脳内へ出血する脳出血、脳を覆う膜の間へ出血するくも膜下出血などがあります。家庭で病型を見分けることはできません。

症状は、麻痺、しびれ、言葉の異常、視野の異常、ふらつき、激しい頭痛など多様です。痛みがない脳卒中もあるため、頭痛の有無だけで判断しません。

大切なのは病名を当てることではなく、突然の変化に気づき、早く119番へつなぐことです。

FASTで顔・腕・言葉を確認する

国立循環器病研究センターは、脳卒中の早期発見にFASTを紹介しています。

  • F(Face):笑ったとき、口や顔の片側がゆがむ
  • A(Arm):両腕を前へ上げると、片腕が下がる、上がらない
  • S(Speech):簡単な言葉を言えない、ろれつが回らない、意味が通じない
  • T(Time):一つでもあれば、発症時刻を確認して急いで119番

迷わず119番を考える変化

  • 顔の片側が突然ゆがんだ
  • 片腕・片脚に突然力が入らない
  • ろれつが回らない、言葉が理解できない
  • 突然、物が二重に見える・視野が欠ける
  • 急に立てない、強くふらつく
  • 経験したことのない突然の激しい頭痛

消防庁の救急車利用リーフレットも、顔の片側のゆがみ、ろれつの異常、見える範囲の異常、突然の片腕・片脚の脱力などを、ためらわず救急車を呼んでほしい症状として示しています。

BE-FASTでは目とバランスの異常も見る

国立循環器病研究センターは、FASTにBalanceとEyesを加えたBE-FASTも紹介しています。Balanceは突然立てなくなる、まっすぐ歩けない、強くふらつくなどの変化です。Eyesは突然物が二重に見える、視野が欠ける、見えにくくなるなどの変化です。

ふらつきや見え方の異常だけで、すべて脳卒中と決まるわけではありません。しかし、普段と違う症状が突然始まり、顔・腕・言葉の異常、激しい頭痛、嘔吐などを伴うときは緊急性を考えます。

本人が「少し休めば治る」と言っても、立てないほどの突然のふらつきや急な視野異常は119番で相談します。

症状が消えても、なかったことにしない

顔のゆがみや腕の脱力が数分で戻ることがあります。しかし、症状が消えたから安全とは限りません。本人が「もう大丈夫」と言っても、突然起きた神経症状は医療機関での評価が必要です。

家族が電話で119番通報するイメージ

一度でもFASTの異常があれば、消えた時刻も含めて119番へ伝えます。自分で車を運転したり、家族が無理に歩かせたりしません。

似た症状でも原因は一つではありません。低血糖、けいれん後、片頭痛などで似た変化が起こる場合もありますが、家庭で脳卒中を除外することはできません。

「いつから」を確認する

119番では、症状が始まった時刻を聞かれます。正確に分からない場合は、最後に普段どおりだった時刻を伝えます。朝起きたときに異常へ気づいたなら、前夜に最後に普通だった時刻と、発見した時刻を分けます。

顔の左右差を確認するイメージ

時計を見て、メモやスマートフォンへ残します。救急隊には、発症時刻、最初の症状、途中で改善・悪化したか、持病、薬、最後に食事をした時刻を分かる範囲で伝えます。119番で伝える7つのことも参考になります。

通報では「脳卒中だと思います」と病名だけを伝えるより、「10分前から口の右側が下がり、右腕が上がらず、言葉が不明瞭です」のように、見た症状と時刻を伝えます。年齢、住所、呼吸と意識の状態も聞かれた範囲で答えます。

血圧計が近くにあっても、測定に時間をかけて119番を遅らせません。血圧や血糖を測れた場合は値と測定時刻を伝えますが、機器を探したり、何度も測り直したりする必要はありません。

救急車を待つ間にしないこと

意識がはっきりしない、飲み込みに異常がある場合は、食べ物、飲み物、薬を無理に口へ入れません。吐いた場合に備え、安全にできる範囲で顔を横へ向け、呼吸と反応を観察します。

「血が詰まったのだろう」と自己判断して、手元の薬を追加で飲ませないでください。
脳梗塞か出血かは検査前に家庭で区別できず、飲み込みの障害も考えられます。

両腕の上がり方と握る力を確認するイメージ

呼びかけに反応しなくなり、普段どおりの呼吸がない場合は、指令員の指示に従って胸骨圧迫を始めます。待つ間の準備は救急車を待つ間に家族ができること、判断に迷う場合は救急車を呼ぶか迷ったときの#7119とQ助にも整理しています。ただしFASTの異常がある場合は相談を待たず119番です。

予防は血圧と生活習慣の管理から

厚生労働省は、脳卒中の危険因子として高血圧、不整脈、糖尿病、喫煙、肥満などを挙げています。とくに高血圧は重要です。健診で指摘されたまま放置せず、治療中の人は自己判断で薬を中断しません。

禁煙、飲酒を控えること、減塩、体力に合った運動、糖尿病や脂質異常症の治療継続も予防につながります。一度に全部を完璧にするのではなく、定期受診と家庭血圧の記録から始めます。

心房細動を指摘されている人は、処方薬を自己判断で止めないことが大切です。血圧や血糖の数字が一度よかったからと通院を中断せず、主治医と相談しながら管理します。家族も、本人がどの医療機関へ通い、どの薬を使っているかを確認しておきます。

予防をしていても、脳卒中を完全に防げるわけではありません。生活習慣を整えている人にも突然起こり得るため、症状が出たときに「自分は大丈夫なはず」と待たないことが必要です。

発症時刻を時計で確認するイメージ

すでに脳卒中や一過性の症状を経験した人は、主治医の指示を優先します。家族は持病と薬を共有し、救急時のお薬手帳と常備薬の準備も確認しておくと伝達が早くなります。

まとめ:一つでもFASTの異常があれば119番

顔、腕、言葉の異常は、全部そろうとは限りません。

  1. 笑顔で顔の左右差を見る
  2. 両腕を前へ上げてもらう
  3. 短い言葉を話してもらう
  4. 一つでも異常なら時刻を確認する
  5. 症状が消えても119番へ伝える

「様子を見る時間」を延ばすより、突然起きた変化をそのまま119番へ伝えてください。

脳卒中以外を含む代表的な緊急サインは迷わず119番を考える5つの症状も確認できます。

参考資料

2026年10月25日確認。

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

関連記事

顔・腕・言葉のあとに、救急隊はもう7つ見ています——脳卒中で運ばれる先が変わることがあります
119の判断

顔・腕・言葉のあとに、救急隊はもう7つ見ています——脳卒中で運ばれる先が変わることがあります

続きを読む →

記事内容に誤りを発見された場合はこちらからご連絡ください(訂正依頼を選択してください)

現役救命士 hiro のアバター

この記事の執筆・監修

現役救命士 hiro

救急の現場から、家族を守るための情報を発信しています

患者さんとご家族のプライバシーを守るため、本名・所属・勤務地域は公開していません。 記事は総務省消防庁・厚生労働省などの公的な一次資料の原文を確認したうえで書き、 出典は各記事の末尾にすべて記載しています。

運営者・監修者について →