お盆と週末が重なる時期です。川や海に出かける予定のある方も多いと思います。
「水の事故」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは——子どもが、海で、泳いでいて溺れる、という絵ではないでしょうか。
水の事故は、思っている場所と、思っている人に起きているとは限りません(写真はイメージです)
私も救急隊に入るまでは、そう思っていました。
けれど、警察庁が毎年公表している統計を読むと、その絵はかなり違っています。この記事では、統計が壊す3つの思い込みをお伝えします。
思い込み1:水の事故は「子どもの事故」
警察庁の「令和7年における水難の概況等」(令和8年6月18日公表)によると、令和7年の水難は次のとおりでした。
- 発生件数 1,426件
- 水難者 1,599人
- うち死者・行方不明者 760人
問題は、この760人の年齢層です。
- 中学生以下:27人(3.6%)
- 高校生相当:12人(1.6%)
- 高校卒業相当〜65歳未満:265人(34.9%)
- 65歳以上:383人(50.4%)
- 不明:73人(9.6%)
**亡くなった人の半数以上が、65歳以上です。**そして中学生以下は、3.6%。
水の事故で亡くなっているのは、主に高齢者でした
しかも、これはこの年だけの偏りではありません。同じ表で過去6年をさかのぼると、65歳以上の構成比は51.1% → 52.4% → 51.3% → 53.7% → 52.6% → 50.4% と、一貫して過半数です。
もちろん、子どもの事故が軽いという意味ではまったくありません。令和7年も27人が亡くなるか行方不明になっています。
ただ、「うちは子どもがもう大きいから」「大人だけで行くから」という理由で警戒をゆるめる根拠には、まったくならないということです。むしろ、警戒すべきは自分自身と、一緒に行く親の世代です。
思い込み2:亡くなるのは「泳いでいて」
ここが、私がいちばん意外に思ったところです。
同じ760人を「そのとき何をしていたか」で分けると、こうなります。
- 魚とり・釣り:168人(22.1%)
- 水遊び:53人(7.0%)
- 作業中:48人(6.3%)
- 通行中:45人(5.9%)
- 水泳:37人(4.9%)
**「泳いでいて」亡くなった人は、4.9%しかいません。**最多は「魚とり・釣り」で、その4倍以上です。
亡くなった人の行為で最も多いのは、泳ぎではなく釣りでした
考えてみれば、当たり前かもしれません。泳ぐ人は「これから水に入る」と思って準備をします。けれど釣りをする人は、水に入るつもりがない。だから浮くものを身につけていないことがあります。
警察庁も、防止対策の筆頭にこう書いています。
魚とり・釣りでは、転落等のおそれがある場所、水泳や水遊びでは、水(海)藻が繁茂している場所、水温の変化や水流の激しい場所、深みのある場所等の危険箇所を事前に把握して、近づかない。
**「転落等のおそれがある場所」。**釣りの事故は、泳いでいて力尽きるのではなく、落ちることから始まる、ということです。
なお、子どもだけを見ると絵は変わります。中学生以下の死者・行方不明者27人では、行為別で最も多いのは水遊びで11人(40.7%)、次いで水泳5人(18.5%)でした。大人と子どもでは、危ない場面がまったく違います。
思い込み3:危ないのは「遊びに行った先」
死者・行方不明者760人の発生場所は、こうです。
- 海:352人(46.3%)
- 河川:282人(37.1%)
- 用水路:69人(9.1%)
- 湖沼池:46人(6.1%)
- プール:2人(0.3%)
用水路で69人。海水浴場でもレジャースポットでもない、田んぼの脇の水路です。
海と河川で8割強。ただし残りの2割弱に、用水路と湖沼池が入ります
行為別を思い出してください。**作業中48人(6.3%)、通行中45人(5.9%)。**合わせて93人が、そもそも水辺に遊びに来ていない人です。
用水路の見回り、草刈り、通りがかり。「水に入る予定がまったくない人」が、100人近く亡くなっているということです。
帰省先の用水路は、レジャーの場所ではありません。だから誰も浮くものを持っていません
お盆で帰省する方は、ここを覚えておいてください。**実家の周りの水路は、統計上まぎれもなく「水難の現場」です。**とくに高齢の親が、雨のあとに水路を見に行く——これは、亡くなった383人の高齢者と同じ動線です。
そして川については、もうひとつ。**川は、海と違って監視員がいません。**海水浴場のような区域の設定もありません。そして——これは現場に出ていて強く思うことですが——川は、見た目で深さと流れがわからないのです。
足首までの水深に見えても、一歩先が胸まで、ということが普通にあります
いま、その2か月の真ん中です
時期の話です。
警察庁は「夏期(7〜8月の2か月間)」の統計を別に公表しています。令和7年夏期は、死者・行方不明者が241人(速報値)でした。
年間の760人(確定値)に対して、7月と8月の2か月だけでこの人数です。速報値と確定値なので単純に割り算はできませんが、夏の2か月に相当な割合が集中していることは読み取れます。
そして夏期の死者・行方不明者241人のうち、65歳以上が108人(44.8%)。年間と同じ傾向です。
いま、まさにその2か月の真ん中です。
警察庁が「やらないこと」として挙げていること
防止対策として書かれている項目は、どれも具体的です。原文から、家庭で共有しやすいものを引きます。
天気と上流
事前に気象情報を把握し、風雨、落雷等の天候不良時や上流で雨が降っているなど、河川の増水のおそれが高いときには、釣りや水泳、中洲や河原でのバーベキューなどを行わない。
**その場が晴れていても、上流が降っていれば水は増えます。**中洲でのバーベキューが名指しされている点にも注目してください。
体調と飲酒
また、体調が悪いとき、飲酒したときなどは、海、河川に入らない。
お盆の川辺で、いちばん起こりやすい組み合わせだと思います。ビールを飲んで、暑いから足だけ、というあれです。
遊泳場所
海水浴場として開設されていない場所は、監視員が不在であるなど安全が確保されていないため、開設の有無、監視員の存在等を確認する。
帰省先の用水路や水路も、「泳ぐ場所ではない」から油断が生まれます
ライフジャケットは、泳ぐ人のためのものではない
警察庁の対策には、こう書かれています。
釣りやボート等で水辺に行くときは、必ずライフジャケットを着用(体のサイズに合った物を選び、正しく着用)する。
**「釣りやボート等で水辺に行くとき」。**泳ぐときではなく、水に入るつもりがないときにこそ着けるという書き方になっています。
亡くなった人の行為で最多が「魚とり・釣り」だったことと、まっすぐつながっています。
「泳がないから要らない」は、統計とは逆向きの判断です
子どもについても、明確です。
子供の水難防止のため、子供一人では水遊び等をさせず、幼児や泳げない学童等には、必ずライフジャケットを着用させ、その者を保護する責任のある者が付き添うなどして、目を離さないようにする。
**「必ず」「目を離さないように」。**公的な文書としては、かなり強い書き方です。
通報のとき、目印になる建物や橋の名前を一緒に伝えてください
楽しかった、で終わる日にするための準備です

