夜中に足の親指が激しく痛む——傷病名は「痛風発作」。尿酸値が正常でも起きます
家庭救急

夜中に足の親指が激しく痛む——傷病名は「痛風発作」。尿酸値が正常でも起きます

夜中に足の親指が激しく痛む。傷病名は「痛風発作」でした。血液検査の尿酸値が正常でも痛風発作は起き、急性の発作が起こっている間はとくに正常なことがあると資料は書いています。2つの資料の原文からまとめました。

夜中に、足の親指が激しく痛んで目が覚めた。今日はその話をします。

この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。典型的な形としては——夜のうちに片方の足の親指の付け根が突然痛みはじめ、朝には腫れて赤くなり、靴が履けず、床に足をつくこともできない、という形で起こります。ここに書くのは資料に書かれていることだけで、いちばん伝えたいのは血液検査の尿酸値が正常でも痛風発作は起きることと、プリン体を控えるだけでは足りないことの2点です。

暗い寝室。乱れた掛け布団に、斜めから一筋の光が差している 痛みはしばしば夜間に起こります(イメージ写真です)

夜中に、足の親指が激しく痛む

『MSDマニュアル家庭版』の「痛風」(最終更新2025年7月)から。

発作時には、典型的に、1つまたは複数の関節に突然激しい痛みが生じ、これはしばしば夜間に起こります。痛みは次第に強くなり、特に関節を動かしたり、関節に触れると耐えがたい激痛を感じます。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

しばしば夜間に起こる。触れると耐えがたい激痛になります。

関節は炎症を起こし、腫れて熱をもち、その関節部の皮膚の見た目は、赤または紫の色合いを帯び、硬くなり、光沢がある場合があります。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

光沢がある。関節以外の症状として、発熱・心拍数の上昇(頻脈)・全身のけん怠感がみられることもあります。痛いのは足なのに、熱が出る。

続く長さが書かれています

最初の数回の発作は、通常、1つの関節のみに起こり、7~10日続きます。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

7〜10日。痛みは、受診しないままでも引きます。

症状は徐々に消失し、関節の機能も回復し、次の発作が出現するまでは無症状です。しかし、痛風が進行すると、治療しなければ発作の持続時間が長くなり、頻度も増し、複数の関節が侵される傾向があります。治療せずにいると、後期の発作は最大3週間続くことがあります。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

次の発作までは無症状。だから「治った」と感じます。けれど資料は、治療しなければ発作は長引き、頻度も増すと続けます。治まったことは、治ったことではありません。

切子のグラスの寄り。底のほうに琥珀色の液体が残っている 引き金は一つではありません(イメージ写真です)

「痛風発作」とは

痛風は、尿酸の血中濃度が高いこと(高尿酸血症)が原因で、尿酸の結晶が関節に沈着し蓄積する病気です。結晶が蓄積することで、関節とその周辺に痛みのある炎症の発作が起きます。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

高尿酸血症は、血液中の尿酸の濃度が高い状態です。痛みの出どころは、関節の中の結晶です。

痛風は、足の関節に生じることが最も多く、特に足の親指の付け根に多くみられます。痛風による足の親指の腫れ、痛み、発赤はポダグラと呼ばれます。しかし、痛風は足首、足の甲、膝、手首、肘など、他の部位にもよく生じます。尿酸結晶は、温かい部位よりも冷たい部位でより容易に形成されるため、痛風はこれらの冷たい部位に発生する傾向があります。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

結晶は、温かい部位よりも冷たい部位でできやすい。足の親指は、体のいちばん端です。MSDは、脊椎の関節・股関節・肩関節のような体の温かい中心部分の関節に発症することはまれだとも書いています。出る場所に、理由があるということです。そして足首・足の甲・膝・手首・肘にもよく生じるので、親指だけの病気ではありません。

引き金になるもの

MSDは、激しい痛風発作(急性痛風性関節炎)は予告なしに起こることがあるとして、けが、感染症などの疾患、手術、尿酸値を急激に変化させうる薬による治療の開始、アルコールやプリン体を多く含む食品の大量摂取を挙げています。

けが、感染症、手術。飲みすぎ・食べすぎだけの話ではありません。入院して手術を受けたあと、別の病気で熱を出したあとに足が痛み出すことがある、と読めます。

もうひとつ、見落としやすいものが混じっています。薬による治療の開始です。尿酸値を急激に変化させうる薬を飲みはじめたときにも、発作が起きることがある。下げはじめたから痛んだという順番があり得るわけで、ここを知らないと「薬が合わない」と受け取ってしまいます。自己判断でやめる前に、処方した医師に伝えてください。

木の床に置かれた、黒い革の紐靴 足をつけるかどうかが、受診の判断に入ってきます(イメージ写真です)

尿酸値が正常でも、痛風発作は起きます

痛風患者の多くは、血中尿酸値が上昇しています。しかし、尿酸値が正常な場合もあり、特に急性の発作が起こっている間は正常なことがあります。血中尿酸値が高くても痛風の症状がみられない人もたくさんいるため、血液検査だけでは診断を下せません。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

向きの違う3つが書かれています。多くの人は尿酸値が上がっている。けれど正常な場合もあり、特に発作中は正常なことがある。逆に、値が高くても症状がない人もたくさんいる。だから血液検査だけでは診断を下せません。

