「1時間けいれんした」と聞いた幼児|到着時に止まっていても伝えたいこと
事案から学ぶ

「1時間けいれんした」と聞いた幼児|到着時に止まっていても伝えたいこと

幼い男の子のけいれんが長く続いたと家族から聞いた実事案。私たちの接触時には止まっていた状況から、時間の伝え方と観察点を整理します。

幼い子どもが高熱を出し、全身を硬くしてけいれんする。止まったあとも、家族は「また始まるのでは」と不安になります。

今回紹介するのは、私が実際に出動した、幼い男の子の事案です。ご家族からは、就寝中に強直性のけいれんが約1時間続いたと聞きました。一方、私たちが到着したときにはけいれんは止まり、男の子は泣き、意識は清明でした。体温は39.2℃でした。

家族が見た発症時の様子と、私たちが接触した時点の状態は分けて伝える必要があります。到着時に止まっていても、開始時刻、続いた時間、体の動き、意識の戻り方は大切な情報です。

眠る幼い男の子をそばで見守る架空の母親のAI生成イメージ 掲載写真はすべてAI生成の説明用イメージです。実患者、家族、住居、現場、救急活動を再現していません。原報告書や業務画像は掲載していません。

通報内容は「発熱があり痙攣、今は治まりぐったり」

通報時には、次の内容が伝えられていました。

1歳男児、発熱があり痙攣しました。今は治まり、ぐったりしています。呼吸はしっかりできています。

通報内容の原文から、氏名、住所、地域、正確な日時など個人を特定し得る情報を省略しました。年齢と性別は事実に基づき残しています。通話音声を直接確認した引用ではありません。

ご家族からは、男の子が寝ているときにけいれんが始まり、約1時間続いたと聞きました。「約1時間」はご家族の説明であり、私自身が発症から連続して観察した時間ではありません。けいれんの開始と終了を時計で計測できたか、途中で動きが弱まった時間があったかまでは確認できていません。

体温計、タオル、水、無記入ノートを準備したAI生成イメージ 発熱時に時刻と状態を記録する準備のイメージです。実際の測定値や家庭用品ではありません。

私たちが到着したとき、男の子は仰向けで、意識は清明でした。泣いており、年齢と泣いている状況から会話での評価は難しい状態でしたが、四肢は動き、明らかな麻痺は見られませんでした。けいれんは止まっていました。

現場で確認できた値は、呼吸数30回/分、脈拍198回/分、SpO2 96%、体温39.2℃でした。血圧は測定できませんでした。測定できなかった理由を、ここで推測して補うことはしません。

熱性けいれんとは何か

熱性けいれんは、主に乳幼児が発熱に伴って起こすけいれんです。ただし、発熱中のけいれんがすべて熱性けいれんとは限りません。髄膜炎、脳炎、てんかん、低血糖など別の原因でもけいれんは起こり得るため、家庭で病名を決めることはできません。

この事案では、病院の初診時傷病名は「熱性けいれん」でした。私たちが現場で観察したのは、発熱、けいれん後の状態、意識、呼吸、脈拍などです。病院の診断と私たちの観察は同じものではありません。

けいれんが5分以上続く、繰り返す、呼吸がおかしい、顔色が悪い、けいれん後も反応が戻らない場合は、すぐ119番へ。口の中へ指や物を入れず、周囲の危険物を離してください。

消防庁のけいれん時の応急手当でも、けいれん中に無理に押さえつけず、口の中へ物を入れないことが案内されています。子どもの発熱で119番か相談窓口かを考える記事も、平時に確認しておいてください。

到着時に止まっていても、時間と変化を確認する

けいれんが止まると、家族は少し安心します。しかし、止まった時刻、呼びかけへの反応、呼吸、顔色、左右の手足の動きは、その後の判断に必要です。

幼い男の子を安全な横向きにしながら電話する架空の父親のAI生成イメージ 安全を確保しながら通報するイメージです。実際の家族、電話画面、処置を再現していません。

私たちは、到着時にけいれんが止まっていることだけで判断せず、意識、呼吸、体温、四肢の動きなどを確認しました。ご家族から聞いた発症時の情報と、私たちが見た接触時の状態を分けて搬送先へ伝えました。

