日が落ちるのが、目に見えて早くなってきました。今日は、この季節に増える歩行者の交通事故の話をします。
この記事は、特定のどなたかの事案の話ではありません。公的な統計と一次資料から、この季節に起きやすい形をまとめました。
日の入りの前後1時間は、視界がいちばん変わりやすい時間です(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 10月以降、交通事故の死者は「歩行中」がいちばん多くなります。それまでは「自動車乗車中」が最多でした
- 日の入り前後1時間(薄暮時間帯)は、自動車と歩行者の死亡事故がもっとも多い時間です。そのおよそ9割が、道路を横断している最中に起きています
- 歩く側の反射材・ライトと、運転する側の早めのライト点灯は、どちらも警察庁が呼びかけている対策です
1. テーマ——日が短くなる時期に何が増えるのか
警察庁交通局「令和8年秋の全国交通安全運動の実施について」(令和8年9月10日公表、令和3〜7年の5年間合計を分析)に、こう書かれています。
交通事故死者数は、秋から年末にかけて増加する傾向 状態別死者数は、3月から9月は「自動車乗車中」が最多、10月以降は「歩行中」が最多 10月以降、夜間の歩行中死者・重傷者数が大幅に増加 歩行中死者・重傷者数は児童は10月が最多、高齢者は12月が最多 (警察庁交通局「令和8年秋の全国交通安全運動の実施について」)
数字(同5年間合計)では、夜間の歩行中死者・重傷者数は9月1,183人から10月1,934人、11月2,539人、12月2,959人と増えます。年齢層別では、児童(小学生)は10月202人、高齢者(65歳以上)は12月3,001人が、それぞれ最多でした。
2. 薄暮の何が危ないのか——見え方と時間帯
警察庁は日の入り前後1時間を「薄暮時間帯」と呼び、こう説明しています。
薄暮時間帯は、例年、交通死亡事故が多く発生しています。この時間帯は、周囲の視界が徐々に悪くなり、自動車や自転車、歩行者などの発見がお互いに遅れたり、距離や速度が分かりにくくなるためです。 (警察庁「薄暮時間帯における交通事故防止」)
何時台が危ないのか。政府広報オンラインはこう説明しています。
令和3年(2021年)から令和7年(2025年)までの5年間について、時間帯別の死亡事故の発生件数をみると、特に17時台、18時台、19時台の3つの時間帯が突出しています。 薄暮時間帯は「自動車対歩行者」が約半数で、最も多くなっています。薄暮時間帯における自動車と歩行者の死亡事故の約9割は、歩行者が道路を横断しているときに発生しています。 (政府広報オンライン「夕暮れ時に歩行者が死亡する交通事故が多発!この時間帯の交通事故を防ぐには?」)
10月から12月の薄暮時間帯の死亡事故は7月~9月の348件から589件へ約1.7倍、自動車対歩行者の死亡事故は157件から316件へ約2.0倍(警察庁)。316件の内訳は横断中が275件(87.0%)、うち横断歩道以外が196件(62.0%)で、法令違反は「横断歩道以外の横断における歩行中死者の約7割」(政府広報オンライン)とあります。
横断歩道の少し先、横断歩道以外の場所での事故が多いというデータがあります(写真はイメージです)
事故が起きる場所については、国土交通省道路局の資料(ITARDA・平成30年データ)に「歩行中・自転車乗用中の死者数の約半数が自宅から500m以内で発生」(同「生活道路対策について」)ともあります。
3. 避けるには——反射材・ライト、歩く側と運転する側
歩く側にできることです。
反射材とは、受けた光を、光が来た方向に強く反射する素材をいいます。反射材用品には、靴や杖、カートにつけるシールやキーホルダーのほか、足首・手首のバンド、たすきなど様々なものがあります。 (同)
横断のしかたです。
横断歩道が近くにあるところでは、横断歩道を横断する。(中略)道路を斜めに横断しない(横断距離、時間が長くなり危険)。進行中や停車中の自動車等車両の直前又は直後を横断しない(左右の見通しがきかず危険)。 (同)
夜間、信号のない場所の横断は「左からの車」にも注意です。「(道路横断中の死亡事故は)…歩行者が横断中に左方向から進行してくる車両と衝突する事故が多く、特に夜間に高齢者がこのような事故に遭うケースが多いです」(同)とあります。
運転する側には、こうあります。
自動車運転者は前照灯の早め点灯を行うとともに、歩行者や自転車利用者は明るい服装をしたり、反射材・ライトを活用し、自分の存在を周囲に知らせるようにしましょう。 (警察庁「薄暮時間帯における交通事故防止」)
政府広報オンラインは、横断歩道手前での減速不足も指摘し、ハイビームの活用や路面の「ダイヤマーク」(先に横断歩道がある標示)への注意も呼びかけています。
反射する光が、車から見つけてもらう頼りになります(写真はイメージです)
4. 目の前で起きたら——まず自分の安全、119番、その後
もし目の前で歩行者が車にはねられるのを見てしまったら。救急蘇生法の指針2025 市民用は、まず何よりも先にすべきことをこう書いています。
傷病者を助ける前に、自分自身の安全を確保することを優先してください。自分が交通事故や火事などに巻き込まれる危険がある場合には傷病者に近づかず、警察や消防の到着を待ったほうがよいこともあります。 (救急蘇生法の指針2025 市民用)
次にすることも指針にあります。
「誰か来てください!人が倒れています!」などと大声で叫んで応援を呼んでください。そばに誰かがいる場合は、その人に119番通報をするよう依頼します。また近くにAEDがあれば、それを持ってくるよう頼みます。 (同)
「あなた、119番通報をお願いします」と、指をさして頼むほうが伝わりやすいとあります。誰も来なければ自分自身で119番通報します。危険な場所に傷病者がいる場合は、「ファーストエイド」の章に「車が通る路上など危険な場所に傷病者がいる場合は安全な場所に移動させますが、救助者自身の安全を確保することを優先してください」とあります。
消防庁リーフレット「救急車を上手に使いましょう」(令和7年12月発行)も「事故」の欄におとな・高齢者・こども共通で「交通事故にあった(強い衝撃を受けた)」を挙げ、迷わず119番、という位置づけです。「Q助」にも頭や首のけがの設問に「大きな力が加わるような形でぶつかりましたか?(1メートル以上の高所から落ちた、車に轢かれたなど)」があり、当てはまると緊急度の高い判定に進みます。
この記事で書かなかったこと
- 「〇時台がもっとも危ない」という単独の断定(資料は17〜19時台の突出まで)と、けが人を動かしてよいかどうかの一律の判断(指針2025は「まず自分自身の安全」までを示し、その場の判断は状況によります)
街灯がつくころ、見え方は大きく変わります(写真はイメージです)
街灯がつくころには、もう「薄暮時間帯」に入っています(写真はイメージです)
帰り着くまでが、この時間帯の話です(写真はイメージです)

