熱が続いて目と唇が赤い——傷病名は「川崎病」。かぜではありませんでした
家族を守る

熱が続いて目と唇が赤い——傷病名は「川崎病」。かぜではありませんでした

かぜだと思っているうちに、子どもの熱が下がらないまま日が過ぎる。目が赤く、唇が赤く乾いてひび割れている。傷病名は「川崎病」でした。MSDマニュアル家庭版は『症状が現れてから10日以内に治療を行えば冠動脈疾患のリスクは有意に低くなり』と書いています。治療には適した時期がある病気です。現役救命士が原文で解説します。

小さな子どもが熱を出した。かぜだと思っていた。ところが熱が下がらないまま、日が過ぎていく。今日はその話をします。

この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。典型的な形としては——1歳から5歳くらいの子どもが38℃を超える熱を出す。解熱薬を使っても、下がりきらない。2日目に目が赤くなる。3日目、4日目に体やおむつのあたる部分に赤い発疹が出てくる。唇が赤く乾いてひび割れ、舌が赤くザラザラしてくる。首のつけ根がぽっこり腫れている。それでも機嫌が悪いだけに見えるので、家族は「かぜが長引いている」と考える——という形で起こります。

現役救命士として子どもの発熱の現場に行ってきた経験から言うと、こういうときに家族がいちばん気にするのは体温の数字です。けれどこの病気で見てほしいのは、高さではなく下がらないまま日が過ぎていることと、熱のほかに何が増えてきたかです。そして今日いちばんお伝えしたいのは、ひとつだけです。この病気は治療に適した時期があり、早く治療すれば心臓の合併症のリスクが下がります。

木の台の上に、グレーと黄緑のニットのブランケットがたたんで重ねてある 熱が下がらないまま、日だけが過ぎていきます(イメージ写真です)

かぜだと思って日が過ぎる——傷病名は「川崎病」でした

MSDマニュアル家庭版「川崎病」は、熱の始まり方をこう書いています。

通常は38℃を超える発熱で始まり、5日間以上続きます。熱を下げる薬剤(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を投与しても、小児の体温は正常に戻りません。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

ここに家族が足をとられる理由が書いてあります。解熱薬を使っても下がらないのです。「効きが悪い」「こじらせた」という受け取り方になります。これは家庭で薬を試して確かめる話ではありません。すでに使っていて下がらないなら、その事実をそのまま医師に伝えてください。

目の変化も、はっきり書かれています。

発症から1~2日のうちに眼が赤くなりますが眼から分泌物は出ません。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

目やにが出ないので、結膜炎として眼科に向かう流れにもなりにくい。そのあと唇は赤く乾いてひび割れ、赤い舌がイチゴのように見えてきます。手のひらと足の裏も赤くなり、しばしば手足が腫れます。首のリンパ節が腫れることも多くなります。

室内の窓辺。レースのカーテン越しの光の中に、ハンガーラックに掛けた白い布とシャツ、大きな観葉植物 何日続いているか。それがいちばんの情報になります(イメージ写真です)

この記事の軸はここです。MSDは治療の項にこう書いています。

川崎病の治療はできるだけ早く開始されます。症状が現れてから10日以内に治療を行えば冠動脈疾患のリスクは有意に低くなり、発熱、発疹、不快感の消失も早まります。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

「10日以内」という時間が書かれている病気です。だから「かぜだと思って様子を見る」が、そのまま時間の消費になります。

川崎病とは——全身の血管に炎症が起こる病気です

川崎病は、全身の血管の壁に炎症(血管炎)が起こる病気です。MSDは、最も深刻な問題を招くのは心臓の血管の炎症だと書いています。原因は不明で、なりやすい体質の子どもに何らかの感染が加わって異常な免疫反応が起きるのではないかと考えられています。

たいてい1~5歳の子どもに起こります。まれに生後4カ月未満の乳児や、青年・成人にみられることもあります。最も多いのは春か冬です。そしてMSDには、日本に住む私たちに関係の深い一行があります。

この病気は日系の小児により多くみられます。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

熱が下がったら終わり、という病気ではありません。ここが二つめの落とし穴です。

小児の場合、治療しなければ、通常は発症から1~4週間後に心臓の問題が発生します。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

少数の子どもに、冠動脈瘤(心臓の血管の壁にできた膨らみ)が発生します。MSDは、これが破裂したり血栓の原因になったりして、心臓発作や突然死を招くと書いています。一方で治療により、心臓の合併症のリスクは大幅に低下します。症状は2~12週間続くこともあります。つまり熱が下がった時点は、ゴールではなく途中です。

