傷病名は「失神」でした——観戦中に倒れ、後頭部を打った中学1年生。まわりの人にできるのは「頭を動かさないで」と伝えることでした

傷病名は「失神」でした——観戦中に倒れ、後頭部を打った中学1年生。まわりの人にできるのは「頭を動かさないで」と伝えることでした

バスケットボールの試合を観戦していた中学1年生の女子が、約1分間意識を失って倒れ、後頭部を打ちました。救急隊が着いたときには意識がはっきりしていて、首の後ろの痛みを訴えていました。『救急蘇生法の指針2025(市民用)』は、意識のはっきりしている人には「自分で頭を動かさないように伝え、救助者が頭を支える必要はありません」と書き、頸椎カラーは「自己判断で使用することは避けてください」としています。現役救急救命士が原文で解説します。

今日は、試合を観ていて倒れ、頭を打った中学生の話をします。傷病名は、病院で付いた「失神」でした。

この記事の中心は、失神の原因ではなく、倒れて頭を打ったあと、まわりの人は何をするかです。救急隊は首にネックカラーを巻きましたが、市民がまねしてはいけません。

この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢は幅で、場所や日付は書きません。救急隊は診断をしません。ここに出てくる傷病名は、病院で付いたものです。

観客席のある、誰もいない体育館 倒れたのは、プレーをしている人ではなく、観ている人でした(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 意識がはっきりしている人には、「自分で頭を動かさないで」と伝えます
  • 頸椎カラー(首を固定する器具)は、市民が自己判断で使いません
  • 失神は、意識が戻っても病院へ。頭を打ったなら、なおさらです

1. 傷病名——観戦中の約1分間の意識消失でした

通報したのは、その場にいた他校の部活動指導者でした。

中学1年生女子。バスケットの観戦中に急に倒れて意識がない。呼吸あり。倒れた際に後頭部を打った。意識は回復したが会話不能。

観客席で試合を観ていたときに約1分間、意識がなくなり、倒れたときに後頭部を打ちました。着いたときの様子です。

  • 観客席に仰向けで、意識ははっきり(JCS 0・GCS 15)
  • 訴えは首の後ろの痛み(持続する痛み)
  • 外傷なし。頭痛もめまいもなく、手足の麻痺やしびれもなし
  • 呼吸18回、脈83回、血圧118/82、SpO2 100%、体温36.6℃、心電図は洞調律
  • 2年前にも同様の症状があり、病院を受診したが脳波に異常はなかったとのお話

ネックカラーを装着して搬送しました。同乗はお父さん。結果は帰宅、傷病名は「失神」で、担当は小児科の医師でした。

通報の言葉と着いたときの様子は違いますが、通報はそのときの様子をそのまま伝えたものです。

『MSDマニュアル家庭版』は、失神をこう書いています。

失神(気絶)は、突然生じる短時間の意識の消失で、地面に倒れたり椅子の上で崩れ落ちたりした後、意識が回復します。

原因は記録になく、2年前の受診と結んで病名を考えることはしません。

バスケットゴールのリムとネット 意識が戻っても、それで終わりではありません(写真はイメージです)


2. 症状のサイン——倒れて頭を打ったら、見るのは「意識」と「首」です

『救急蘇生法の指針2025(市民用)』の「首の安静」(54ページ)を読みます。

自動車にはねられたり、高所から落ちた場合、あるいは顔や頭に大きなけががある場合、首の骨(頸椎)を痛めている可能性があります。このような場合には傷病者の首の安静を保つ必要があります。

例は、事故、転落、顔や頭の大きなけがです。この子に外傷はありませんでしたが、後頭部を打ち、首の後ろが痛い。どこからが「大きなけが」か、そばにいる人には決められません。(私の読みです。)

意識がはっきりしているとき

意識のはっきりしている傷病者に対しては自分で頭を動かさないように伝え、救助者が頭を支える必要はありません。

「自分で頭を動かさないで」と伝える。支えなくていい、と書かれています。

意識がはっきりしないとき

意識がはっきりしない傷病者に対しては、傷病者の頭を手でやさしく支え、首が大きく動かないようにします(図40)。頭を引っ張ったり、曲がっている首を戻そうとしたりせず、そのままの位置で保持します。