「健診では正常だったから痛風ではない」とは言えません。痛んでいるそのときに測って正常、があるからです。診断は、関節液を特殊な偏光顕微鏡で調べて尿酸結晶が確認されれば確定します。決めるのは関節液と顕微鏡です。

「プリン体を控えれば治る」ではありません

しかしながら、厳格な低プリン体食にしても尿酸値は少ししか下がらず、痛風患者に対する治療として十分であることはまれです。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

少ししか下がらず、十分であることはまれ。食事に気をつけることが無意味なのではありませんが、それだけで片がつく話ではありません。危険因子としてMSDが挙げているのは、ビール(ノンアルコールビールを含む)およびリキュール、高果糖コーンシロップを含む食べもの・飲みもの、プリン体を多く含む特定の食品、乳製品の摂取量が少ないこと、肥満、慢性腎臓病、一部の薬です。ノンアルコールビールが、かっこの中にあります。お酒をやめたから大丈夫、という線引きにもなりません。

白いタイルの壁の前、木の台に並んだガラスの保存容器と器 並ぶのは、お酒だけではありません(イメージ写真です)

救急医療機関を受診する目安

MSDは受診の基準を書いています。

発作が発生し、38.3℃を超える発熱、悪寒戦慄(寒気とふるえ)、またはその他の重度の症状(例えば、筋力低下、嘔吐、発疹、息切れなど)がみられる場合、これらの症状は関節の感染症やまったく別の問題が原因であることもあるため、医師に連絡するか、救急医療機関を受診してください。 (MSDマニュアル家庭版「痛風」)

38.3℃を超える発熱、悪寒戦慄、またはその他の重度の症状。理由も同じ文にあります。関節の感染症や、まったく別の問題が原因であることもあるから。家庭で見分けるのではなく、この基準で動きます。

Q助がたどらせる道

総務省消防庁の「全国版救急受診アプリ(Q助)」は、自分で答えて受診の目安を出すアプリで、病名を判定するものではありません。大人の症状選択には「足首から先の問題(大人・こども)」という入口があり、最初の画面は2項目。急に足の色が悪くなって(紫色)強い痛みがあるか、急に足の先の感覚が鈍くなったか。どちらかに当てはまれば「いますぐ救急車を呼びましょう」。

当てはまらないと次の画面(全5項目)に進みます。その1番目。

1.関節や親指の付け根に強い痛み(耐えられるが強烈な痛み 〔または〕 我慢すれば他の動作ができるが忘れることはできない痛み)がありますか? (全国版救急受診アプリ「Q助」総務省消防庁)

「親指の付け根」が名指しで出てきます。担当科は「整形外科・内科・救急科」。これを選ぶと次の画面に進み、高齢者(65歳以上)か、未就学児(6歳未満)か、(女性のみ)妊娠しているか、歩くことができない状態か、血が止まりにくいか、または抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)などをのんでいるかのいずれかで「いますぐ救急車」。どれにも当てはまらず、ようやく「2時間をめやすに受診しましょう」です。

「歩くことができない状態」は、それだけで救急車の側です。痛風発作で足をつけず歩けない、は珍しくありません。

「最近、新しい薬を飲みはじめましたか?」

同じ入口の先の画面には「最近、新しい薬を飲みはじめましたか?」という項目もあり、担当科は「内科・かかりつけ」です。最近飲みはじめた薬があれば、受診のときに伝えてください。

MSDは急性発作の治療にNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)がしばしば効果的だとし、安静、副子を用いた固定、氷冷も挙げています。どれも、医師が診たうえで行う治療です。市販の痛み止めを自分の判断で使う話ではありません。

窓辺のテーブルに置かれた、水の入ったグラスとガラスのカラフェ 歩けるかどうかが、分かれ目です(イメージ写真です)

この記事で書かなかったこと

  • 尿酸値を下げる薬や、発作が治まってからの治療——MSDには治療の記載がありますが、何をどう使うかは診察した医師が決めることなので、この記事では扱いません
  • 食事の具体的な献立やプリン体の量——MSDが書いているのは「厳格な低プリン体食にしても尿酸値は少ししか下がらず」までで、食品ごとの数字は書かれていません
  • 痛風と似た関節の病気の見分け方——MSDは、痛風は他の種類の関節炎と似ていることがあり、ときには誤診されることもあると書いています。見分けは診察と検査の仕事です
  • 発作が起きていないときの検査や通院の間隔——地域や医療機関によって仕組みが違うため、この記事では扱いません

家族や本人ができることは、そう多くありません。夜中に片足の関節が突然激しく痛んだら、受診する側に寄せる。歩けないなら、我慢しないで119番を考える。熱が38.3℃を超えていたら、別の原因もあるものとして動く。そして、尿酸値が正常だったという記憶で痛みを打ち消さない。資料は、血液検査だけでは診断を下せないと書いています。決めるのは、診る人です。

救急車を呼ぶか迷うときの相談先として♯7119もあります。痛みで歩けなくなったときの受診の判断は別の記事にも書きました。関節が急に変形して動かせないときは、また別の話になります(肩が外れたとき)。

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

この記事の内容に関係する備え。

  • 体温計 — MSDが受診の基準に挙げている「38.3℃を超える発熱」は、測らないと分かりません
  • お薬手帳 — 最近飲みはじめた薬を受診先に伝えるためのものです

Amazonのアソシエイトとして、救急のリアルは適格販売により収入を得ています。

参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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