到着したとき、胸骨圧迫は始まっていた|80代女性の院外心停止
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到着したとき、胸骨圧迫は始まっていた|80代女性の院外心停止

私たちの到着前に胸骨圧迫が始まっていた80代女性の院外心停止。心電図で見えた波形と、倒れた人を見たときの最初の行動を分けて解説します。

私たちが到着したときには、医療スタッフがすでに胸骨圧迫をしていました。患者さんは80代の女性。診察を待っている間に胸の痛みを訴え、そのあと突然倒れたという連絡で私たちは向かいました。病院の初診時の傷病名は「院外心停止」でした。

倒れた原因がその場で分からなくても、命をつなぐために始められることがあります。この事案で私たちが引き継いだのは、到着前から始まっていた心肺蘇生です。私たちが確認したことと、家族や通りがかりの人にもできることを、分けてお伝えします。

待合室の椅子と受付を写したAI生成イメージ

写真はすべてAI生成のイメージです。実際の施設や患者さん、活動の様子ではありません。

到着する前に分かっていたこと、到着して見たこと

出動時に把握した概要の一部です。場所などを含む前後は省き、電話での言葉そのものではなく出動時の概要として紹介します。

[前略]待ち時間中に、胸痛を訴えた後、突然倒れ、意識及び呼吸がなくなったもの。[後略]

倒れる場面を私たちが見たわけではありません。私たちが患者さんに接触したとき、ベッドの上で医療スタッフが心肺蘇生を続けていました。私たちはその対応を引き継ぎ、心電図を確認しました。最初に確認した波形は「無脈性電気活動」、略してPEAでした。

高血圧と不整脈があることは把握していましたが、それが今回の心停止につながったかは確認できていません。胸の痛みは発症を知る手がかりの一つです。それだけで原因の病名を決めることはできません。私たちは医師に連絡して指示を受け、心肺蘇生を続けながら搬送しました。搬送後の詳しい経過や、心停止に至った原因は確認できていません。

医療施設をイメージした無人の椅子とドアのAI生成写真

心電図に波形があっても、血液を送れているとは限らない

心停止とは、心臓が全身へ血液を十分に送れなくなった状態です。「院外心停止」の院外は、病院へ収容される前に心停止が起きたことを示します。この言葉から、心臓の病気だったか、ほかの原因だったかまでは分かりません。

無脈性電気活動では、心電図に電気活動が見えても、血液を送るポンプとしての働きが保たれず、脈を確認できません。波形が出ていることと、全身に血液が届いていることは別です。私たちが確認した最初の波形について言えるのはそこまでです。現場にいた人が波形を見分けてから行動する必要はありません。

また、AEDは心停止なら必ず電気ショックをする機械ではありません。機器が波形を調べ、電気ショックが必要か案内します。PEAは電気ショックの対象となる波形ではありません。市民がAEDを使う場面で「ショックは不要」と案内されても、それは心停止ではないという意味ではありません。案内に従い、胸骨圧迫を再開します。医療者向けの波形の区別は米国心臓協会の成人二次救命処置で確認しました。

訓練用人形を用いる応急手当講習のAI生成イメージ

目の前で人が倒れたら、病名が分かるまで待たない

呼びかけに反応がなければ、すぐ119番。普段どおりの呼吸がない、または判断できなければ、胸骨圧迫を始めます。周囲に人がいればAEDを頼みます。

まず周りに危険がないか確かめてから近づき、肩をやさしくたたきながら呼びかけます。反応がなければ助けを呼びます。人が複数いるなら、目を合わせて「あなたは119番を」「あなたはAEDを」と役割を分けると、同じことを全員でやってしまうのを防げます。一人なら、まず119番して、電話をスピーカーにしておくと両手を使えます。

呼吸を確かめるときは胸やお腹が普段どおりに動くかを見ます。途切れ途切れにしゃくり上げるような動きは、普段どおりの呼吸ではありません。消防庁の応急手当講習では、呼吸の確認は10秒以内とし、判断に迷うときも胸骨圧迫を始めると案内しています。通報先に「呼びかけても返事がない」「呼吸がよく分からない」と、そのまま伝えてください。難しい言葉で説明する必要はありません。

AEDが届くまで胸骨圧迫を続け、届いたら音声案内に従います。

たとえば、外出先で倒れた人のそばに二人いるなら、一人が胸骨圧迫を続け、もう一人が電話をかけて状況を伝えます。第三の人が来たら、その人にAEDを取りに行ってもらいます。AEDがどこにあるか分からない場合は、誰かが探している間も、そばの人は通報と圧迫を続けます。一人の場合も、遠くのAEDを探し回ってから通報する必要はありません。119番で周りの状況を伝え、次の行動の指示を受けてください。

胸骨圧迫の基本は、成人なら胸の真ん中を強く速く押すことです。押す場所や速さに迷ったら、119番の指示に従います。押し続けて疲れたら、周りの人と交代します。AEDが必要か分からないときも、電源を入れれば機械が次に何をするか案内します。解析やショックの際は案内に従って離れ、再開するように言われたら圧迫に戻ります。

棚に置かれたAEDのケースのAI生成イメージ

胸の痛みは倒れる前から相談の理由になる

今回のように、倒れる前に胸の痛みがあったと伝わってくることがあります。すべての胸の痛みが心停止につながるわけではありません。ただ、突然の強い胸の痛み、息苦しさ、冷や汗を伴う胸の不快感など、急な異変があるときは放っておかず、緊急時は119番してください。本人が普段と違うと言っていた、いつから痛がっていた、反応がいつ変わった、といった事実は、通報したあとに伝えられます。薬や持病を調べるために、通報を後回しにする必要はありません。

スマートフォンを見ながら家庭の備えを話し合うAI生成イメージ

いつも行く場所のAEDは、設置場所と利用できる時間を確認しておきます。

家族でできる備えは、普段使う施設のAEDの場所を一緒に確認することです。建物が閉まっていると使えない場所もあります。場所だけでなく利用できる時間も確認しておけば、いざというとき取りに行く人が迷いにくくなります。地域の救命講習で一度でも人形を押し、AEDの音声を聞いておくと、実際の場で次の動作を思い出しやすくなります。

家に帰ってから家族と話すなら、まず「倒れている人に呼びかけても返事がなかったら、誰が電話するか」を考えるだけでも十分です。電話に慣れている人が通報し、別の人が入口で到着を待つなど、実際の場所に合わせて役割を想像しておきます。ただし人手が少ないなら、倒れた人のそばを離れる役目よりも、通報と胸骨圧迫を優先します。

今回、私たちが着いた時点で胸骨圧迫はすでに始まっていました。心停止の理由を言い当てることよりも、反応がないことに気づき、通報して圧迫を始めることが、そばにいる人にできる行動です。

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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現役救命士 hiro

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