体重の増え方が、教えてくれることがあります——傷病名は「うっ血性心不全」。記録に残っているのは、傷病名と「重症」、それだけです

体重の増え方が、教えてくれることがあります——傷病名は「うっ血性心不全」。記録に残っているのは、傷病名と「重症」、それだけです

初診時の傷病名は「うっ血性心不全」、重症度判定は「重症」。それ以外の記録はありません。うっ血とは、体に水がたまること。MSDマニュアル家庭版は「1日当たり約1キログラム以上の体重増加は、体液の貯留を示す早期の警告」と書き、日本心臓財団は指で押すと圧痕が残るむくみの特徴を説明しています。現役救急救命士が一次資料の原文で、家で気づける水のサインを解説します。

今日は、うっ血性心不全の話をします。

この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢は幅で、場所や日付は書きません。救急隊は診断をしません。書く傷病名は、現場で疑ったもの、または受け入れ先の初診時の診断名です。

朝の光が差し込むベッド 記録は、傷病名と重症度、それだけでした(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • 「うっ血」とは、体のどこかに水(体液)がたまることです。むくみとして脚に出ることもあれば、肺にたまって息苦しさになることもあります
  • 体重は、むくみより先に増えることがあります。MSDは「1日当たり約1キログラム以上の体重増加」を早期の警告としています
  • 横になると苦しい、夜中に息苦しくて目が覚める——これも「水」のサインです

1. 傷病名——記録は「うっ血性心不全」と「重症」だけです

記録は、この3つだけです。

  • 初診時の傷病名:うっ血性心不全
  • 重症度判定:重症
  • 収容先:三次救急指定病院・急性期病院(入院中)

年齢、性別、発症の経過——それらの記録は今回はありません。想像で埋めません。書けるのは、この3つの事実と、そこから確認できる一次資料だけです。「うっ血性心不全」という診断名は、心臓のポンプ機能が落ち、体のどこかに水(体液)がたまった状態を意味します。

夜の寝室に重ねた枕 体重は、毎日同じ条件で測るとサインになります(写真はイメージです)


2. 「うっ血」とは何か——体に水がたまるということ

『MSDマニュアル家庭版』は、心不全をこう説明しています。

心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 (MSDマニュアル家庭版「心不全」)

「うっ血」とは、血液や体液が静脈や肺の中で流れずにたまることです。たまる場所によって脚のむくみになったり、肺の水になったりします(脚のむくみが無くても肺に水がたまることがある事案はこちらに書きました)。

消防庁のリーフレット『救急車を上手に使いましょう』の「胸や背中」欄は、突然の激しい痛みなど急に起こる症状が中心で、「むくみ」「体重」「尿」という言葉は全9ページのどこにも出てきません。うっ血は急にではなく数日かけて進みます。だからこそ家庭での気づきが要になります。

洗面所のタイルの床 水は、急にではなく、数日かけてたまることが多いといいます(写真はイメージです)


3. 受診の判断——家で気づける水のサイン

① 体重は、むくみより先に増えることがあります

MSDには、測り方まで書かれています。

体にたまった体液の量を調べる簡単で信頼性の高い方法は、毎日体重を測ることです。(中略)毎日同じ時間に同じ体重計を使い、同じような重さの服を着て体重を測り、毎日の体重を記録すれば、体重の変化の傾向を簡単に把握できます。1日当たり約1キログラム以上の体重増加は、体液の貯留を示す早期の警告です。 (MSDマニュアル家庭版「心不全」)

同じ時間・同じ体重計・同じ服。どこから連絡するかは、必ず主治医と決めておいてください。

② 横になると苦しい、夜中に息苦しくて目が覚める

夜間の様子も、同じページにあります。

重度の左心不全がある人では、横になると息切れがすることがあり(起座呼吸)、これは重力によってより多くの体液が肺に移動するためです。そのため、患者はよく目を覚まして、あえいだり喘鳴(ぜんめい)を起こしたりします(この状態を発作性夜間呼吸困難といいます)。上体を起こすと体液が肺の底部に移動するため、呼吸が楽になります。 (同)

