今日は、救急隊が集めている情報の話をします。傷病名は肺炎でした。明日、10月1日は、ある仕組みが全国で始まってちょうど1年になる日です。
この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢は幅で、場所や日付は書きません。救急隊は診断をしません。書く傷病名は、病院で付いたものです。
前夜からの熱で、動けなくなっていました(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 救急隊が集めているのは、処置のための情報だけではありません。「どの病院に運ぶか」を決める材料にもなります
- 動転して説明できないのは、めずらしいことではありません
- マイナ救急は、その場面に備えた仕組みです。ただし、スマホのマイナ保険証は意識不明のときには使えません
1. 傷病名——「肺炎」でした。ただしその場では、誰にも分かりませんでした
70代後半の男性。前夜から熱が続き、寝室で動けなくなっていました。通報は「37.4℃の熱がある」という内容でした。
着いたときの様子です。
- ベッドに仰向け。意識は JCS 3(意思疎通が困難な状態)
- 左の肺で、湿った音
- SpO2(血液中の酸素)90%。酸素を毎分5リットル投与して95%
- 体温 38.9℃、脈 110回、血圧 111/62
主訴(いちばんつらいこと)も、ご本人からは聞けませんでした。
報告書には、こう書いています。
家族が興奮しており、詳細な情報を聴取できないため現病及び既往症については不明である
病院への問い合わせは5回。現場に着いてから出発するまで33分かかりました。
結果は入院、傷病名は肺炎。重症度は「軽症」と記録されていますが、入院になっています。「軽症」の文字だけでは、軽く見られない例です。
何の薬を飲んでいるか。その場では分かりませんでした(写真はイメージです)
2. 症状のサイン——聞き出せなかった「もう一つの情報」
高齢の方の肺炎について、『MSDマニュアル家庭版』にはこう書かれています。
高齢者では、突然の錯乱が、肺炎を示す唯一の徴候である場合があります。 (MSDマニュアル家庭版「肺炎の概要」)
救急隊が集めているのは、処置の情報だけではありません
私たちは、かかりつけの病院や飲んでいる薬などを聞き取ります。その理由を、消防庁はこう書いています。
これらの情報は、搬送する病院の決定や救急車内での処置、病院到着後にすぐに治療を始めるための準備などに役立てられており、ご本人の命を守るために欠かせない情報となっております。 (総務省消防庁「あなたの命を守る『マイナ救急』」)
処置のためだけではなく、搬送する病院の決定にも使われています。5回の問い合わせに「不明」が影響したかどうかは、記録から分かりません。ただ、聞けなかった情報が、行き先探しの材料にもなるという構造は、消防庁の文章のとおりです。
消防庁は続けて、こう書いています。
一方で、病気やけがで苦しむご本人や、気が動転しているご家族の方から、これらの情報を正確にお伝えいただくことは、場合によっては困難なこともあります。 (同)
国の側が「気が動転しているご家族」と書いています。動転して説明できないのは、責められることではありません。そこに備える仕組みがマイナ救急です。
マイナ保険証は、いまどこにありますか(写真はイメージです)
3. 受診の判断——「受け答えができない」は、すぐ呼ぶ側です
消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」は、症状を選ぶ前に、こう聞きます。
(いつもどおり)ふつうにしゃべれていますか? 声は出せていますか?
「いいえ」なら、その先の質問なしに「いますぐ救急車を呼びましょう」です。
途中の質問をはさんで「しっかりと受け答えが出来ますか?」とも聞き、「いいえ」なら「意識がおかしい」の画面へ進みます。その16項目のひとつが「10.発熱(38℃以上)はありますか?」で、当てはまればいますぐ救急車です。今回の男性は38.9℃でした。どれも、そばにいる人が答えられる質問です。
Q助はスマートフォンからも使えます(写真はイメージです)
靴も、用意しておくものに挙げられています(写真はイメージです)
動転するのが普通です。だから、備えがあります(写真はイメージです)

