朝、寝返りをうった瞬間に天井が回った。今日はその話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。典型的な形としては——目が覚めて寝返りをうった瞬間に天井がぐるぐる回り、吐き気が出て、怖くて動けない。じっとしていると治まる。けれど起き上がろうとすると、また回る、という形で起こります。ここに書くのは資料に書かれていることだけで、いちばん伝えたいのは「良性」は診てもらってから付く名前だということと、手技のやり方は家庭で読んで真似るものではないということの2点です。
見上げた天井が回る——発作の大部分は、頭の位置を変えたときに起こります(イメージ写真です)
朝、寝返りをうった瞬間に天井が回る
『MSDマニュアル家庭版』の「良性発作性頭位めまい症」(最終更新2025年10月)から。
良性発作性頭位めまい症の発作の大部分は、典型的には朝目覚めた後に寝返りをうったときや、棚の高いところに手を伸ばそうとして頭を後ろにのけぞらせたときなど、頭の位置を変えたときに引き起こされます。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
頭の位置を変えたとき。動かした瞬間です。
続く長さが書かれています
回転性めまいは、ベッドで寝返りをうったり、何かを拾おうとして腰をかがめたときなど、頭が動いたときに引き起こされます。回転性めまいの発作は、1度につきわずか数秒から数分で治まります。数日から数週間の間に何度も発作が起きることがあり、発作はその後徐々に自然になくなっていきます。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
回転性めまい(自分か周りが回っているように感じること)の1回は、数秒から数分。それが数日から数週間のあいだに何度も起き、徐々になくなっていく。治まったことは、診てもらわなくていい理由になりません。
MSDは、症状に悪心(吐き気)や嘔吐を伴うことがあるとも書いています。吐くこともある。
そしてもうひとつ。
難聴や耳鳴り(耳鳴)は起こりません。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
これはこの病気の特徴を説明した文で、家庭での見分け方として渡されているものではありません。「耳は聞こえているから大丈夫」と裏返して使ってはいけません。耳の症状がないことは、脳の病気を否定しません。
寝返りをうった瞬間に起こります。棚の高いところへ手を伸ばす動作も挙がっています(イメージ写真です)
「良性発作性頭位めまい症」とは
MSDは、「頭位性」は頭の位置を変えたときに回転性めまいが起こるという意味、「良性」はこの病気が危険なものではないという意味だと説明しています。半規管(はんきかん)は、内耳にあって体の傾きや回転を感じ取る器官です。
なぜ、朝なのか
内耳には3つの半規管があり、これらは平衡感覚の維持に関与しています。この3つの半規管のうち、後半規管は、剥がれた耳石が就寝中に重力によって最も入り込みやすい位置にあります。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
耳石(じせき)は、内耳にある小さな石のような粒です。剥がれて半規管に入り込むと、頭を動かすたびに「回っている」という信号が出ます。後半規管は、寝ているあいだに重力で耳石が最も入り込みやすい位置にある。だから朝、寝返りの瞬間です。
剥がれる原因としてMSDが挙げているのは、耳の感染症、頭または耳のけが、長期の不動状態(麻酔中および床上安静中など)、耳の手術、骨粗しょう症、高血圧・糖尿病・高脂血症などです。けがも、寝たきりの期間も、持病も入っています。
良性発作性頭位めまい症は、年齢が高いほど発生しやすく、高齢者では平衡感覚に大きな影響が起こることがあり、それにより転倒やけがに至る場合があります。ときに頭部外傷後に、良性発作性頭位めまい症が起こることがあります。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
年齢が高いほど起きやすい。頭を打った後に起こることもある、と書かれています。
高齢者では転倒やけがにつながることがあります(イメージ写真です)
「良性」は、診てもらってから付く名前です
ここがこの記事の芯です。
良性発作性頭位めまい症の症状がみられる人の中には、内耳の他の病気(メニエール病など)、内耳につながる動脈の閉塞、中枢神経系の腫瘍など、他の病気がある人もいます。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
内耳の他の病気、内耳につながる動脈の閉塞(詰まること)、中枢神経系(脳と脊髄)の腫瘍。資料自身が、同じように見えるものを並べています。
治療の側からも同じ。
耳石置換法で効果がない場合、医師は通常、症状の原因であり他の治療を必要としうる別のより重篤な病気がないか探します。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
効かなかったら、別の病気を探す。「良性」という判断は、診察と検査と、治療の反応まで見たうえで残るものです。「良性」は診断がついてから付く名前で、自分で名乗る名前ではありません。
見分け方は、医師のものです
診断にはディックス・ホールパイク法という検査が用いられます。MSDは、この検査での所見の違いにも触れています。
しかし、より深刻な脳の病気(脳卒中や多発性硬化症など)が原因で回転性めまいが起きている人では、ディックス・ホールパイク法を行うと即座に症状が起こり、頭の位置を変えない限り回転性めまいが持続して、動作を繰り返しても順応が起こりません。 (MSDマニュアル家庭版「良性発作性頭位めまい症」)
これは医師が診察で区別するときの見方です。家庭でこれを試して、自分で結論を出さないでください。家族が頭を動かして所見を取る、という話ではありません。
治療も同じです。耳石を元の位置に戻すために頭を動かす方法(浮遊耳石置換法。エプリー法など)があり、薬剤は一般的に推奨されないとMSDは書いています。そして再発に備えて「自宅でこの手技を行う方法を習うこともできます」とも。「習う」が条件です。だからこの記事に手順は書きません。診察を受けた人が教わるものです。
『救急蘇生法の指針2025(市民用)』の全69頁に「耳石」「回転」「平衡」は1度も出てきません。「めまい」はこの文脈です。
脳梗塞や脳出血では、手足(多くは左右どちらか)に力が入らない、しびれる、ろれつがまわらない、顔がゆがんでいる、物が見えにくい、めまいがするなどの症状が急に現れます。 (救急蘇生法の指針2025 市民用「脳卒中」)
市民向けの指針で「めまい」が置かれているのは、脳卒中の症状の列です。
名前が決まるのは、診てもらってからです(イメージ写真です)
回っているあいだは、歩かせないでください(イメージ写真です)

