空気が乾く季節に入りました。今日は、家庭でよく起きるのに、止め方を間違えやすい「鼻出血(びしゅっけつ・いわゆる鼻血)」の話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的な資料の原文をもとに、家庭でできることと、受診の目安をまとめました。救急隊は診断をしません。気になる症状があるときは、医療機関や相談窓口にご相談ください。
椅子に腰かけて、少し下を向いて待ちます(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 救急蘇生法の指針2025は、鼻血の止め方を短い一文で書いています。椅子に腰かけ、鼻のやわらかい部分をつまみ、少し下を向き、5~10分ほど安静に、です
- 上を向く・横になる・首をたたく・鼻の根元を押さえる、は指針に書かれていません。
- 血をさらさらにする薬を飲んでいる人は、受診の目安が変わります。ただし薬は自己判断でやめず、かかりつけ医に相談します
1. 傷病名は「鼻出血」——家庭でやりがちな3つの間違い
鼻血は、医学の言葉では鼻出血といいます。MSDマニュアル家庭版(米国で書かれたものの日本語版です)はこう説明します。
鼻腔前部の出血は一見驚きますが、多くは深刻なものではありません。 (MSDマニュアル家庭版「鼻出血」)
最も一般的な原因は「外傷(鼻をかむ、ほじるなど)」と「鼻の粘膜の乾燥(冬に起こるような)」だと書かれています。
さて、鼻血が出たとき、こんな対応をしていないでしょうか。
- 上を向く(血が出てこないように)
- 横になる(安静にするために)
- 首の後ろをたたく、鼻の付け根を押さえる
3つとも、指針2025の方法とは違います。
2. 正しい止め方——指針2025の一文を分解する
『救急蘇生法の指針2025(市民用・解説編)』のファーストエイド「鼻血」の項は、短い一文でできています。
鼻血が生じた場合は、椅子などに腰かけ、鼻のやわらかい部分を指でつまんで圧迫しながら、少し下を向きます。鼻筋の硬い骨のすぐ下のやわらかい部分をつまむと効果的です。その姿勢を保ったまま、5~10分ほど安静にしてください。多くの場合、この方法で止血が可能です。 (救急蘇生法の指針2025 市民用)
4つに分けて読みます。
① 「椅子などに腰かけ」——横にならない。指針は座る方法を書き、横になる方法は書いていません。
② 「少し下を向きます」——上を向かない。指針は「下」と書き、理由までは書いていません。MSDには「血を飲み込んでしまうと、血が胃を刺激するため、その血を吐いてしまうことがよくあります」とありますが、姿勢との関係までは書かれていません。
③ 「鼻のやわらかい部分を指でつまんで圧迫」——首をたたくのでも、根元でもない。場所は「鼻筋の硬い骨のすぐ下のやわらかい部分」です。MSDにも「鼻の上部の骨の部分をつまんではいけません」とあります。首の後ろをたたく、首を冷やす方法は、指針にもMSDにも書かれていません。
清潔なティッシュやタオルを手元に用意しておきます(写真はイメージです)
④ 「5~10分ほど安静に」——途中で何度も確かめない。「その姿勢を保ったまま」と書かれています。MSDも「一度も手を離さないことが重要です」と書いています。
ティッシュや綿を詰める方法は、指針2025には書かれていません。MSDは次のとおりです。
氷のうで鼻を冷やす、ティッシュペーパーを丸めて鼻に詰める、頭を様々な位置に向けるといった、家庭で行われるその他の処置は効果的ではありません。 (MSDマニュアル家庭版「鼻出血」)
なお、「多くの場合、この方法で止血が可能です」は鼻血の項の文です。けがの出血は、別の項「出血」の手当てです。
3. こういうときは受診・119番——Q助とMSDから
つまんでも止まらないとき、MSDマニュアル家庭版はこう書いています。
鼻をつまむことで鼻出血を止められない場合は、すぐに病院に行くべきです。 (同)
消防庁の救急受診アプリ「Q助」にも、「鼻のけが・鼻血(大人・こども)」の設問があります。1画面目の12項目は、どれか1つでも当てはまれば「いますぐ救急車を呼びましょう」です。鼻血そのものに関わるのは次の2つです。
鼻血が圧迫止血をしても30分以上継続していますか? 鼻血が多いですか?(コップ1杯以上・約100cc以上)。 (総務省消防庁「Q助」)
指針の止め方は「5~10分」、Q助の119番の目安は「圧迫止血をしても30分以上」です。残り10項目は、鼻をぶつけたあとの頭痛や吐き気などです。
2画面目を経て3画面目に進みます。3画面目で「抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)などをのんでいますか?」に当てはまると、「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」(2時間をめやす)になります。同じ画面の「高齢者(65歳以上)ですか?〔または〕未就学児(6歳未満)ですか?〔または〕(女性のみ)妊娠していますか?」も同じ結果です。
MSDマニュアル家庭版は、直ちに受診が必要な「警戒すべき徴候」として、過度の出血の徴候(筋力低下、失神、起立時のめまいなど)、血液凝固を妨げる薬剤の使用、出血性疾患、直接圧迫などで簡単に止まらない出血、最近の数回の鼻出血(特に明らかな原因がないもの)を挙げ、出血が止まっても徴候のある人は同じとしています。
国が配っている消防庁のリーフレット『救急車を上手に使いましょう』(全8頁)に、「鼻」「鼻血」の語は1か所もありません。あるのは「大量の出血を伴うけが」などです。迷ったときは「119番通報の相談は♯7119」とあります(【現役救命士監修】#7119 救急安心センターの使い方と判断基準)。
5〜10分は、時計を見ながら待ちます(写真はイメージです)
止まったあとも、いつもと違うと感じたら相談します(写真はイメージです)
空気が乾き始める季節は、室内の乾燥にも気を配ります(写真はイメージです)