意識がはっきりしているかどうかで、手順が変わります。

頸椎カラーは、市民が使うものではありません

今回、私たちはネックカラーを装着しました。指針は、こう書いています。

頸椎を固定する器具の一つに頸椎カラーがありますが、装着する際に頸椎の損傷を悪化させるおそれがあるため、自己判断で使用することは避けてください。

市民は、固定しなくていいということです。

並んだ観客席 救急車が来るまでの間、まわりの人ができることは多くありません。それで十分です(写真はイメージです)


3. 受診の判断——消防庁の判断基準に、「失神」の語はありません

消防庁のリーフレット

「救急車利用リーフレット」のこども(15歳以下)のページには、頭の欄に「頭を強くぶつけて、出血がとまらない、意識がない、けいれんがある」があります。ただ、全9ページに「失神」「気を失う」の語はありません。

Q助は、年齢で聞き方が変わります

「全国版救急受診アプリ(Q助)」は、最初に「大人(16歳以上)」か「こども」かを選びます。中学1年生は「こども」です。

こどもの「頭・首のけが」には、こんな設問があります。

2.けがをした後に 〔または 〕けがをした時に5秒以上の意識消失がありましたか? 7.首の後ろをさわると痛がりますか?

どちらも脳神経外科につながる設問で、次の画面で「血が止まりにくい」「1歳未満」などに当てはまらなければ、結果は「2時間をめやすに病院に行かれたほうが良いでしょう」です。(現場所見を当てはめた私の読み取りで、実際にアプリを使った記録ではありません。)

通報の時点の「会話不能」なら、前置きの「しっかりと受け答えが出来ますか?」が「いいえ」になり、「意識がおかしい」の「6.頭を打った後ですか?」で「いますぐ救急車」です。

大人(16歳以上)の「頭のけが」は、最初の設問が「1.意識をなくしましたか?」で、13項目すべてが「いますぐ救急車」です。Q助に「失神」という症状名はありません。

意識が戻っても、病院へ

指針の「失神」(50ページ)には、こうあります。

失神は命の危険がある病気の症状の一つでもあるので、意識が戻っても病院を受診するようにします。

MSDも、警戒すべき徴候に「失神の結果として生じた重大な外傷」を挙げています。

色づいた木々と校舎 「元気になったから」は、受診しない理由になりません(写真はイメージです)


4. 家族へ——観ていた人が、倒れたとき

① まわりの人がすること

  1. 119番に電話する。倒れたこと、意識の様子、頭を打ったことを、見たままに
  2. 意識がはっきりしているなら、「頭を動かさないで」と伝える。支えなくて構いません
  3. 意識がはっきりしないなら、頭を両手でやさしく支え、首が大きく動かないようにする。引っ張らない、曲がった首を戻さない(反応がなく普段どおりの呼吸がないときは、先に心肺蘇生です)
  4. ネックカラーなどの固定の道具は使わない。救急隊に任せる

② 救急隊に伝えること

  • 倒れたときの様子
  • 頭を打ったか、どこを打ったか
  • 以前にも同じことがあったか

MSDは、医師が「以前に起きためまいや失神について質問し」と書いています。今回も、2年前のことが記録に残っていました。

失神そのものは、運動中の失神と10代の立ちくらみの記事で別の角度から書きました(今回の方に当てはまるという記録はありません)。ネックカラーの別の事案は肩の骨折の記事、頭を打ったあとの経過はこちら。迷う段階なら♯7119も。

学校の玄関ホールと下足箱 同乗したのは、お父さんでした(写真はイメージです)

この記事で書かなかったこと

  • 失神の原因——記録にありません。2年前の受診歴から病名は決められません
  • 頸椎カラーの使い方——市民向けの手順ではないので書きません

まとめ

  • 傷病名は「失神」。観戦中に約1分間意識を失い、後頭部を打ち、首の後ろが痛い状態でした
  • 意識がはっきりしている人には「自分で頭を動かさないように伝え、救助者が頭を支える必要はありません」。はっきりしない人には頭をやさしく支えます
  • 頸椎カラーは「自己判断で使用することは避けてください」
  • リーフレットにもQ助にも「失神」の語はありません。意識が戻っても病院へ

家庭に置いておきたい備え

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参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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救急のリアル 編集部

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