家庭では、できる範囲で次を記録します。

  • けいれんが始まった時刻
  • 全身か、片側だけか
  • 目の向き、手足の動き
  • 止まった時刻
  • 止まったあとの反応、呼吸、顔色
  • 発熱、服薬、直前の体調

動画は診療の参考になる場合がありますが、撮影のために119番や安全確保を遅らせないでください。一人しかいない場合は、撮影より通報と周囲の安全を優先します。けいれんを目撃したときの初動にも同じ考え方をまとめています。

口に物を入れず、押さえつけない

けいれん中に舌をかむことを心配して、割り箸、タオル、指などを口へ入れるのは危険です。歯や口を傷つけ、入れた物が外れなくなったり、呼吸の妨げになったりします。

また、手足を強く押さえる必要はありません。周囲の硬い物や角を離し、頭の下へ薄い物を置き、可能なら安全な場所で見守ります。吐いた場合や唾液が多い場合は、無理のない範囲で体を横向きにし、口元がふさがれないようにします。

家族が玄関と通路を整えて搬送に備えるAI生成イメージ 家族が玄関と通路を整えるイメージです。救急隊や実際の搬送場面ではありません。

けいれんが止まったあとに眠ることはありますが、「寝たから大丈夫」と決めないでください。呼びかけへの反応、胸やお腹の動き、顔色を見ます。判断できない場合は119番の指令員へ、そのまま「分からない」と伝えます。

119番では、見た事実を時系列で伝える

長く感じたときほど、家族は混乱します。「けいれんした」だけでなく、最初と今を分けると伝わりやすくなります。

たとえば、「寝ているときに始まった」「全身が硬くなった」「開始は○時ごろ」「今は止まっている」「呼吸はある」「呼びかけへの反応はこう」と順番に伝えます。正確な秒数が分からなければ、分かる範囲で構いません。

119番で伝える7項目を、家族で一度確認しておくと役立ちます。救急車を待つ間は、玄関を開け、保険証やお薬手帳を準備し、ほかの家族がいれば誘導を頼みます。救急車を待つ間に家族ができることにも準備をまとめています。

無記入のノートと時計のそばで経過を整理するAI生成イメージ 開始時刻と変化を記録するイメージです。実際の時刻、患者情報、診療記録は表示していません。

この事案で確認できたこと、できていないこと

病院の初診時傷病名は熱性けいれんで、重症度は軽症、帰宅となったことは確認できました。一方、その後にけいれんを繰り返したか、追加検査の内容、長期的な経過は確認できていません。

ご家族が説明した約1時間という長さと、病院の初診時傷病名だけから、けいれんの型や原因を私が断定することもできません。到着時に意識が清明だったことも、「長く続いたという説明が間違い」と決める材料にはなりません。発症時を見た家族の情報と、接触時に私たちが確認した状態の両方を伝えることが大切です。

到着時にけいれんが止まっていても、始まりからの経過は消えません。家族は安全を確保し、時間と変化を119番へ伝える。私たちは、その情報と接触時の観察を分けて医療機関へつなぐ。それが、この現場から改めて伝えたいことです。

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

関連記事

目の前でけいれんが始まったら——「口に物を入れない」「押さえつけない」は、国の指針にそう書いてあります
家族を守る

目の前でけいれんが始まったら——「口に物を入れない」「押さえつけない」は、国の指針にそう書いてあります

続きを読む →
「いたずらかもしれない」それでも探す|未明の公衆電話からの無言通報
事案から学ぶ

「いたずらかもしれない」それでも探す|未明の公衆電話からの無言通報

続きを読む →

記事内容に誤りを発見された場合はこちらからご連絡ください(訂正依頼を選択してください)

現役救命士 hiro のアバター

この記事の執筆・監修

現役救命士 hiro

救急の現場から、家族を守るための情報を発信しています

患者さんとご家族のプライバシーを守るため、本名・所属・勤務地域は公開していません。 記事は総務省消防庁・厚生労働省などの公的な一次資料の原文を確認したうえで書き、 出典は各記事の末尾にすべて記載しています。

運営者・監修者について →