ボールが指に当たって、突き指をした。今日はその話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。典型的な形としては——球技の最中に指先にボールが当たり、痛くて腫れてきたけれど、動かせるから冷やして様子を見た。数日たって腫れは引いたのに、その指の先だけが少し曲がったままで、自分では伸ばせない、という形で起こります。
救急の現場で「指くらいですから」と言われたけがのなかに、あとから長く困るものが混じっているのを見てきました。この記事で見ていただきたいのは、ひとつだけです。痛めた指の先が、自分の力で伸びるかどうか。
力を抜くと、指は自然に少し曲がります。見ていただきたいのは、そこから自分の力でまっすぐに伸ばせるかどうかです(イメージ写真です)
突き指のあと、指先が伸びない
痛くて腫れている。そこまでは、よくあることです。見ておきたいのは、その先です。
『MSDマニュアル家庭版』の「つち指」(最終更新2025年10月)から。
つち指は、指先が下方に曲がって伸ばせなくなった状態です。通常は腱の損傷が原因でつち指になります。 (MSDマニュアル家庭版「つち指」)
けがをした直後に見えるものは、こう書かれています。
通常、けがをした直後から指に痛みと腫れがみられ、あざができます。関節が曲がったままになり、伸ばすことができなくなります。ときに、爪の下に血液がたまることがあります(爪下血腫)。 (MSDマニュアル家庭版「つち指」)
痛み、腫れ、あざ。ここまでは、ただの突き指でも同じです。違うのは「関節が曲がったままになり、伸ばすことができなくなります」のところです。
確かめ方に気をつけてください。曲がった指先は、反対の手で押せばたいてい伸びます。見るのは、痛めた指の力だけで、指先がまっすぐになるかです。
「パチン」という音と、痛みの出方
同じMSDの「ねんざとその他の軟部組織損傷の概要」には、家族が気づけるサインが2つあります。
例えば、当人がパチンまたはポンッなどという音がしたと報告した場合は、靱帯や腱の損傷(または骨折)が起きている可能性があります。 (MSDマニュアル家庭版「ねんざとその他の軟部組織損傷の概要」)
負傷した直後から痛みがある場合は、重度のねんざが起きている可能性があります。数時間から数日経ってから痛みが始まる場合は、軽度のけがであることが多いです。 (MSDマニュアル家庭版「ねんざとその他の軟部組織損傷の概要」)
音がしたかどうかは、本人しか知りません。聞いてあげてください。
音がしたかどうかは、そばで見ていた人には分かりません。本人に聞いてください(イメージ写真です)
「つち指」とは
通常、つち指は、指先で骨と筋肉をつないでいる腱が断裂したときに起こります。この腱(伸筋腱)は、指先をまっすぐに伸ばす役割があります。通常、指先を正常な範囲を超えて曲げる力がかかると腱が断裂します。一般的な原因は、野球のボールが指先を直撃して突き指することです。そのため、つち指は野球指と呼ばれることがあります。 (MSDマニュアル家庭版「つち指」)
伸筋腱(指先をまっすぐに伸ばす腱)が切れる。だから、自分では伸ばせなくなる。原因に挙げられているのは、ボールが指先を直撃する突き指です。「野球指」という別名があるくらい、突き指から起こるけがだということです。
骨がはがれることもある
腱が断裂するときに、指から骨片が引き剥がされることがあります(剥離骨折)。剥離骨折が起こると、患部の骨端(関節面)の軟骨も骨折します。 (MSDマニュアル家庭版「つち指」)
腱が骨のかけらを引き剥がしていくことがあり(剥離骨折)、ときに関節の脱臼も起こると書かれています。見えているのは腫れた指先でも、中で起きているのは腱と骨と関節の話です。診断は医師の診察と、骨折の有無を調べるX線(レントゲン)検査で、多くの場合は複数の角度から撮ります。
治療は、副子を6〜8週間
医師は患者の指を伸ばし、副子をあて、わずかに上向きに反らせて(伸ばした状態で)固定します。副子は6~8週間装着します。 (MSDマニュアル家庭版「つち指」)
6〜8週間。副子(患部を動かないように固定する当て板)をあてるのは医師で、あてる形も「わずかに上向きに反らせて」と決まっています。
治療は、指先を伸ばした状態のまま数週間保ち続けることです。冷やして二、三日おとなしくしていれば終わる、という手当てとは、やっていることが違います。固定されないまま過ごせば、曲がった指先はその形のまま残りえます。あとから「やっぱり伸びない」と気づいたとき、過ぎた週数は取り戻せません。
手術になることもあります。
まれに、骨折が関節面の広い部分に及んでいる場合や、関節が脱臼している場合は、手術が必要です。 (MSDマニュアル家庭版「つち指」)
家庭でやってよいのは、冷やすところまで
『救急蘇生法の指針2025(市民用)』の「14 捻挫、打ち身(打撲)、骨折」から。
捻挫や打ち身(打撲)は、冷却パック・氷水などで冷やします。けがをした部位の冷却は内出血や腫れを軽くします。冷却パックを使用する際には、皮膚との間に薄い布などを挟んで直接当たらないようにしてください。 (日本救急医療財団「救急蘇生法の指針2025(市民用)」「14 捻挫、打ち身(打撲)、骨折」)
冷やす。皮膚に直接当てず、薄い布を挟む。家庭の手当てとして書かれているのは、そこまでです。指を引っ張る、まっすぐにする、添え木やテープで固定する——この記事では、そのやり方を書きません。固定は、診察とX線のあとに医師が形を決めてあてる治療だからです。なお、この指針の全69ページに「つち指」「突き指」「腱」という言葉は出てきません。冷やし方の原則として読んでください。
冷やすときは薄い布を挟んで、皮膚に直接当てないようにします(イメージ写真です)
模型です。指先は、いちばん先の関節ひとつで持ち上がっています。そこを動かす腱が切れると、自分では上がらなくなります(イメージ写真です)
家庭でできるのは、冷やすところまでです。固定は診てもらってからになります(イメージ写真です)