夜中に目が覚めて、あえぐように息をしている。「暑いのかな」で済ませず、息苦しさがないか確認してください。

③ 足やすねのむくみ——指で押したあとが残るとき

日本心臓財団「高齢者の心不全」は、むくみの特徴をこう説明しています。

また、「むくみ」や「体重増加」も心不全の前兆です。心臓の機能が低下すると、血液の流れが悪くなり、体全体に水が溜まりやすくなります。水分がまわって腫れる症候であるむくみは、「浮腫」ともいわれ、体を起こしているとたまった水は下半身に移動するため、通常は下肢に見られます(写真1)。心原性の浮腫では、浮腫のある部分、例えばすねや足の甲を指で押さえつけると、そのままへこみ、圧痕が残るという特徴(圧痕性浮腫:pitting edema)がみられます(写真2)。浮腫が進むとたまった水分の分だけ体重も増加します。 (日本心臓財団「心不全の初期サイン-早期発見のために-」。※写真1・2は同ページ掲載の写真で、この記事の写真とは別のものです)

同じページは、こうも書いています。

理由なくむくみが出たり、短期間で体重が増えたりした場合は、早めの対処を心がけてください。 (同)

すねや足の甲を指で押して、跡が残るかどうか。靴下のゴムの跡がいつもより深いのも同じサインです。

木の台に置かれた水のグラス 靴下の跡がいつもより深いのも、同じサインです(写真はイメージです)

④ 尿の量と色

消防庁の「全国版救急受診アプリ(Q助)」には、「動悸(胸がドキドキする)」という入口もあります。最初の画面の項目です。

8.尿の量が減ったり、尿の色が濃くなったりしていますか?

当てはまれば「いますぐ救急車を呼びましょう」。「どれにもあてはまらない」を選んだ次の画面には、こうあります。

7.体重が増えていますか? 〔または〕 むくみがひどいですか?

こちらを選ぶと、次に「高齢者(65歳以上)ですか?」「歩くことができない状態ですか?」と聞かれ、どちらかに当てはまれば「いますぐ救急車」、当てはまらなければ「2時間をめやす」です。同じ「水」のサインでも、尿の変化はその場で「いますぐ救急車」、体重とむくみは年齢や動けるかどうかと組み合わせて判定されます。

まとめると、むくみ・体重増加は「早めの対処」(日本心臓財団)、横になると息苦しい・夜中にあえぐのは悪化のサイン(MSD)です。迷うときは医療機関や♯7119へ。

カーテン越しの朝の光 「早めの相談」と「いますぐ救急車」は、サインによって分かれます(写真はイメージです)


4. 家族へ——記録のしかたと、救急車を呼ぶ線引き

記録するのは、この3つだけで十分です。

  • 毎日、同じ時間・同じ体重計で測った体重
  • すねや足の甲を指で押して、跡が残るかどうか
  • 夜、横になって苦しくなかったか

多くを記録しなくていいです。救急隊には「もともと心不全がある」「体重がここ数日で増えた」「今夜、横になって息苦しくなった」の3つで十分です。

心不全と間違えやすい、繰り返す過換気の見分け方はこちらに、かぜのあとに出る心筋炎はこちらに書きました。かかりつけと救急外来どちらに相談するか迷ったらこちら、判断に迷う段階なら♯7119もあります。

この記事で書かなかったこと

  • 年齢・性別・発症の経過、その後の治療内容——記録は傷病名と重症度、収容先の3つだけです
  • 「何kg増えたら受診」という独自の基準——「1日当たり約1キログラム」以外の数字は作っていません
  • 利尿薬など、薬の使い方や量の調整——医師が決めることです

まとめ

  • 「うっ血」とは、心臓のポンプ機能が落ちて静脈や肺に血液・体液がたまること(MSD「心不全」)
  • 体重はむくみより先に増えることがあります。「1日当たり約1キログラム以上の体重増加は早期の警告」(同)
  • 横になると息苦しい、夜中にあえいで目が覚めるのは悪化のサイン(同・発作性夜間呼吸困難)
  • すねや足の甲を指で押して跡が残るのが「圧痕性浮腫」。理由なくむくみが出たら早めの対処を(日本心臓財団)
  • Q助の「動悸」ツリーでは、尿の変化は最初の画面で「いますぐ救急車」、体重増加やむくみは次の画面で循環器内科への受診案内

窓辺に置かれたマグカップ 毎日同じ時間に、体重と足を見る。それが、いちばん早いサインになります(写真はイメージです)

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

この記事の内容に関係する備え。

  • 体重計(100g単位表示) — MSDが「毎日体重を測ることです」と書いている、その道具です。100g単位で見られるものを
  • 体調記録ノート — 体重と、むくみ、夜の様子を1行ずつ。家族や訪問する人とも共有できます
  • 血圧計(検索リンク) — かかりつけ受診では血圧も一緒に見ます。ご家庭にある形を主治医と確認しておくと安心です

Amazonのアソシエイトとして、救急のリアルは適格販売により収入を得ています。

参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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救急のリアル 編集部

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