「発作が止まった」と「もう大丈夫」は、同じではありません——傷病名は「てんかん発作」。家に帰ってからの話です

「発作が止まった」と「もう大丈夫」は、同じではありません——傷病名は「てんかん発作」。家に帰ってからの話です

記録に残っているのは、初診時の傷病名が「てんかん発作」だったこと、重症度判定が「重症→軽症(帰宅)」に変わったこと、運ばれた先が三次救急指定病院だったこと、この3つだけです。年齢も経過もわかりません。この記事は、発作そのものではなく、帰宅したあとの暮らしの話です。てんかん情報センターは入浴中の発作について「浴槽は危険な場所のひとつ」と書き、MSDマニュアル家庭版は「突然意識を失った場合に重篤な外傷が起こるような活動」を控えるよう説明しています。現役救急救命士が一次資料の原文で解説します。

今日は、発作が止まったあとの話をします。

この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢や経過の記録はなく、書きません。救急隊は診断をしません。ここに書く傷病名は初診時につけられたものです。発作そのものへの対応(口に物を入れない・押さえつけない・時刻を見る)は別の記事に書きました。この記事は、家に帰ってきたあとの話です。

朝の光が差し込む和室の窓辺 帰ってきたあとの暮らしにも、見ておく場面があります(写真はイメージです)

先に、3つだけ

  • お風呂は、てんかん情報センターが「浴槽は危険な場所のひとつ」と書く場所です。「入るな」ではなくシャワーや声かけの工夫が示されています
  • 突然意識を失うと重いけがにつながる活動は、コントロールできるまで控えるようMSDマニュアル家庭版が説明しています
  • 運転免許は条件を満たせば取得・更新できます。判定するのは主治医と公安委員会で、私たちではありません

1. 傷病名——記録は「てんかん発作」と「重症→軽症(帰宅)」だけです

この事案の記録に残っているのは、初診時の傷病名が「てんかん発作」だったこと、重症度判定が「重症→軽症(帰宅)」だったこと、運ばれた先が三次救急指定病院だったこと、この3つだけです。年齢も性別も経過もわかりません。わかっているように書くことはしません。

この記事は、帰宅したあと家で何を見るかを書きます。

手すりのある家の階段 階段や段差も、帰ってからの暮らしの一部です(写真はイメージです)

2. てんかん発作とは——最小限だけ

てんかん情報センター(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター運営)は、こう説明しています。

てんかん発作とは、脳の神経細胞の過剰なあるいは同期性の異常活動のために生じる一過性の症状です。 てんかんとは、てんかん発作を反復して生じる脳の状態に加え、その神経学的、認知的、心理的、社会的な影響を随伴することのある脳の病気です。 (てんかん情報センター「てんかん発作とは?」)

「反復して生じる」——一度の発作だけでは、この言葉は満たされません。けいれんがてんかん以外でも起こることや診断の進め方はこちらの記事に書きました。ここではそこから先の暮らしの話に進みます。


3. 家に帰ってから——お風呂・家の中・ひとりの時間

① お風呂

てんかん情報センターの「入浴」の項目は、入浴が欠かせない生活行為だとしつつ、こう続けます。

しかし発作を起こして浴槽で溺れたり、浴槽や水道の蛇口などで打撲したりすることがあります。 シャワー浴はもっとも安全です。風呂場には危険な物は置かず整理整頓し、セラピーマットなどを敷いてすべらないようにするとよいでしょう。 発作が頻発している間は、入浴を中止します。どうしても入浴したい場合は、家族の人に一緒に入ってもらうか、そばにいてもらいましょう。 ひとりで入浴する場合は、家族の人に「今からお風呂に入るからね。」と声をかけてから入ることを習慣にしましょう。 熱傷を起こすこともあるので、火を止めてから入浴します。 (てんかん情報センター「入浴に際してはどのような注意が必要ですか?」)

「入浴を禁止する」とは書かれていません。シャワー・滑り止め・声かけ・火を止める——工夫で危険を減らす立て付けです。それでも、こう念を押しています。

けいれん発作だけでなく、ごく軽い意識減損発作でも、溺れて大事に至る場合があります。浴槽は危険な場所のひとつだと認識しておきましょう。

浴室の水栓まわり シャワー浴が、もっとも安全だと説明されています(写真はイメージです)

