運動会やスポーツの季節です。今日は、「心臓震盪(しんぞう・しんとう)」という、あまり知られていない傷病名の話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的な一次資料(救急蘇生法の指針2025)に書かれていることだけをまとめました。
球技が盛んになる季節です(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 心臓震盪は、胸(心臓の真上あたり)への衝撃で不整脈が起き、心停止に至るものです。指針2025は、健康な小児でも球技中のボールや空手による胸部打撲で生じうると書いています
- 倒れた人の前でやることは、ほかの心停止と同じです。119番通報とAEDの手配を頼み、普段どおりの呼吸がなければ胸骨圧迫を始めます
- 家族でできる準備は、運動する場所のAEDがどこにあるかを知っておくことです
1. 傷病名——「心臓が悪かった」わけではありません
先日、運動中に心停止が起きる病気として「「運動したあとに、気を失った」——それは体力の問題ではありません。傷病名は「肥大型心筋症」でした」を書きました。あちらは、もともと心臓に病気が隠れていた人の話です。
今日の心臓震盪は、軸が違います。指針2025には、こう書かれています。
特別な例として、前胸部(心臓の真上あたり)への衝撃により不整脈が生じ心停止に至る心臓震盪があります。若い男性に多く、野球、ソフトボール、サッカーなどで発生しています。前胸部への衝撃を避けることが予防につながります。 (救急蘇生法の指針2025 市民用 p.17)
「不整脈」とは、心臓の拍動のリズムが乱れることです。ここで大事なのは、原因が外からの衝撃だという点です。同じ指針は、子どもについてこう書いています。
また、健康な小児でも、球技中のボールや空手による胸部打撲で心臓震盪が生じ突然の心停止に至ることもあります。 (同 p.18)
2. どんなときに起きるか——球技、そして空手
指針2025が名前を挙げているのは、次の場面です。
- 野球、ソフトボール、サッカー(成人を含む「若い男性に多い」とされる場面)
- 球技中のボール、空手による胸部打撲(健康な小児の場面)
ボールが当たる場所によっては、心臓の真上になることがあります(写真はイメージです)
予防については、指針は「前胸部への衝撃を避けることが予防につながります」としか書いていません。防具で防げるかどうかは、今回確認した資料からは分かりませんでした。
もう一つ、指針は運動施設の側にも求めています。
運動施設の管理者や大会の運営者などには、運動する場所へのAEDの配備と、教職員やスタッフを対象とした一次救命処置のトレーニングを実施しておくことが求められます。 (同 p.17)
3. 倒れた人を前にして、何をするか
※ このあとの引用では、原文にある図の参照(「(図7)」など)を省いています。文そのものは原文のままです。
ここが、この記事の中心です。胸にボールが当たって倒れた人も、ほかの原因で倒れた人も、やることは同じです。指針2025の手順を、順に原文で示します。
① 大声で応援を呼び、119番通報とAEDを頼む
そばに誰かがいる場合は、その人に119番通報をするよう依頼します。また近くにAEDがあれば、それを持ってくるよう頼みます。できれば「あなた、119番通報をお願いします」「あなた、AEDを持ってきてください」など、具体的に依頼するのがよいでしょう。 (同 p.22)
② 普段どおりの呼吸があるか見る
胸と腹の動きを見ます。
胸と腹の動きから、呼吸をしていない、または呼吸はしているが普段どおりではないと判断した場合や判断に迷う場合は心停止と考えて、ただちに胸骨圧迫を開始してください。 (同 p.24)
倒れた人のそばで、周りの大人が動けるかどうかが分かれ目になります(写真はイメージです)
③ 胸骨圧迫(胸を押す)
押す場所は、胸の真ん中です。
胸の真ん中(左右の乳頭を結ぶ線の真ん中あたり)を目安にします。胸骨圧迫の部位を見つけるために、必ずしも服を脱がす必要はありません。 (同 p.25)
子どもの場合は、こう書かれています。
小児では胸の厚さの約1/3沈み込む程度に圧迫します。傷病者の体が小さくて両手では強すぎる場合は片手で行ってもかまいません。 (同 p.26)
④ AEDを使う
電源を入れたら、以降は音声メッセージなどに従って操作します。 (同 p.33)
AEDの箱を開けるとブザーが鳴ることがありますが、指針は「ブザーは鳴りっぱなしにしたままでよいので、すぐに傷病者のもとに持参してください」と書いています(同 p.32)。電極パッドを貼る間も、「なお、電極パッドを貼り付ける間も胸骨圧迫を続けます」とあります(同 p.34)。
⑤ 救急隊に引き継ぐまで続ける
心肺蘇生は到着した救急隊員と交代するまで、できるだけ中断せずに続けることが大切です。効果がなさそうに思えても、あきらめずに続けてください。 (同 p.29)
運動する場所に着いたら、まずAEDの場所を確かめます(写真はイメージです)
日曜の夕方、明日からの運動の場所を思い浮かべてみてください(写真はイメージです)