緑色の壁の前の木の台に、ガラスの水差しとコップが並んでいる 水分がとれているかは、家庭で見ておける手がかりです(イメージ写真です)

診断については、MSDが基準を書いています。

小児に5日以上続く38℃以上の発熱があり、以下の5つの症状のうち少なくとも4つがみられれば、川崎病と診断されます。 (MSDマニュアル家庭版 表「川崎病の診断」)

この表に並んでいる症状は、数えると5つです。ただし——これは医師が診断を下すときに使う基準です。家庭でこの項目を数えて、自分で結論を出すためのものではありません。とくに、「まだ5日たっていないから川崎病ではない」とは読まないでください。家庭の役割は、熱が下がらないことと、熱のほかに何が増えてきたかを医師に見せ続けることです。

MSDは、よく似た見た目になる別の病気も挙げています。

同様の症状を引き起こすその他の病気(麻疹[はしか]、猩紅熱、若年性特発性関節炎、小児多系統炎症性症候群[MIS-C]など)を否定するため、血液検査、尿検査、胸部X線検査や血液とのどの培養検査も行われます。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

これは医師が診察と検査で区別することです。家庭でこれを試して自分で結論を出さないでください。血液検査や培養検査が必要だと原文が書いているのは、見た目では分けられないからです。

治療は、免疫グロブリンを点滴で、アスピリンを飲み薬で使います。これは医療機関で行う治療の話であって、家庭で子どもに飲ませる薬を選ぶ話ではありません。量や使い方は書きません。

避けるには——予防ではなく「遅れないこと」

原因が分かっていない病気なので、「こうすれば川崎病にならない」という避け方はありません。避けられるのは、病気ではなく遅れです。

総務省消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」をこどもの入口からたどりました。「症状選択(こども)」には32の入口が並び、「発熱」を選ぶと最初の画面(A004171)は2項目です。「意識がもうろうとしていますか?」「興奮していますか?〔または〕あばれていますか?」——どちらも'いますぐ救急車を呼びましょう'。

どちらにもあてはまらないと、次の画面(A004172)に進みます。ここは18項目あり、生後3カ月未満の38℃以上、8時間以上うとうとしている、ぐったりしている、水分がとれていないといった項目が'できるだけ早めに医療機関を受診しましょう(2時間をめやす)'になっています。

ここで大事なことが二つあります。ひとつは、この18項目に「熱が何日続いているか」を聞く項目が一つもないことです。もうひとつは、18項目のどれにもあてはまらなかったときの行き先が'緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう'(夜間なら翌日の診察でもかまわない、小児科・かかりつけ)であることです。つまりこどもの発熱の入口には、'引き続き、注意して様子をみてください'に行き着く道がありません。

白い木のベンチの上に置かれた、水色に小花柄の子ども用スニーカー 熱以外に何が増えたか、順番と日付を持っていってください(イメージ写真です)

さらに、A004172の16番目に「全身(体の広い範囲)が赤いですか?〔または〕発疹はありますか?」という項目があり、ここを選ぶと「発疹」の画面に移ります。発疹の1枚目(A004231)は顔の腫れや呼吸の苦しさなど5項目で、全部が'いますぐ救急車'。どれにもあてはまらないと2枚目(A004232)に進み、その9項目のなかにこう書かれています。

7.舌にイチゴのようなザラザラがみられますか? 8.眼や唇が真っ赤ですか? (総務省消防庁「全国版救急受診アプリ(Q助)」こども・発疹 A004232)

国のアプリが、川崎病の症状を家庭の言葉で名指しで聞いています。どちらも選んだ時点で'できるだけ早めに医療機関を受診しましょう'(2時間をめやす、小児科)に落ちます。病名はどこにも出てきませんが、国の判定でも様子を見る側ではないということです。

一方、日本救急医療財団『救急蘇生法の指針2025(市民用)』は全69ページで、「川崎病」は単純検索・ルビ分断を許す検索ともに0件でした。市民向けの応急手当の指針なので、この病気は扱われていません。

家族へ——数字より、日付のメモを

熱の高さは、この病気の重さを表しません。家庭で残しておくと強いのは、次の3つです。

  1. 熱が出たのは何日目か。何℃だったかより、「いつから下がっていないか」です
  2. 熱のほかに、何が、いつ増えたか。目が赤くなった日、発疹が出た日、唇が切れた日、首が腫れた日。順番と日付がそのまま情報になります
  3. 解熱薬を使って下がらなかった、という事実。薬を増やす相談ではなく、観察として伝えてください

