けいれんは止まった。でも、何を見ればいい?——熱性けいれんの実事案から、救急隊へ伝えたいこと

けいれんは止まった。でも、何を見ればいい?——熱性けいれんの実事案から、救急隊へ伝えたいこと

発熱中にけいれんを起こした幼児の女の子の実事案。初診時傷病名は単純型熱性けいれんでした。止まったあとの呼吸と反応、母親の説明と救急隊の観察を分け、家族が伝えることと備えを整理します。

子どもの体が突然こわばる。声をかけても、いつもと同じ反応がない。そんな場面で、時間を正確に測ったり、落ち着いて説明したりするのは難しいと思います。動きが止まった瞬間に、ほっとするのも自然なことです。

今回取り上げるのは、発熱中にけいれんを起こした幼児の女の子の実事案です。病院の記録には「単純型熱性けいれん」と記載されていました。伝えたいのは、保護者が病名を見分ける方法ではありません。けいれんが止まったあとの様子も、救急隊や医師へつないでほしいということです。

個人を特定する情報や、出来事の正確な日時・場所は掲載しません。以下は一つの事案に基づき、一般的な応急手当とは分けて説明します。

夜の室内で小さな布団のそばに座りスマートフォンを確認する架空の女性 写真は5枚すべてAI生成のイメージです。実際の患者・家族・住居・救急活動を再現したものではありません。

傷病名は「単純型熱性けいれん」でした

幼児の女の子が発熱し、就寝中に全身を硬くするようなけいれんがあったと、母親から説明されています。家族が伝えた持続時間は約2分でした。以前にも熱性けいれんを起こしたことがあるという記録があります。

救急隊が接触したときには、けいれんは止まっており、意識は清明と記録されていました。体には熱感がありましたが、呼吸音は良好で、チアノーゼは確認されていません。搬送後、病院の初診時傷病名には「単純型熱性けいれん」、転帰欄には帰宅と記録されています。

ここで区別したいのは、家族が見た発作中の様子と、救急隊が到着してから見た様子は違うことです。到着時に発作が見えなくても、それまでの説明は大切な情報になります。「もう止まったから、説明しなくていい」と考えなくて大丈夫です。

救急報告書の通報内容欄には、次の一文があります。

のけ反るようであったが、現在は意識回復した。

通報内容欄の末尾一文のみを原文引用しています。冒頭の年齢などを含む部分は省略しました。通話音声を直接確認した引用ではありません。

通報時の説明と到着時の観察、病院での初診時傷病名は、それぞれ別の情報として扱います。その後の長期的な経過は資料から分からず、回復を保証する話には広げません。

熱性けいれんとは——発熱に伴うけいれん

国立成育医療研究センターの解説では、熱性けいれんを子どもの発熱に伴って起こるけいれん発作と説明しています。多くは短時間で治まりますが、ほかの病気が隠れていないか医療者の判断が必要です。

今回の「単純型」という言葉も、家庭で発作の時間だけを見て決めるための名前ではありません。病院の記載として紹介しているもので、似た動きをした別の子どもに同じ診断が当てはまるとは限りません。

今回の事案で帰宅となったことと、次に同じような場面に遭遇したときに受診不要かどうかも、別の話です。以前と似ていても、今の呼吸や反応を確認し、担当医から個別の指示がある場合はその指示を医療者へ伝えます。

無地のポーチとノート、タオル、おむつ、スマートフォンを準備したイメージ 持ち物を探すことより、子どもの呼吸と反応の確認を優先します。

止まったあとに伝えたいのは「呼吸・反応・変化」

けいれんが止まったかどうかに加え、呼びかけへの反応、呼吸、顔色に目を向けます。保護者が意識レベルの点数をつけたり、専門用語で報告したりする必要はありません。

「名前を呼ぶと目を向ける」「声をかけても反応がない」「胸が動いているか分からない」など、見えていることをそのまま伝えてください。「普段と違う」と感じた点も説明します。分からないことは、分からないと答えて構いません。