② 家の中の場面——階段・高いところ・調理の火や刃物

『MSDマニュアル家庭版』の「けいれん性疾患」は、日常生活の調整として推奨される対策を、こう挙げています。

突然意識を失った場合に重篤な外傷が起こるような活動(浴槽につかる、登山、水泳、または電動ドリルの使用など)を控える。 これらの活動は、発作をコントロールできるようになってから(通常は6カ月以上)であれば、十分な予防措置を講じた上で行うことができます。例えば、水泳は監視員がいる場所でのみ行うべきです。 (MSDマニュアル家庭版「けいれん性疾患」)

浴槽・登山・水泳・電動ドリル、この4つが名指しされています。「意識を失った瞬間にけがにつながる高さ・刃物・火」で考えると、階段や調理中の火・刃物にも同じ発想が向くと私は考えています。「使うな」ではなく、予防措置を講じてからという順番です。

③ ひとりでいる時間の工夫

入浴の「声をかけてから入る」という習慣は、お風呂に限りません。家族が今どこにいるかを知っている——それだけで、気づかれるまでの時間が変わります。機器を名指しで勧める公的資料は見当たらず、断定はしません。

机の上の電話 「今からお風呂に入るからね」——それだけの一声です(写真はイメージです)


4. 家族へ——運転や生活の制限は、主治医と決めることです

① 運転免許について、事実だけを書きます

警察庁のウェブサイトに、免許の拒否や取消しの対象となる病気等の一覧があり、てんかんも名前が挙がっています。

発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの 政令では、次のものが定められています。 ア てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除きます。) (警察庁ウェブサイト「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」)

括弧の中の「除きます」が大事なところです。診断名がつけば一律に免許が取れない制度ではありません。

2002年6月の道路交通法改正で、自動車等の安全な運転に支障があるかどうかは個別に判断されることになりました。(中略)てんかんのある人が運転免許を取得するためには、「運転に支障するおそれのある発作が2年間ないこと」が条件です。薬の服用の有無は関係ありません。 (てんかん情報センター「運転免許はとれますか?」)

手続きは、てんかんの病気があることを申告し、主治医に診断書(公安委員会指定)を書いてもらう形です。いつ発作があったか、その先何年ないか——私たちは知りません。判定はしません。決めるのは主治医と公安委員会です。入浴や家の中の活動も同じで、主治医に頻度や種類を伝えて一緒に決めることです。

夕方の窓辺に置かれた椅子 決めるのは、主治医と公安委員会です(写真はイメージです)

② 次に発作が起きたときの記録

次に発作が起きたら、何時何分に始まって何分続いたか、そのあと意識がすぐ戻ったか、ぼんやりしていたか——これだけでも書き残してください。動画の撮り方はこちらの記事に詳しく書きました。


迷う段階なら♯7119も。持病や薬の情報を渡せるようにしておく工夫はこちらに。

台所のかまどまわり 火を使うときは、ひと呼吸おいて(写真はイメージです)

この記事で書かなかったこと

  • 年齢・性別・発作の経過、運転免許の条件に当てはまるか——記録も判定情報もなく、私たちが判定することでもありません
  • 発作の型による生活制限の違い——記録にタイプの情報がなく、扱いません
  • 「何ヶ月・何年なければ大丈夫」という一般化——MSDの「6カ月以上」と免許の「2年間」は別の話です

まとめ

  • 記録は傷病名「てんかん発作」、重症度判定「重症→軽症(帰宅)」、収容先が三次救急指定病院、この3つだけです
  • てんかん情報センターは、入浴について「浴槽は危険な場所のひとつ」としつつ、シャワー浴・滑り止め・声かけ・火を止める工夫を示しています
  • MSDマニュアル家庭版は、「突然意識を失った場合に重篤な外傷が起こるような活動」を、コントロールできるまで控えるよう説明しています
  • 運転免許は「発作が2年間ないこと」などの条件で取得・更新できます。判断するのは主治医と公安委員会です
  • 入浴も家の中の活動も運転も、制限の線を決めるのは主治医です

家庭に置いておきたい備え

ここから先は、記事の内容に関連して家庭に備えておける市販品を紹介しています。治療や診断の代わりになるものではありません。症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。

まず、調べられる本を。

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参考文献

⚠️ 免責事項この記事の情報は一般的な救急知識の情報提供を目的としており、医療行為や医療診断に代わるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。生命の危機を感じる症状は、迷わず119番に通報してください。

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救急のリアル 編集部

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