朝起きたら、片方の耳が聞こえない——傷病名は「突発性難聴」。MSDマニュアルは「それ自体が警告すべき兆候」と書いています
家庭救急

朝起きたら、片方の耳が聞こえない——傷病名は「突発性難聴」。MSDマニュアルは「それ自体が警告すべき兆候」と書いています

突発性難聴は、中等度から高度の難聴が約72時間のうちに発生するもので、起床時に気づかれることもあります。MSDマニュアル家庭版は「それ自体が警告すべき兆候」「直ちに医師の診察を受ける必要があります」と書いています。原文を引き、難聴に神経の症状が加わったときの考え方、家族が受診前に伝えられることをまとめました。

朝、目が覚めたら、片方の耳だけ聞こえない。今日はその話をします。

この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的に近い一次資料の原文から、「突発性難聴」について書かれていることをまとめました。救急隊は診断をしません。ここに書くのも、資料に書かれていることです。

朝、人のいない寝具と枕 起きた直後に気づく人もいる、とされています(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 突発性難聴は、起床時に気づかれることもある、片耳の急な難聴です(MSDマニュアル家庭版)
  • MSDは「それ自体が警告すべき兆候です」と書き、「直ちに医師の診察を受ける必要があります」としています。そのうち治るで待つ病気としては書かれていません
  • 難聴に加えて、顔・手足・言葉などの異変があるときは別の話です。その場合は119番を考えます(後ほど書きます)

1. 傷病名——「突発性難聴」とは

使った資料は『MSDマニュアル家庭版』の「突発性難聴」です(最終更新2025年4月)。米国で書かれたものの日本語版で、日本の診療の実際と細部が違う可能性があります。

突発性難聴は、中等度から高度の難聴が約72時間のうちに発生するもので、起床時に気づかれることもあります。 (MSDマニュアル家庭版「突発性難聴」)

こうした難聴は、原因が薬剤でない限り、一般的には片耳だけに起こります。 突発性難聴の原因に応じて、耳鳴り(耳鳴)、めまい、動いたり回転したりしているような感覚(回転性めまい)など、他の症状がみられることもあります。 (同)

頻度については、こう書かれています。

毎年およそ5000~1万人に1人が突発性難聴を発症します。 (同)

これは米国の資料の数字で、日本の統計ではありません。日本の患者数は確認できていないので書きません。

ほとんどの患者では、突発性難聴の原因が分かりません。 (同)

ストレスや疲れが原因だとは、この資料には書かれていません。ですから、ここでも書きません。

コンクリートの壁に落ちる、窓からの光と影 「約72時間のうちに」の始まりは、本人にも分かりにくいことがあります(写真はイメージです)

2. 「それ自体が警告すべき兆候」——様子を見てはいけない理由

いちばん大事な2文です。

突発性難聴はそれ自体が警告すべき兆候です。 一部の原因は速やかに治療しなければならないため、突発性難聴がある人はすべて、直ちに医師の診察を受ける必要があります。 (同)

MSDは原因として、頭部外傷、激しい気圧の変化、耳に損傷を与える薬剤、感染症などのほか、「まれに突発性難聴が最初の症状としてみられる」病気として「脳内の平衡感覚を担っている部分(小脳)に向かう動脈の閉塞による小さな脳卒中」も挙げています。「耳だけ」に見えても、急いで調べる原因が混じる。だから「直ちに」なのです。

ここで、気になる数字があります。

原因が不明な場合は、患者の約半数が正常な聴力を取り戻し、残りの患者では部分的に聴力が戻ります。改善がみられるとすれば、通常は10~14日以内に改善します。 (同)

これを、半数は治るのだから待てばよい、と読むのは間違いです。MSDはこの数字を、待ってよい期間としては書いていません。治療も、診察のあとに医師が決めることで、家庭で選ぶ話ではありません。

3. こういうときは119番——難聴に、神経の症状が加わるとき

MSDにはこう書かれています。

難聴以外に神経系の機能障害の症状がある場合は、難聴が神経や脳の機能障害の症状であることがあります。 (同)

MSDは、医師が聞くこととして「脳の他の部分や神経系を侵すもの(頭痛、筋力低下、味覚異常)」を挙げています。MSDは「119番」とは書いていません。ここから先は消防庁の「全国版救急受診アプリ(Q助)」の話です。

Q助で大人の「ろれつが回らない」を選ぶと8つの設問が出ます。「手足に力が入りませんか?」「顔の表情に左右差がありますか?」などで、当てはまれば結果は「いますぐ救急車を呼びましょう」です。

