肩が外れた。腕が上がらない。今日はその話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。典型的な形としては——転んで手をついたあと、腕を体から離せなくなる、という形で起きます。ここに書くのは資料に書かれていることだけで、いちばん伝えたいのは自分で戻そうとしないでくださいの一点です。
肩のレントゲン写真。二の腕の骨の先端(右上の丸い部分)が、受け皿にはまっている状態です。外れると、ここがずれます(記事と関係のないイメージ写真です)
肩が外れると、腕が体から離せなくなります
『MSDマニュアル家庭版』の「肩の脱臼」(最終更新2025年10月)は、症状をこう書いています。
肩が脱臼すると、肩の位置が見て分かるほどずれていて、ゆがんで見えることがあります。関節周辺が腫れたりあざができたりすることもあります。通常は強い痛みがあります。患者は腕を体から離す方向に動かすことができないか、そのように腕を動かすのを嫌がります。肩の脱臼では、肩関節を覆う筋肉(三角筋)にしびれを感じることもあります。 (MSDマニュアル家庭版「肩の脱臼」)
家族が外から確かめられるのは、肩のかたちがゆがんで見えるか、腕を体から離す方向に動かせるか(動かしたがるか)、肩の外側にしびれがないか。しびれは本人が言わないと分かりません。聞いてあげてください。
「肩の脱臼」とは
肩の脱臼は、上腕骨上部の球状の頭部(上腕骨頭)が肩甲骨のくぼみから外れることで発生します。 (MSDマニュアル家庭版「肩の脱臼」)
上腕骨頭(二の腕の骨の肩側にある球の部分)が、受け皿から外れます。方向には偏りがあります。
肩は、体の大きな関節のうち最もよく脱臼が起きる部位です。肩の脱臼の95%以上では、上腕骨が関節の前方に押し出されています(前方脱臼)。 (同)
MSDは、肩が強い力で外側や上下に押されたり引かれたり、ひねりが加わったりすると脱臼することがあり、通常は引っ張られ外側に回転して起こる、と書いています。原因はこの3つです。
一般的な原因は、スポーツ外傷(バスケットボールでシュートをブロックされるなど)、自動車事故、および転倒です。 (同)
家庭で起きるのは、たいてい3つめです。
「完全に外れた」と「少しずれた」
脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れることです。亜脱臼では、関節の骨が部分的にずれています。多くの場合、脱臼した関節は、医師が元の位置に戻す(整復する)まで脱臼したままですが、ときに自然に元の位置に戻ることがあります。 (MSDマニュアル家庭版「脱臼の概要」)
整復(医師が関節を元の位置に戻す処置)までは外れたままのことが多い、と書かれています。自然に戻ったように見えても、肩の中では別のことが起きていることがあります。
肩が脱臼すると、靱帯、腱、血管、神経といった肩周囲の組織も伸びて断裂することがあります。 (MSDマニュアル家庭版「肩の脱臼」)
MSDが挙げる原因は、スポーツ外傷・自動車事故・転倒の3つです(写真はイメージです)
自分で戻そうとしないでください
原文をそのまま読んでください。
肩が脱臼したと感じたら、すぐに医師の診察を受けてください。自分で肩を元に戻そうとしてはいけません。それにより損傷がひどくなることがあります。医師の診察を受けるまで、できればつり包帯や副子を使用してなるべく腕を動かさず、氷で冷やします。氷冷は痛みを和らげ、腫れを抑える効果があります。 (同)
いけない理由は2つ。ひとつは、骨折の有無が分からないまま動かすことになるから。
多くの場合、診察で肩の脱臼を診断することができますが、通常は診断を確定し骨折していないかを確認するためにX線検査を行います。脱臼した関節を元に戻す前に、医師が骨折の有無を把握しておく必要があるからです。 (同)
もうひとつは、血管と神経です。
脱臼が起きると、すばやく元の位置に修復された場合を除き、骨折よりもむしろ血管と神経の損傷を生じやすいです。 (MSDマニュアル家庭版「脱臼の概要」)
整復の方法はMSDにも載っていますが、医師が、X線で骨折を確認したうえで行う処置としてです。引っ張る・ひねる・ぶら下げる、どれもしないでください。
「変形した状態を元に戻す必要はありません」
正直に書きます。『救急蘇生法の指針2025(市民用)』の全69頁に「脱臼」という語は1度も出てきません。「指針が脱臼についてこう書いている」とは言えません。ただ、「捻挫、打ち身(打撲)、骨折」の章にある手足が変形しているときの原則は、そのまま当てはまります。
けがで手足が変形している場合は骨折が強く疑われます。変形した手足を固定することで、移動する際の痛みを和らげたり、さらなる損傷を防ぐことができます。固定には添え木や三角巾などを使用します。変形した状態を元に戻す必要はありません。 (救急蘇生法の指針2025 市民用「14 捻挫、打ち身(打撲)、骨折」)
元に戻す必要はない。固定して、冷やす。2つの資料の結論は同じです。指針は、冷却パックは薄い布などを挟んで皮膚に直接当てない、とも書いています。
家庭でしてよいのは「動かさない」と「冷やす」だけです(写真はイメージです)
「様子をみる」という選択肢は、どの入口にもありませんでした(写真はイメージです)
そのまま、受診につないでください(写真はイメージです)

