夏休みになると、子どもに関する救急要請が増えます。
外遊びの時間が長くなり、プールや自転車、虫との接触も増える。ふだんは元気なお子さんが、思わぬかたちで急変することがあります。
この記事では、救急救命士の視点で、夏休みの子どもに多い5つの場面について、家庭でできる応急処置と「迷わず119番を押すライン」をお伝えします。架空の事例ではなく、一般的な知識として、ご家族に知っておいてほしいことをまとめました。
夏休みは子どもの活動が増える分、事故も増えます。「もしも」を知っておくことが備えになります
① プール・水の事故——水を吐かせず、すぐに心肺蘇生
プールや川、家庭用プールでの溺水(できすい)は、夏に増える重大な事故です。
子どもが水から引き上げられ、反応がなく、ふだんどおりの呼吸がないとき。多くの方が「まず水を吐かせなきゃ」と思いがちですが、これは危険です。
消防庁は、溺れた人のお腹を圧迫して無理に水を吐かせてはいけないとしています。吐いた水が気管や肺に入る危険があり、水を出すことに時間を使わず、ただちに心肺蘇生を始めることが大切だからです。
家族の初動
- 反応を確認し、大声で助けを呼び、誰かに119番通報とAEDの手配を頼む
- ふだんどおりの呼吸がなければ、すぐに胸骨圧迫を開始する
- 胸の真ん中を、胸の厚さの約3分の1沈む強さで、1分間に100〜120回のテンポで押す。胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返す
- 途中で水を吐いたら、顔を横に向けて口の中の水を出し、また蘇生を続ける
水の事故は「静かに起こる」もの。目を離さないことが最大の予防です
② 自転車事故・頭を打った——「いつもと違う」を見逃さない
自転車での転倒や、頭をぶつける事故も夏に増えます。頭を打ったあと、様子を見てよいのか、すぐ受診すべきか——判断のポイントをお伝えします。
すぐに救急車・至急受診すべきサイン(こども家庭庁・小児脳神経外科の資料より)
- 意識がない、受け答えがはっきりしない、ぼんやりして視線が合わない、起こしても起きない
- 繰り返し吐く
- けいれんを起こした
- 顔色が悪く、ぐったりして元気がない(乳児は「いつもと違う」が最も大切なサイン)
- 耐えられないほど強い頭痛
- 耳や鼻から血や透明な液が出る、ぶつけた所が大きく凹む・強く腫れる
これらがなくても、頭を打った後の約24時間、特に最初の6時間は変化が起きやすいとされます。子どもを一人にせず、様子を見てください。元気そうでも1〜2日は安静に。
なお、2023年4月から、自転車に乗るすべての人にヘルメット着用の努力義務が課されました。保護者は、子どもにヘルメットをかぶらせるよう努めることとされています(道路交通法・警視庁)。頭を守る一番の備えです。
ヘルメットは「かぶっていれば防げた」を減らします。習慣づけを
③ 熱中症——汗・意識・歩き方の変化に注意
子どもは体温調節の機能が未熟で、身長が低いぶん地面からの照り返し(放射熱)の影響も受けやすく、大人より熱中症になりやすいと環境省は説明しています。
すぐに119番のサイン
- 意識がおかしい、呼びかけへの反応が鈍い
- 自分で水分をとれない
- まっすぐ歩けない、ぐったりしている
- けいれんしている
家族の初動(環境省の応急処置)
- 涼しい場所(できれば冷房の効いた室内や日陰)へ移す
- 衣服をゆるめ、脱がせて熱を逃がす
- 首・わきの下・太もものつけ根など、太い血管が通る場所を冷やす
- 水分と塩分を補給する。大量に汗をかいたときは、塩分を含む経口補水液やスポーツドリンクが適しています
ただし、自分で水分をとれない・意識がおかしいときは、無理に飲ませず、ただちに救急車を呼んでください。
「まだ遊びたい」で無理をしがちな子ども。大人が休憩と水分を促してあげてください
④ 誤飲——「何を飲んだか」で対応が変わる
小さな子どもは、何でも口に入れます。誤飲は、飲んだものによって対応がまったく変わるのが難しいところです。
子どもの手が届く場所に、小さなもの・危険なものを置かないことが第一の予防です
とくに急ぐもの:ボタン電池
コイン形のボタン電池は、飲み込むと食道にとどまった短い時間で周囲の組織を傷つけ、穴があくことがあります。吐かせず、何も飲ませず、大至急受診してください。
ボタン電池は誤飲事故の中でも特に危険。飲んだ疑いがあれば一刻を争います
種類別の対応(日本中毒情報センター)
- たばこ:口の中のたばこは取り除く。水も牛乳も飲ませない(水分でニコチンが溶け出し、かえって吸収されやすくなるため)
- 家庭用洗剤・漂白剤・トイレ洗浄剤:吐かせず、無理のない量の水か牛乳を飲ませる
- 灯油などの石油製品:吐かせず、水も牛乳も飲ませない(気管に入ると肺炎の危険)
- 吐かせてはいけないもの:強い酸・アルカリ、石油製品、とがったもの、ボタン電池、そして意識がない・けいれんしているとき
意識がない・けいれん・ぐったりしているときは、何も飲ませず、ただちに119番です。
判断に迷ったら、中毒110番に電話相談できます(いずれも365日24時間・一般の方は無料)。
- 大阪中毒110番:072-727-2499
- つくば中毒110番:029-852-9999
- たばこ誤飲専用(自動音声):072-726-9922
※誤飲の予防と対応は、子どもの誤飲・誤嚥の記事でも詳しくまとめています。
ハチに刺されたら、針が残っていれば取り除き、冷やして安静に。過去にひどく腫れた人は早めに受診を
「呼ぶほどかな」と迷ったら、それはもう呼んでいいサインです
「呼ばなければよかった」より、「呼んでよかった」のほうが、はるかにいい結果です
ケガや事故なく、笑顔で過ごせる夏を