耳が聞こえにくい朝に、顔がゆがむ、片方の手足に力が入らない、ろれつが回らないが重なったら、119番を考えてください。詳しくは顔・腕・言葉のあとに、救急隊はもう7つ見ています、「起きたら右手に力が入らない」——脳梗塞の4.5時間は、目が覚めた時刻からは数えない、脳卒中の記事まとめに。

Q助に「耳」の入口は、あるのか

Q助に「突発性難聴」という語はなく、大人の症状の一覧(43項目)にも「耳」「難聴」の入口はありません(こどもの一覧にだけ「耳痛・耳だれ」があり、「耳鳴り 〔または〕 聞こえにくさはありますか?」に当てはまると1歳以上は「2時間をめやす」です)。

大人では、「聞こえにくさ」を聞く設問が「めまい・ふらつき」と「しびれ」の2か所にあります。めまいの場合、当てはまると「高齢者(65歳以上)ですか?」「歩くことができない状態ですか?」と聞かれ、どちらかなら「いますぐ救急車」、どちらでもなければ「2時間をめやす」です。しびれの場合も、歩けない状態などで「いますぐ救急車」、それ以外は「2時間をめやす」です。どの入口から入っても、「様子を見る」にはなりません。ただしQ助は突発性難聴を判定するものではなく、耳だけが聞こえない場面そのものの設問は確認できませんでした。

消防庁のリーフレット「救急車を上手に使いましょう」(手元の8頁)と救急蘇生法の指針2025(市民用)には、「難聴」「聞こえ」の記載はありません。119番の資料に載っていなくても、MSDは「それ自体が警告すべき兆候」と書いている——ここが見落としやすい点です。

数字のない丸い掛け時計 救急車は必要ないことが多くても、「直ちに」受診が必要な症状です(写真はイメージです)

4. 家族へ——受診するまでに、できること/言えること

① 様子を見よう、と言わない

MSDは「直ちに」としか書いていません。疲れているだけ、という言葉は受診を遅らせます。他人が原因を決めないことが、家族にできる最初のことです。

② 医師に伝えることを、先にメモしておく

MSDによると、医師はこう質問します。

医師は、難聴が片耳だけか両耳にあるかを尋ねるほか、頭部外傷、ダイビングによる損傷、感染性の病気など特定の出来事が起こったかどうかに注意を払います。 (同)

家族が先に整理しておけることは次のとおりです(私の提案で、MSDの文章ではありません)。

  • 片方か両方か、いつ気づいたか
  • 耳鳴り・めまい・頭痛・顔や手足の異変はないか
  • 最近の頭のけが、気圧の変化(ダイビングなど)はなかったか
  • 飲んでいる薬(お薬手帳があれば持参)

③ 迷ったら、電話で相談する

迷うときは♯7119(救急安心センター)があります。ただし顔・手足・言葉の異変が重なるときは、相談ではなく119番です。Q助の「めまい」の判定は「重症」から「軽症」に変わりました——傷病名は「めまい」に書きました。

机の上に置かれた、ダイヤル式の固定電話 迷ったら、まず電話で相談するという道もあります(写真はイメージです)

この記事で書かなかったこと

  • 〇時間以内に受診すれば治るという時間の数字(MSDには「直ちに」としかありません)
  • 治療薬の種類や、使い始める時期
  • 日本国内の患者数
  • ストレスや疲れが原因という断定
  • 何科を受診するか(今回使った資料に書かれていませんでした)

まとめ

  • 突発性難聴は、起床時に気づかれることもある、多くは片耳の急な難聴です(MSD家庭版。米国で書かれたものの日本語版)
  • MSDは「それ自体が警告すべき兆候」「すべて、直ちに医師の診察を受ける」と書いています。半数は治るという数字は、待ってよい理由ではありません
  • 難聴に神経系の症状が加わるときは別です。顔・手足・ろれつの異変があれば、119番を考えます(Q助の「ろれつが回らない」)
  • 家族は原因を決めつけず、「いつ・どちらの耳・ほかの症状・薬」をメモして受診につなぎます

ベランダ口に置かれたサンダル 「いつもと違う」に気づいた朝が、受診の始まりです(写真はイメージです)

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

この記事の内容に関係する備え。

  • お薬手帳ケース — 診察では、飲んでいる薬を聞かれます。手帳をまとめて持ち出せるようにしておく用です

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参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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