けいれんが止まらない、止まっても意識が戻らないときは119番へ。呼吸がおかしい、顔色が明らかに悪い場合も、時間を測り続けることを優先しないでください。

消防庁の救急車利用リーフレットは、子どものけいれんが止まらない場合や、止まっても意識が戻らない場合を救急要請の目安に挙げています。発作が止まっていても、反応や呼吸がおかしいときは119番へ伝えてください。反応がなく、普段どおりの呼吸がない、または呼吸の判断に迷うときは、119番の指示に従って胸骨圧迫などの心肺蘇生を始めます。

日頃の確認には、子どもの発熱で見るポイントも役立ちます。

待つ間は、口に物を入れず、安全を確保する

けいれん中、口に指や物を入れません。舌を守ろうとして物をかませる必要はありません。

この点は、消防庁の応急手当WEB講習でも説明されています。何かしてあげたいときこそ、口をこじ開ける行動を避けます。

『救急蘇生法の指針2025(市民用)』にも沿って、周囲の硬い物や危険物を遠ざけ、強く押さえつけません。吐いたものが詰まらないよう、可能なら横向きに寝かせ、具体的な対応は119番の指示に従います。手当のために通報を後回しにしないことも大切です。

一人なら、まず電話をつなぐ。ほかに人がいれば、通報と見守りを分担する。詳しい初動は、けいれんを目撃したときの記事にまとめています。

物を置かず安全な空間を確保した室内の床のAIイメージ 周囲の危険物を遠ざけます。写真の配置を、そのまま応急手当の手順としてまねる必要はありません。

「いつから、どう変わったか」を一緒に伝える

今回、家族が説明した持続時間と、到着時には発作が止まっていたという観察は、それぞれ別の時点の情報です。家庭でも、始まったころ、止まったころ、その後の反応を、分かる範囲で伝えます。

正確な時計を見ていなければ、「正確ではないが、数分くらい」のように幅を持たせて構いません。測った時間と、あとで振り返った見当は分けると、伝わりやすくなります。数字を埋めるために推測する必要はありません。

以前のけいれん、発熱の経過、当日受診したか、使った薬なども、覚えている範囲で伝えます。ただし、情報集めのために子どもを一人にしたり、通報を遅らせたりしないでください。薬の袋や記録がすぐ出なければ、そのことを救急隊へ話せば大丈夫です。

「今は止まった」と「その前に何があったか」を、両方伝える。119番での伝え方を家族で確認しておくと、説明の順番を考える助けになります。

白紙のノートと鉛筆、時計を置いたAI生成イメージ 記録のために通報や見守りを遅らせません。時計は発症時刻を示すものではありません。

避けるには——一人で判断を抱え込まない備えを

今回の資料から、家族の対応が発作を起こしたとは判断できません。ここでの備えは、発作を必ず防げる方法ではなく、起きたときに対応を迷いにくくする準備です。保護者の責任を問う話にしないことが大切です。

家庭で準備できるのは、以前にけいれんがあったこと、処方薬、医師から伝えられた対応を家族で共有することです。薬の使い方は、この事案をまねて決めず、本人に対する処方と説明を確認してください。祖父母など、普段世話をする人とも共有しておきます。

救急車を待つ間の役割も、元気なときなら決められます。子どものそばにいる人、電話をする人、玄関を開けて誘導する人。人手が足りないときは、全部そろえようとせず指令員へ相談してください。救急車を待つ間の準備も参考になります。

扉を開けて通路を確保した架空の住宅玄関のAIイメージ 誘導や持ち物の準備は、子どものそばで見守る人とは別に人手がある場合に行います。

発作が止まったことにほっとしてよい一方で、子どもの様子を見る時間は続きます。病名を言い当てるより、呼吸と反応、起きたことの順番を医療者につなぐ。今回の実事案から、家庭で覚えておきたいことです。

※医学情報の確認日:2026年10月29日。実事案の記録と一般的な応急手当を分けて記載しています。

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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現役救命士 hiro

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