そして、熱が下がったからといって、予定された受診や検査を見送らないでください。心臓の問題は熱が下がったあとに出てくると原文が書いています。心臓の検査は数週間後や数カ月後にも繰り返されることがあります。

木の台の上で灯っている、白いシェードのテーブルランプ 熱の高さは、この病気の重さを表しません(イメージ写真です)

反応がおかしい、ぐったりして起きない、呼吸が苦しそう——このときはQ助の最初の画面が示すとおり、119番です。そこまでではないけれど熱が下がらない、目や唇が赤い、舌がザラザラしている。このときに家庭が決めるのは病名ではありません。いつ誰に見せるかだけです。夜間や休日に迷ったときの相談先は、子どもの発熱で何を見て119番するかの記事にまとめました。

最後に、MSDの予後の項から一行だけ。

冠動脈に異常がみられなければ、治療することで完全に回復します。 (MSDマニュアル家庭版「川崎病」)

間に合えば戻る病気です。だからこそ、「かぜだと思って様子を見る」の日数を、できるだけ短くしてください。

この記事で書かなかったこと

  • 診断基準の5項目そのもの——MSDの表には5つの症状が並んでいますが、この記事では一覧として並べませんでした。家庭で数えて「4つないから違う」と結論を出すための道具ではないからです。原文は参考文献のリンクから読めます
  • 治療の中身——免疫グロブリンとアスピリンという名前までにとどめ、量や使い方は書きませんでした。家庭で選ぶ薬の話ではありません。市販薬の使い方についても触れていません
  • かぜ・はしか・溶連菌などとの見分け方——MSDが血液検査や培養検査を挙げているとおり、見た目では分けられません。医師が診察で区別することです。熱と別の所見が同時に出るときの考え方は風邪の頭痛だと思っていた細菌性髄膜炎の記事で書きました
  • 冠動脈瘤の経過と長期の管理——MSDには動脈瘤の約3分の2が1年以内に消失するといった記載もありますが、これは診断後に主治医と進める話なので、入口の判断だけにしぼりました
  • 夜に悪くなる子どもの呼吸の話——同じ「かぜだと思って見送る」形でも、入口が呼吸のときは別です(犬が吠えるような咳=クループ)。発熱中のけいれんについては熱性けいれんの記事があります

救急車を呼ぶか迷うときの相談先として♯7119もあります。

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

この記事の内容に関係する備え。

  • 体温計 — MSDが「38℃を超える発熱で始まり、5日間以上続きます」と書いています。測らないと「下がっていない」が分かりません
  • メモ帳・リングノート — 何日目に何が増えたか。目、唇、舌、発疹、首の腫れの順番と日付を書き残すためのものです
  • お薬手帳 — Q助のこどもの発熱の画面は、特別な病気で通院中かどうかを聞いてきます。受診先に伝えるためのものです

Amazonのアソシエイトとして、救急のリアルは適格販売により収入を得ています。

この記事は、現役救命士が現場で見てきたことを出発点に、公的機関と医学資料の原文をAIで突き合わせて整理したものです。引用はすべて原文から確認しています。

参考文献


本記事は一般的な情報提供であり、医療診断に代わるものではありません。実際の症状については必ず医療機関にご相談ください。

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

関連記事

犬が吠えるような咳。傷病名は「クループ」。朝の軽さは回復ではありません
家族を守る

犬が吠えるような咳。傷病名は「クループ」。朝の軽さは回復ではありません

続きを読む →
「立ちくらみ」も「こむら返り」も熱中症です——傷病名でいうと「熱失神」と「熱けいれん」でした
家族を守る

「立ちくらみ」も「こむら返り」も熱中症です——傷病名でいうと「熱失神」と「熱けいれん」でした

続きを読む →
「痛くないので、様子を見ていました」——ゴミのような影が、急に増えた。傷病名は「網膜剥離」でした
家族を守る

「痛くないので、様子を見ていました」——ゴミのような影が、急に増えた。傷病名は「網膜剥離」でした

続きを読む →

記事内容に誤りを発見された場合はこちらからご連絡ください(訂正依頼を選択してください)

現役救命士 hiro のアバター

この記事の執筆・監修

現役救命士 hiro

救急の現場から、家族を守るための情報を発信しています

患者さんとご家族のプライバシーを守るため、本名・所属・勤務地域は公開していません。 記事は総務省消防庁・厚生労働省などの公的な一次資料の原文を確認したうえで書き、 出典は各記事の末尾にすべて記載しています。

運営者・監修者について →